茶番かよ…
下っ端の一人を無力化し、奴隷商たちの住処に無数の罠を仕掛けて待つこと一時間…
「ぎゃはははは!あの姉ちゃんの尻が良すぎて何度揉もうと思ったことか」
「尻フェチかよ!やっぱあの店は最高だな」
「それな!店員全員バニーコスとやらで接客とかマジパネェよな」
山の下方から大きな声が徐々に近づいてくる
俺とアイセアは奴隷商の住処の裏側に隠れて作戦のため待機していた
なにっ!?バニーコスだと?隣町にはそんなものが…しっかり覚えておこう
「…だいたいあんたの考えてることがその顔でわかるわ。最低ね」
はい…最低評価いただきました。ありがとうございます
「お頭、どうしたんすか?いつもジャガイモみたいな顔してますけど今日はなんだか一日中マッシュポテトみたいな顔っすね」
「……お前ぶっ殺すぞ。体調が悪いわけじゃないんだ。むしろ最高な気分だ。だが体の奥底から黒い感情が湧き上がるような感覚なんだよ」
「ああー…ジャガイモの芽は毒がありますもんね。察します」
山に響く鈍い音とともに残りの奴隷商たちの数が三人に減ってくれた
戸を閉める音が聞こえた
この世界は四季が明確である。そして今のシーズンは秋で多少冷える。そしてここの場所は廃墟であったため、もちろん電気の供給はない。つまり、暖炉の火を焚かなければ寒いのだ
「ふっはっはっは、さあ暖炉に火を灯せ!灯した時がお前達の命の灯火が消える時だ!」
「ねぇショウ…いまさらだけどさすがにこんな雑な作戦で成功するとは思わないんだけど」
「何をいうか!俺が元いた国では先人の教えというのは何よりも大切にされてきたのだぞ!」
「いやショウのいた国とか知らないけどさ…もういいや、どうにでもなれ!」
そして待ってから数分たった頃
「んっ?なんか薪の他に赤く燃える石がないか?」
そんな声が聞こえた次の瞬間
バンっ、何かが弾ける音が響く
「ぐはっ!!いってぇぇぇぇえ、誰だよ暖炉に爆晶石なんてもんを入れた奴は!!」
「水っ!水をよこせ!火傷しちまう」
声だけで中で悲惨な光景が繰り広げられていることがわかる
ちなみに爆晶石は高熱で破裂する石だ。鍛冶屋では火の適温を調べるために使われる
「よし、次は蜂の代わりに用意したニードルサボテンの棘をぶち込むぞ」
奴隷商の住処の天井へと伸びる糸をショウが引っ張る。すると中では
「ぎゃぁぁぁあ、なんだ!?上から急に棘が落ちてきたぞ!」
「火傷に刺さる!クソいてぇぇぇ」
案の定、中は阿鼻叫喚の地獄絵図と化したようだ
「おい、外に出るぞ!誰かが罠をこの家に大量に仕掛けやがった」
奴隷商たちは逃げるようにして外へ飛び出ようとした。しかし、玄関のところで先頭を走っていた奴隷商が半円を描いて宙をまった
「こんなところにバナナの皮が落ちているなんて…そんなバナナ」
そして転んだ衝撃により玄関に大穴が開く。そう落とし穴というやつだ。三人の奴隷商は綺麗に落ちる。…くだらないダジャレはスルーしておこう
「くっそ…一体誰だこんな馬鹿げたことをやりやがるやつは」
「ふっふっふ…まさか私のことを忘れたとは言わせないわよ」
「お、お前は…アイセアか?」
「そうでーす、みんなのアイドル、アイセアちゃんだよ☆」
「「「………」」」
(こいつやべえ奴だ)
この時、俺と奴隷商のやつらは同じことを考えていたに違いない
「なんだ復讐にでも来たのか?お前はあの町の変態貴族に買われなかっただけマシだと思えよ。あの変態に買われた奴隷は一ヶ月後には全員廃棄処分になるらしいからな」
「はっ…どの口が言っているのやら。あんたたちが奴隷を売ったりしなければいい話じゃない。つまりまずは大本を叩く」
「なんだと!俺らは親切でお前らを売ってやっているんだ。明日の命も知れないお前らを売ることの何が悪い」
「はあー、もうその考えから既に腐っているわ。もうダメなやつだわ」
「俺らだって昔は真っ当に生きていたさ。だがな社会から見放された俺達は職を失った。そんな中で奴隷商という生きるための手段を見つけたんだ。しかも奴隷商は金はいいし誰でもできる。だからな…俺達をしばいたところで次の奴隷商が同じことをするだけなんだよ」
「そんなの間違っている!」
「社会にも出たことのないガキが何を知っている」
「だからこそ…だからあなたたちがしていることを認めることはできない」
「はっ…この負の連鎖は止まらねえんだよ。いわば社会がつくった輪廻のようなものだ」
(なんかそれっぽいこと言ってるけどめちゃくちゃ薄い話やな)
「だったら…私がその負の連鎖を止めてみせる」
おっと、某忍者漫画であったような名言が飛び出たな
奴隷商がアイセアの曇のない眼を見つめる。そして彼女の言葉が真実だと感じ取ったのか
「アイセア姐さん」
し 奴隷商のやつらも満更でもない顔してやがる。チョロすぎだろ
「さあこの手を取るのです。あなたたちならきっと罪を償える。何年かかってもいい。いつか報われる時が来る」
「うぅっ…」
すごい茶番を見せられてる感がすごい。盗賊が聖職者ぶるなんて…俺もう帰っていいかな?
俺は背を向けて山の麓の町まで戻ろうとした
ズキンっ
(ぐっ、なんだ、今一瞬痛みが…)
そして眼下にある大穴を覗く。奴隷商の一人、厳密にはその男の持つ刀から異様な黒いオーラが発せられているのが見える
「コロス…」
「えっ?お頭、今なんて?」
人の声だとは思えない不気味な声で物騒な言葉を放つ。その言葉には殺気が宿っていた
「ガキが舐めやがって…血祭りだ」
奴隷商のリーダーの目が血走る。完全に事態を甘くみていた
「おい、アイセア!一刻も早く逃げるぞ!!」
「えっ、ショウ?いきなりどうしたの?」
俺は戸惑うアイセアの手を強引に握り山を駆け降りる
「ぎゃああああああ!」
「お、お頭何を…ぐあっ…」
後方から断末魔が聞こえてくる。ちらりと後ろを見る。穴から鮮血が飛び散っていた。そして血まみれの黒いオーラを纏った男が覗く
「な、なによあれ!?」
アイセアも状況をようやく理解し、困惑する
「あれは刀に取り憑かれた者の姿だ」
「なんなのそれ!?」
「刀や武器は斬ったりした物の影響を強く受ける。しかもその影響はまだ出来立ての刀が特に受けやすい。あの《飛翔》が初めに斬ったもの…それは俺だ。つまり、あの刀は人の血を吸ったんだ」
「でも…それだったら貧民街の日常はどうなの?人斬りなんて日常茶飯事らしいわよ」
「まあそりゃあ…鍛冶師の心得EXの俺がつくった刀だし。貧民街の人々の武器は知らないけど多分粗悪品だからかな」
「…さりげない自慢ショウのくせになんかムカつく。それであれをどうするの?町まで降りて自警団か騎士の人に守ってもらう?」
「…いや、あれは血に飢えた獣だ。町に連れていけば猛獣を放つようなものだし、あいつは昔自警団にいたらしいから刀によるステータス補正もあって町の騎士団の人には荷が重い」
後方では奴隷商のリーダーが血走った目で追いかけてきている
「じゃあどうするの?」
「腹をくくるしかねえだろ!!」
俺は背を向けて走っていたところを反転して奴隷商のリーダーと向き合うように立とうとした
「『鎌鼬』」
「なっ!?」
その瞬間だった。男は遠くで抜刀をし、スキルを発動させたのは。当然俺は躱すことも考えることもできずに斬撃が飛んでくるのを眺めていた
ガキンッ
「武器も持ってない鍛冶屋がカッコつけようとするからそうなるんだよ」
乾いた鉄と鉄の弾ける音のあと、空気の斬撃を二対のダガーで弾き飛ばして軽快にダガーを宙に回しながら憎まれ口を叩くアイセアがいた
「サンキュー助かった」
「ショウがそんなことを言うなんて!」
「お前の中で俺の評価はどうなってんだよ…」
「まぁまぁ。それじゃあ最終決戦だよ。ここであの忌々しい奴隷商を叩き潰そうか」
アイセアと俺は奴隷商と対峙する。俺たちが殺られればさらに被害は広がるだろう
「絶対絶命のピンチってやつか…一度死んだとと思われるこの身体だ。存分に足掻いてやる!!」




