幕引き…
「なっ!?お前シオンか!」
俺は今、目の前に元の世界からの友人で圧倒的主人公気質のあの紫苑がいることに動揺を隠せなかった
「いやーほんと久しぶりだね。でも今は再会を喜ぶ前にこいつを片付けちゃおうかな」
そういって紫苑はこちらを向いたままの状態で手に持っている剣で背中を守った
すると、予知でもしていたのかという具合に次の瞬間、紫苑の背中を怪物の触手が襲った
「ねえショウ。あたなと比べると『月とスッポン』という言葉の意味がよくわかるイケメンの彼はいったい誰?」
「そうですか俺は所詮スッポンレベルの顔ですか。あいつは桐谷 紫苑。俺と同じ日本という国から来たやつで何かと腐れ縁のあるやつ」
異世界基準でもあいつはイケメンの部類に入るらしい。なんて面白みのない世界だ
「…お話しているところ悪いんだけど、ちょっとバリアをはらせてもらうよ」
紫苑が呪文を唱えると俺とアイセアの目の前にガラスのような壁が現れた
「はっ?ちょ、お前なに…」
俺たちのせっかくの見せ場を邪魔してくれちゃってんの…と、いうが前に紫苑は怪物に向かって駆け出していた
「…んっ?ごめん。いきなりの急展開でよくわからないんだけど、私たちはどうすればいいの?」
「……とりあえず魔力を飛翔に溜めておこう。いくらあいつがチートスキル持ちだとしてもさすがにあの怪物相手じゃキツイだろう」
そういって再び紫苑の方へと目を向けて唖然とした
シオンは怪物の周りを円を描くように駆けていた。驚くべきは人離れした速さで走っていることだ。電光石火の如くとはこのようなことをいうのだろうか
そして怪物もただ呆然としているだけではなかった。自らを脅かす存在が急に現れたのだ。それを必死になって潰そうとし、触手でシオンを捕らえようとするが、
「はぁっ!」
切り落とされてもすぐさま再生する八本の触手。そんな常識外れの攻撃をシオンは剣一本で息切れもせずに叩き斬る
「なんだこれ?大怪獣合戦でも見ているのか?」
辺りに生えていた木々が徐々に開けていく。今俺たちの前にはシオンが張ったシールドがある。それがなければ剣圧で吹っ飛ばされているかもしれない
「もしかしたら彼一人であの怪物を倒せるかもね」
確かに怪物の再生能力は徐々に落ちていっている。それに対してシオンはかなり余裕がありそうだ
だがそんなアイセアの言葉に対して俺はむしろ一抹の不安を感じていた
「いや、まだわからない。鑑識眼発動」
鑑識眼。俺の鍛冶師の心得EXは複合スキルで成り立っていてその中のうちの一つで本来武器の状態を確認するためのスキルだ
このスキルを使ってシオンの剣を見る
「やばいな、あいつの剣相当がたがきてやがる!このままだとあと数回の攻防でおれるかもしれない!」
「えっ?それって…」
そしてその時は来た。剣が中心から思いっきり折れ、シオンが後方へと跳ぶ
「グギャギャギャギャ、死ネ死ネ死ネ」
不気味な笑い声?を怪物が発した。そして一本に触手をまとめる
「おっと、そういえば最近鍛冶屋に確認してもらってなかったからな…こいつとは長い付き合いだったのにこんな雑魚に折られるとはついてないな」
シオンが折れた剣を眺めながら、隙だらけに立っている。元人間の怪物はシオンの侮辱を理解したのか雄叫びを上げて触手をシオンに振るった
「なんだ怒ったのか?それは悪いな。だが訂正はしないぜ、なぜなら魔法陣に気づいてない時点で本当に雑魚だからな」
怪物の周りの地面に白光する魔法陣が浮かび上がっていた。怪物の触手はシオンに届く前に怪物を囲んだ魔法陣に斬られ地に落ちた。
「あいつ円を描いて攻撃の隙を伺ってたんじゃなくて魔法陣を描いていたのか…なんて凄さなんだ」
思わず感嘆の声が漏れた。怪物は閉じ込められた魔法陣から出ようともがくが、それは一向に破れない。そして
「ジ・エンドだ。三聖剣!!」
シオンが魔法を唱える。遥か上空に現れた三本の光で編まれた巨大な剣が同時に怪物を穿つと、怪物を中心に小規模の爆発が起きた
大量の砂煙が消えて視界が開かれた。そして俺は衝撃的な光景をみた。山の豊かな緑は消え失せ、残ったのなシールドに守られた俺達とシオンだけだった
俺とアイセアは思わず飛翔を落とした
「おいおい、まさかシオンのやつがシールドを張った理由って怪物から俺たちを守るためじゃなくてあいつ自身の攻撃の余波で俺たちが死なないようにするためだっていうのかよ!?」
こんなことができるやつがいるなら俺たちの言っていた怪物って一体何なんだ?これじゃまるであアイツの方が…
「なんて圧倒的な破壊力…いったい彼は何者?」
アイセアも目を見開くばかりだった。そこに何食わぬ顔でシオンはやって来た
「やあ二人とも無事で何よりだよ」
この時ほど紫苑のことを怖いと思ったことは元の世界でも無かっただろう…
この世界では法律というものがまだ辺境まで行き届いてないため怪物へと変化した人間の殺傷に対する判断がない。かといってシオンのように圧倒的な実力があれば奴隷商の男を助けることも出来たのではないかという考えがよぎる
「音を聞きつけて騎士団が駆けつけて来てくれたのかな?すぐそこまでたくさんの人が来ているな」
シオンがいってすぐに山の下の方から鎧を着込んだ人たちが来た
「すまないが町の騎士団の者だが…今物凄い風圧が騎士団を襲ったが貴殿たちは大丈夫であるか?」
「あっ、はい。僕たちは全然大丈夫です」
「いや、二人とも気づいてないのかもしれないけどかなり怪我をおっているよ。それにショウに至っては魔力欠乏の症状が出ている。今日は早く帰って寝たほうがいい」
そういうとシオンは騎士団に事情を伝えると言ったので俺とアイセアは町へと戻った。そして俺たちは疲れもありすぐに睡魔に襲われ特に言葉も交わすことなく床へと入った
そして長い一日が終わりを迎えた




