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5話 学園最強の二輪の百合……ですわ!

2学期が始まり、聖華女子高等学園の講堂には、夏休みを経てさらに「恋心」を磨き上げた乙女たちが集結していた。


壇上には、学園長・一条蘭子(54歳)。

「皆様、おはようございます。今朝、夫が私の寝顔を見て『50年前と変わらない、朝露に濡れた可憐な一輪の花のようだ』なんて言うものですから……(以下、30分にわたる濃厚な惚気)」


咲希はうっとりと目を輝かせ、両手を頬に当てていた。

「……素敵。なんて一途で、高潔な愛。わたくしも、いつかそんな『真実の愛』をしてみたいものですわ……」

隣に立つ結菜が、光のないジト目で咲希を見つめていた。


教師が慌てて耳打ちすると、蘭子は「あら、失礼」と微笑み、マイクを生徒会へ譲った。

会長・山口聖子が凛とした声で告げる。

「間もなく『恋華祭』です。今年も伝統のトーナメントを開催します。皆様、より一層、恋愛バトルを精進なさい。」


その宣言と共に、学園内は一気に恋愛バトルが加速した。

廊下、中庭、至る所でリングが出現し、乙女たちの恋の叫びが響き渡る。

そんな「恋の戦場」を、百合カップル限定の生徒会役員たちが、冷徹な美しさで見回っていた。


そこへ、巨大なGペンを構えた漫画部部長・薔薇園薫が立ち塞がった。

「生徒会長! 今年こそ、私の『耽美なる美学』が、あなたたちの『ガチ百合』を凌駕することを証明してあげるわ!」


聖子は溜息をつき、隣の百恵に視線を送る。

「……しつこい人ですね。いいでしょう、副会長」

「はい、会長。不届き者には教育が必要ですね」


『――LOVE BATTLE 確認。闘技場フィールドを展開します――』


周囲は18世紀ロココ調の豪華なサロンへと変貌。


「ラブ・ドレスアップ(武装開放)!!」


薔薇園 薫 武装:『耽美なる禁忌ローズ・バイブル

巨大なGペンの杖と、周囲に浮遊する無数の原稿用紙。


生徒会ペアの武装:『比翼連理の百合庭園ひよくれんりのゆりていえん

二人を繋ぎ止めるように咲き乱れる巨大な白い百合のツル。聖子と百恵のドレスが重なり合い、一枚の絵画のような完成度を誇る。


実況のミミ子と解説の花園が特設ブースへ滑り込む。


実況「出たーっ! 漫画部部長・薔薇園vs生徒会トップペア!ボーイズラブVSガールズラブ!まさに聖華女子、事実上の頂上決戦です!」


解説「薔薇園さんは今日のために、新作の薄い本を3冊も書き下ろしたと聞きますわ。しかし、生徒会ペアの『百合庭園』……あの白さは、他者の解釈など一切受け付けないという強固な意志の表れ。薔薇園さんはどのように打ち破るのでしょうか…。」


薔薇園が絶叫する。

「あなた達を倒すために生み出した禁断の技を食らいなさい! 会長が『誘い受け』で、副会長が『執着攻め』になる、私の最高傑作……!

必殺:『禁断のスイッチ・リバーシブル』!!」


薔薇園の放った黒いインクの奔流が、生徒会ペアを飲み込む。相手の属性を強制的に書き換え、アイデンティティを崩壊させる概念攻撃だ。


実況「決まったーっ! これで会長たちのキャラ設定は支離滅裂! 尊厳を失い、消滅するかー!?」


しかし、インクの煙が晴れた後、聖子と百恵は微動だにせず、平然と立っていた。


解説「……おかしいですわ。何も起きていません。薔薇園さんの設定変更が、完全に無効化されていますわ!」


薔薇園は驚愕し、ペンを震わせる。

「なっ、なぜ!? 会長が攻めで、副会長が受け…、逆転させれば力は削がれるはず!」


聖子が冷ややかに微笑んだ。

「薔薇園さん。残念ですが、私たちにそのような『固定された枠組み』は存在しません。私たちは、その日の気分でどちらにもなれる……」

副会長の百恵が、聖子の腰をそっと引き寄せた。

「ええ。聖子さん、今日は久しぶりに、あなたを熱くして差し上げます。」

「…百恵…!」

そう言うと、二人は観客全員が見守る中で、深く、情熱的な「誓いのキス」を交わした。


全員「「「「「「きゃあああああーーーー!!(尊死)」」」」」」


フィールドが百合で埋め尽くされ、百合が薔薇園を飲み込んでいく。

「…まさかリバとは…!…これもまたよし…!」


実況「決着ーーーっ!! 薔薇園さん、解釈が逆に一致してしまい完全敗北! 設定の壁を超えた本物の愛の前に、薄い本は塵と化しました!」

解説「……まさか、『リバ(両刀)』だったとは。学園に激震が走りますわ……。これぞ、固定観念を打ち砕く究極の多様性愛ダイバーシティ・ラブ……(鼻血を出しながら沈没)」


『――WINNER:生徒会ペア――』


闘技場が消え、静寂が戻った廊下。咲希は頬を赤らめ、放心状態で呟いた。

「……すごいものを見ましたわ。愛に形なんて関係ありませんのね……」


結菜が、いたずらっぽく笑いながら咲希の肩を抱く。

「ねえ咲希。私たちも、咲希と私で『カップル』としてトーナメントに出ちゃおうか?」

「えっ!? 結菜、何を……!?」

咲希は一瞬、顔を真っ赤にしてうろたえる。

「ゆ、結菜のことは大好きですけれど……そういうのは、その……。」

もじもじした咲希を見て、結菜は「ふふ、冗談だよ」と笑うが、その瞳の奥には、冗談だけでは済ませられない熱が宿っていた。

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