番外編 野蛮な男子校ですわ!
『漢達よ力がほしいか? ならうちに来い!』
正門に掲げられた巨大な看板が象徴するように、鉄鋼男子高等学校は筋肉と汗の聖域。文化部など軟弱なものは一切存在せず、全生徒がいずれかのスポーツ部に所属し、日々己を磨いている。
「弥生くーん!」「猛くーん! かっこいいー!」
グラウンドのフェンス越しには、放課後を狙って訪れた恋華女子の生徒たち、非公認ファンクラブ「猪突猛進」が鈴なりになっていた。
練習の手を止めた猛が、無防備な笑顔で駆け寄った。
「おう、いつも応援ありがとな! お前らの声、よく聞こえてるぜ!」
その爽やかな笑顔に、ファンクラブの面々は「尊死……!」と次々に胸を押さえて崩れ落ちていった…。
その様子を、血涙を流しながら見つめる男がいた。
相撲部2年、本田 進。
「猛の奴、いつも女子から声援されて羨ましいでごわす……。同じ汗を流す漢として、もう我慢ならんでごわす!!」
ドスドスと地響きを立てて本田が猛の前に立ちはだかる。
「猛! 貴様ばかりモテるのは許せん! 俺と決闘するでごわす!!」
その叫びに呼応するように地面が真っ二つに割れ、審判がせり上がりながら現れた。
「この決闘、私がジャッジします! 両者よろしいですか? レディー……ファイト!!」
ちょうどその頃、隣の恋華女子の校門では、咲希と結菜が騒ぎに気づく。
「なにか、お隣が……工事現場のように騒がしいですわね」
「あはは。また『スポーツ異種格闘技』をやってるのかも」
グラウンドでは、本田が猛に向かって凄まじい勢いで突進する。
「俺の高速の寄り切りを食らうでごわす! 必殺:『横綱超特急』!!」
「進、悪いな。そこからじゃ俺には届かねえぜ!」
猛がマウンドで振りかぶった。
「『三球三振・鋼鉄の剛腕』!!」
猛の放った球は、みるみる巨大な鉄球に変わり、本田を襲う。
「ご、ごわっ!? なんという固く重い球……ぐわあああああ!!」
本田の巨体は、鉄球の重圧に耐えきれず校舎の壁まで吹き飛ばされ、そのままめり込んだ。
「ご……ごわす……(ガクッ)」
「勝者、弥生 猛!!」
「キャーーー! 猛くんすごーい!!」
遠くからその光景を見ていた咲希が、呆れたように溜息をついた。
「なんなんですの、あの野蛮な戦いは……。スポーツを履き違えていませんこと?」
「今のが、噂のスポーツ異種格闘技みたいだね……あ、猛くん!」
二人に気づいた猛が、走り寄ってきた。
「なんだ咲希、結菜! 差し入れでも持ってきてくれたのか?」
「そんなのありませんわ! ……ですが、お母様が作ったケーキが家にあるから、夜にでも持っていきますわ。文句は言わせませんわよ!」
「マジか! やりー! 楽しみにしてるぜ!」
大喜びする猛。そんな二人の親密なやり取りに、周囲の女子生徒たちからは猛烈な嫉妬の視線が集まるが、鈍感な二人は全く気づかない。
ただ一人、結菜だけがその視線を受け流しながら、苦笑いを浮かべていた…。




