14話 2人のこれから歩む道…ですわ
実況「ついに……ついにこのカードが実現してしまいました! 親友対決、如月 咲希 vs 卯月 結菜!」
解説「2人の友情が、このステージで音を立てて崩れようとしています……。見るのが辛いですわ」
「ラブ・ドレスアップ(武装開放)!!」
如月 咲希:『拒絶する鉄仮面』
卯月 結菜:『刺々しき凍える純愛』
「結菜……わたくし、あなたに謝りたくて……!」
咲希の言葉を遮るように、結菜がステージの中央で静かに、けれど鋭く言い放つ。
「……咲希、聞いて。私、猛くんが好き。」
「えっ!?」
ざわつく会場。実況が「友情崩壊だー!」と叫ぶ中、咲希は雷に打たれたように硬直する。
「……そうだったんですの……。結菜なら、きっと猛は……」
そこから先を言おうとすると、胸の奥がキリキリと痛み、言葉が詰まる。
(わたくしは別に猛のことを想ってないから、二人が付き合ってもいいはずなのに……なんですの、この感情は)
黙り込む咲希を見て、結菜の周囲の空気が急速に凍りつき、巨大な氷の刃が形成されていく。
「……ッ! この鈍感女!! 猛くんが好きなのは、あんたなのよ! 咲希!!」
氷の刃が鉄仮面に直撃し、火花が散る。
「キャーーーッ!」
「猛くんは3人でいても、ずっと咲希を見てる……。私もすぐ近くにいるのに!」
「そ、それは家が隣同士で、腐れ縁だからで……」
「あんたが気付いてないだけ! この無神経女!!」
怒濤の如く放たれる氷の刃。結菜の積み重なった本音が、咲希の鉄仮面をボロボロに砕いていく。
「お互い無自覚な二人をずっと隣で見てきて、私がどんな気持ちだったか教えてあげる!」
「咲希にしか見せない笑顔も! お互い遠慮のない距離感も! 二人の他愛のない会話も!」
結菜が苦しんだ数だけ、氷の刃は止まらない。
「……ッ! 」
不意に、攻撃が止んだ。
結菜の目からは、大粒の涙が溢れ出していた。
「……なんで、私の家が隣同士じゃなかったんだろう。なんで、咲希よりも先に猛くんと出会わなかったんだろう……。猛くんへの想いが大きくなるたびに、咲希を妬んだ! 咲希の隣で笑いながら……!」
「結菜……」
「……私は、この想いをずっと心の奥にしまっておこうと思った。あなたたち二人なら、仕方ないって……でも!」
再び、黒い輝きを帯びた氷が咲希を襲う。
「あんたが『恋してない』なんて言うたびに、怒りがこみ上げてきたの! 本当は誰よりも、猛くんのことが好きな癖に!!」
(!!!……わたくしが、猛のことを好き……?)
咲希の脳裏に、これまでのバトルの光景がフラッシュバックする。
「猛くんと話してる時の咲希は、いつだって……『恋してる乙女』の顔だったよ……」
(……今まで、バトルの時にいつも猛の顔が浮かんだのは……。わたくしが、猛を……)
結菜は泣きじゃくりながら、血が滲むほどに拳を握る。
「……鈍感で、無神経で、無自覚なあんたが大嫌い! ……でも、いつも明るくて、誰よりも素直な咲希が、私は……私は……っ!」
(……結菜!)
ガシャァン!! と大きな音が響き、ボロボロになった鉄仮面が左右に開いた。
中から現れたのは、武装を解き、制服姿で傷だらけになった咲希だった。
「…」
咲希は無言で、結菜の方へ歩き出す。
「来ないで……! 来ないでよ!!」
結菜が放つ氷の礫が咲希の頬を切り、腕を突くが、咲希は歩みを止めない。
そして、氷のドレスの鋭いトゲが刺さるのも構わず、咲希は結菜を強く抱き寄せた。
「……ごめんなさい。わたくし、あなたのことも、自分自身のことも……全然、わかってませんでしたわ……」
結菜の氷のドレスが、咲希の流す血で赤く染まっていく。
「……猛への気持ちは、まだ……整理がつきません。……でも、これだけは分かりますわ。わたくし、あなたとこれからもずっと一緒にいたい! 大好きですわ…結菜!!」
その言葉が、結菜の心を覆っていた氷を溶かした。
結菜の目から、温かい涙がとめどなく流れ落ちる。
「……私も……私も、大好きだよ…… 咲希……!!」
結菜が咲希の背中に手を回し、泣きながら抱き返した。
実況「け、決着ーーーっ!!勝者は如月 咲希!これこそ 恋を超えた、究極の友愛!!(号泣)」
解説「この戦いに敗者はおりませんわ…!二人を見ていたら……涙で前が見えませんわ……(号泣)」
実況と解説も、マイクを放り出して抱き合いながら泣きじゃくっている。
ステージの上で、二人はしばらく抱き合っていた。
咲希は涙を拭い、真っ直ぐな目で空を見上げる。
「わたくし、決勝戦……頑張ってみますわ。結菜の想いと、教えてもらったこの気持ちの答えを出すために!」
咲希の視線の先には、すべてを見通すように微笑む生徒会ペアが立っていた。




