表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

番外編「ある日の庭とやきもち焼きの騎士」

 平和が戻ったアスター侯爵領。

 屋敷の庭は、リゼットと雇われた庭師たちによって手入れされ、今や領内有数の観光名所となるほど美しくなっていた。


 ある晴れた午後、リゼットは庭の温室で新しいハーブの苗を植え替えていた。

 最近、近隣の村の子供たちが庭を見学に来ることが増え、リゼットは彼らに植物の育て方を教えているのだ。


「リゼットお姉ちゃん、こっちのお花は何ていうの?」

「お姉ちゃん、僕がお水あげる!」


 子供たちに囲まれ、リゼットは楽しそうに笑っている。

 そんな彼女の様子を、執務室の窓からじっと見つめる影があった。


「……楽しそうだな」


 ギルバートである。

 彼は書類仕事の手を止め、むすっとした顔で窓の外を睨んでいた。


「おや、旦那様。また嫉妬ですか? 相手は子供ですよ」


 執事のセバスチャンが、呆れたようにお茶を置く。


「嫉妬などしていない。……ただ、リゼットがあまりにも無防備だから心配しているだけだ」


「はいはい、そういうことにしておきましょう」


 その時、庭の方から子供の甲高い声が聞こえた。


「大きくなったら、僕、リゼットお姉ちゃんのお嫁さんになる!」


 一人の男の子が、リゼットに野花で作った指輪を渡しているではないか。リゼットは「あら、嬉しいわ」と微笑んで受け取っている。


 ガタッ!


 ギルバートが椅子を蹴って立ち上がった。


「……少し、休憩してくる」


「いってらっしゃいませ」


 セバスチャンは苦笑して見送った。


 庭に降り立ったギルバートは、大股でリゼットたちの元へ向かった。

 突然現れた強面の侯爵様に、子供たちは「わあ、氷の騎士様だ!」と少し怯えながらも興味津々だ。


「ギルバート様? お仕事は……」


「休憩だ」


 彼は短く答えると、男の子とリゼットの間に割って入った。そして、リゼットの手を取り、自分の胸元から取り出したハンカチで、土で汚れた彼女の手を丁寧に拭き始めた。


「……あまり、他の男から物を貰うな」


「え? でも、子供ですし……それに、ただの草の指輪ですよ?」


「男は男だ。それに、お前の指に嵌めていい指輪は、俺が贈ったものだけだ」


 ギルバートは真剣な顔で言い、リゼットの左手の薬指に口づけをした。そこには、婚約指輪である大粒のダイヤモンドが輝いている。


「~~っ!」


 リゼットは子供たちの前で赤面し、湯気を出しそうだ。

 子供たちは「わー、ちゅーした!」「ラブラブだー!」と囃し立てる。


「ふん。……わかったら、これからは俺の傍を離れるな」


 ギルバートは勝ち誇った顔で子供たちを見回し、リゼットの腰に手を回して独占欲を見せつけた。

 リゼットは恥ずかしさで死にそうだったが、彼の子供じみた嫉妬が愛おしくて、こっそりと彼の服の裾を握り返した。


「はいはい、わかりました。私の騎士様」


 平和な庭に、幸せな笑い声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ