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第13話「戴冠の輝きと永遠の約束」

 リゼットが目覚めてから数日後。

 王都は歓喜に包まれていた。「緑の聖女」の復活と、黒枯病の完全終息を祝う式典が、王城の大広間で執り行われることになったのだ。


 リゼットは控室で、侍女たちによって身支度を整えられていた。

 用意されたのは、純白のシルクに金糸の刺繍が施された、まるで花嫁衣裳のような美しいドレスだ。髪には、あの日ギルバートが贈ってくれた翡翠の髪飾りが、丁寧に編み込まれている。


「まあ、なんてお綺麗なんでしょう……!」

「本物の女神様のようですわ」


 侍女たちのため息交じりの称賛に、リゼットは恥ずかしそうに頬を染めた。

 鏡に映る自分は、かつての「地味で影の薄い令嬢」とは別人のようだった。内側から溢れる自信と幸福感が、彼女を輝かせていた。


「準備はできたか?」


 扉が開き、正装したギルバートが入ってきた。

 黒の騎士礼装に身を包み、左胸には数々の勲章が輝いている。その凛々しい姿に、リゼットは見惚れてしまった。


「はい、ギルバート様。……変では、ないでしょうか?」


「……変なものか。美しすぎて、誰にも見せたくないくらいだ」


 ギルバートは真顔で言い、リゼットの手を取った。

 彼の右頬の傷跡はもうない。その端正な顔立ちは、今や「氷の騎士」ではなく、物語に出てくる王子様のようだ。


「行こう。みんなが待っている」


 大広間の扉が開くと、万雷の拍手が二人を迎えた。

 貴族たち、騎士たち、そして特別に招かれた市民代表たち。その誰もが、リゼットに心からの敬意と感謝の眼差しを向けている。


 玉座の前まで進むと、二人は王の前に跪いた。


「リゼット・ベルヴァーンよ。いや、今はリゼット・アスターと呼ぶべきか」


 王が穏やかに微笑む。

 リゼットは隣のギルバートを見上げ、はにかみながら頷いた。二人は式典に先立ち、正式に婚約を発表していたのだ。


「そなたの献身と勇気により、我が国は救われた。その功績を称え、ここに『聖緑』の称号と、アスター侯爵家への王族に準ずる特権を授ける」


 王から授与されたのは、エメラルドが埋め込まれた美しいティアラだった。

 ギルバートがそれを受け取り、震える手でリゼットの頭に戴せた。


「ありがとう、リゼット」


 彼は小声でささやき、公衆の面前であることも忘れて、リゼットの額に口づけをした。

 会場から「おおっ」という歓声と、冷やかしの口笛が飛ぶ。


「ギ、ギルバート様……っ!」


 リゼットは顔を真っ赤にして俯いたが、その手はギルバートの腕をしっかりと掴んでいた。


 式典の後、二人は王宮のバルコニーへ出た。

 眼下には広場を埋め尽くす民衆の姿があった。彼らはリゼットの姿を認めると、一斉に歓声を上げ、花びらを撒いた。


「聖女様万歳!」「アスター侯爵万歳!」


 色とりどりの花びらが舞う中、リゼットは涙ぐみながら手を振った。

 かつて誰にも見てもらえなかった自分が、今はこんなにも多くの人々に愛されている。

 でも、何よりも嬉しいのは。


「……幸せか?」


 隣で、ギルバートが優しく尋ねてくれたこと。


「はい。世界で一番、幸せです」


 リゼットは満面の笑みで答えた。

 ギルバートは満足げに頷き、彼女の肩を抱き寄せた。

 青く晴れ渡った空の下、二人の未来はどこまでも明るく輝いていた。

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