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焼いたパン。畑でとれた野菜と玉子の炒めもの。ソーセージと野菜のスープ。
簡単なものをテーブルに並べてから、雑穀と鶏肉、細かくした野菜を蒸して混ぜたものをチビに出した。ベンにはさらに水を足してゆるめたものを与えたが、どうやら食欲はあるようで、喜んで食べている。ミルクではないが、離乳食くらいなら食べられるようで安心した。
「うまい……」
驚いたように眼を見開き、三角耳をピンと立てたカルロがバクバクと食べる。
ゴールド級は消費エネルギーも多いのか、凄まじい勢いでテーブルのものが減っていく。空になった皿を見てはロレンツォが自身のためによそったスープやおかずを羨ましげに見ているので、カルロの方に渡した。
「……良いのか?」
「食費出してくれるんでしょ? 足りないならもっと作るけど」
「足りない」
おお、凄い。
健啖家っぷりに感心し、ベンに飯を食わせてから手を洗い、カルロのためにまた食材を刻む。
干した魚と野菜、豆をハーブを入れて煮込み、小麦を捏ねてナンのようなピタパンを焼く。そこから使いかけのソーセージをすべて輪切りにし、瓶詰めしていたトマトの塩煮をぶちこんでスープにする。
ある程度出来たので振り返ると、すぐそこにカルロが立っていて驚いた。
「うおっ」
「危ない」
傾きかけてた皿を掬い上げるように持ち、ロレンツォの代わりにテーブルに並べる。コクリと喉を鳴らして唾液を飲み込むカルロに、見た目のわりに温厚らしいと認識を改めた。
「どうぞ」
「いただこう」
カルロの器に先に盛って促すと、そわそわとしていたカルロは大きな口を広げて物凄いスピードで減らしていった。
自分の器におかずを盛り、干した魚の煮込みをピタパンに乗せて口に含む。うーん、味気ない。
ハーブと干した魚だけが旨味成分の煮込みに、なんだか物足りない気がする。うまいうまいとカルロは言ってくれたが、本当にこんなので良いのだろうか。
ちらりとカルロを見ると、ロレンツォの食べ方が気になるのか、自らもピタパンの上に干した魚の煮込みを乗せて食べている。
「うまい!」
……どうやらうまいらしい。
うーん、そうなのかねぇ?
首を捻りながらも得意のスルースキルで流し、ロレンツォは早々に食事を済ませて残りをすべてカルロにあげた。カルロはどうやら皿にわけとったものでは足りなかったらしく、大喜びで鍋をあけていた。
「はい」
風呂がわりにタライを外に用意して、湯を入れてカルロにすすめた。
石鹸のように泡立つ草を揉み、ぬるぬるとした粘液を体や頭にまぶしてからタライの湯を頭からかぶって流すのがこの辺りでの風呂だ。しかしこれは豪華な方で、基本的に濡らした布巾などで体を拭き取るだけだ。町にあるスチームサウナなどで汗をかき、冷たい濡れ布巾で全身を拭き取って清める場合もあるが、これも贅沢のうちに入るだろう。
「風呂のための場所があるのか」
「うん、作った」
「ロレンツォが?」
「うん」
外で真っ裸になるのが嫌だったし、冬場はとんでもなく寒いので小屋を作ってタイルを敷いている。
一応サウナにもなるが、面倒なので冬場にしかやらない。
一緒に入るかと聞かれたが、調剤しなきゃいけないからとスルーし、ロレンツォはせっせと仕事をこなした。むっきむきの体をアピールしているつもりか、上裸で出てきたカルロはオレンジの長髪をぶるぶるさせてからロレンツォに風呂を替わった。
湯をもっていき、ガシガシ洗ってから戻ると、一人にしてはゆとりがあったはずのロレンツォの寝台は巨大な獣人……カルロによってミッチミチになっていた。
「せまい」
「明日新しいものを持ってくる。今日は我慢してくれ」
「うっ、むさ苦しい……」
さめざめと語るロレンツォに、カルロは苦笑した。
むっきむきの体に抱きすくめられながら、ロレンツォは悲しげに眼を閉じた。圧倒的スルースキルのお陰で寝れたが、そうでなければ狭い寝台で共に寝るなど発狂しそうだった。
余談だが、カルロは翌日、ギルドからの仕事帰りに大量の食材とスパイスが入った荷物を持ち帰った。
彼の目は驚くほど輝いていて、ロレンツォは夕飯に大量の仕込みをすることになったのであった。
寝台は買い忘れたらしく、ロレンツォはその日もさめざめと泣きながらむさ苦しい寝台で眠った。




