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ブランクアームズ -BloodRhizome-  作者: 秋久 麻衣
-冬の先に行こう-
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黄金の意志


 白衣の男、平坦なその表情が僅かに変わる。驚愕、そして期待……あくまで実験でしかない以上、その目に宿す感情は精々そこまでだろう。

 だがとエイトは、《アブソリュート》レリクスは姿勢を正す。こちらは違う。命を失わない為に命を賭ける。だってそうだろう。自分達の人生は、ずっと本番の連続なのだ。そこに実験が入り込む余地はない。

「来い、《ディメンシャード》。空虚な君に、この黄金は砕けない」

 右手の指を少しだけ動かし、《アブソリュート》は《ディメンシャード》を手招く。

 瞬間、暴風が迫る。《ディメンシャード》の判断は速く、その動作は鋭い。予備動作などほぼ感じさせず、《ディメンシャード》は踏み込むと同時に右腕を振り下ろす。

 ただの腕ではない。二の腕から先が極光と化した、破壊のレリクトを纏った手刀だ。

 対してエイトが、《アブソリュート》が選んだ動作は防御だ。右腕をかざし、手刀を受け止める。

 衝撃が空間を揺さぶる。耐えきれなかった地面が砕けるも、《アブソリュート》にその現象は当てはまらなかった。

 白金の重装も、それを支える金結晶も。傷一つない。

「言っただろう。君にこの黄金は」

 《アブソリュート》は右腕を払って手刀を弾き、左手で掌底を放つ。

「砕けない!」

 掌底は寸分違わず《ディメンシャード》の胴を撃ち抜く。身体をくの字に曲げ、《ディメンシャード》は後方に吹き飛ぶ。

 まるで玩具の人形のように地面を跳ねながら、やはり玩具の人間のように空中で回転し体勢を整え、《ディメンシャード》は着地する。

 《アブソリュート》は左手を眼前にかざす。そこに形成された金結晶の塊を左手で掴むと、それは瞬く間に拡大、慣れ親しんだ得物へと、長大な騎槍へと変わった。

「バレルフェイザー、アブストラクター。俺の意思で形が決まり、ゼロの意思で強度が決まる」

 言ってしまえば、《アブソリュート》の全身を支えている金結晶、それ自体がバレルフェイザーでもある。

「行くぞ」

 エイトは短く宣言する。《アブソリュート》が騎槍を構えると同時に、その姿がぶれる。

 その動きを目で追えたのは、相対していた《ディメンシャード》ぐらいだろう。暴風すら背に置く光の速度で、《アブソリュート》は《ディメンシャード》に踏み込んだのだ。

 金結晶で形成された騎槍が振り抜かれる。《ディメンシャード》は飛び退いてその斬撃を避けるも、《アブソリュート》は更に踏み込みながら騎槍を二振りの長剣に変化させてX字に斬り払う。

 並のレリクスでは反応出来ない速度、しかし《ディメンシャード》は動く。両腕の先を極光の剣として、同じようにX字の斬撃を繰り出し弾いてみせたのだ。

 それだけではない。空中で身体を捻り、極光を纏った蹴りを返してきた。

 当然、エイトも止まらない。《アブソリュート》は二振りの長剣を大盾に変え、その蹴りを受ける。

 再び衝撃が空間を軋ませる。並のレリクスでは受け止めることしかできないだろう。しかし、《アブソリュート》は大盾で受け止めながら掬い上げ、《ディメンシャード》を空中に打ち上げた。

 同時に大盾は騎槍へと変わる。《アブソリュート》は即座に構えると跳躍、斬撃を放つ。

 《ディメンシャード》の防御は間に合わず、騎槍の穂先が胴を薙ぐ。

 地面に叩き付けられた《ディメンシャード》は、名実共に玩具の人形のように四肢を投げ出す。だが、まだ限界ではない。胴体を軋ませながら、ふらふらと立ち上がった。

「では終わりにしよう。何体目だ?」

 エイトは、《アブソリュート》はそう問いながらレリクト・バレットを右手で引き抜く。

「それを倒すことに成功したのなら、十八体目になる」

 白衣の男は律儀に答える。

「そうか」

 《アブソリュート》は左義手型アームドレイターのボルトハンドルを操作し、レリクト・バレットを装填する。

 左義手を通して、黄金の騎槍へとレリクトが伝播していく。煌々と輝く騎槍を右手で持ち直すと、《アブソリュート》はそれを投擲した。

 狙いは《ディメンシャード》だ。しかしダメージが嵩んでいるとはいえ、《ディメンシャード》が大人しく直撃を受け入れる筈がない。

 故に、《アブソリュート》は地面を蹴り飛ばして飛翔した。その速度は投げた騎槍を易々と追い越し、《ディメンシャード》に肉薄してみせる。

「では十七体目は」

 《アブソリュート》は接近と同時に《ディメンシャード》に掴み掛かる。《ディメンシャード》はそれを弾くも、折り込み済みだった《アブソリュート》は右フックで頭部を凹ませ、左の拳を打ち下ろして体勢を崩し、左の膝で胸をかち上げる。

「これで」

 《ディメンシャード》という器がひび割れ、レリクトが稲光となって放出される。その光量を前にしても、金結晶の輝きがくすむことはない。

 《アブソリュート》は脱力しかけている《ディメンシャード》を今度こそ掴み、立ち位置を入れ替えるようにして投げる。

「終わりだ」

 投げるや否や右足を突き出し、《アブソリュート》は《ディメンシャード》を蹴り付けた。

 ちょうどその時、投げておいた騎槍が《ディメンシャード》の背中に突き刺さる。

devastate(デバステイト),lance(ランス)

 《アブソリュート》の足と騎槍、二つに挟まれた《ディメンシャード》は、為す術なく爆散した。

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