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第1191話 VIP待遇

「あら、鹿肉を持って来てくれたのね。丁度よかったわ」


 村長さん宅に戻ってきた途端、持っていた鹿肉をキャスカさんに奪われてしまう。

 否、奪われたのではない、預けたのだ。


 よくよく考えたら、俺達は前回同様村長宅にお世話になってる。

 しかも前回と違って俺達にはエレさんというフベルトゥス商会のVIPまで同行している。

 今回、ケチャップの取引が成立すれば、今後は商会の人がケチャップを取りに来るようになる。

 商会としても空荷で来たりはしないだろうから、村で売れそうな品を定期的に運んでくる。


 村とベスマは歩いて一日ぐらいの距離なので、物資が不足していても買い出しは可能だったが、それでも村へ行商人がやって来るようになるのはデカい。

 なので歓迎会も兼ねて、キャスカさんサイドで夕食の準備をしてくれるようだ。

 一応、俺達も彼女の護衛という立場なので、ご相伴に預かれるのはありがたい。


「ウチも一角鹿は久しぶりなのよねぇ。あなた達が来てくれて良かったわ」


 ウルザラ村は小さな村ゆえ、食生活は質素の一言に尽きる。

 野菜類はある程度自給できていてもタンパク質は狩人のアランさん頼りであり、それは村長一家という立場であっても同じらしい。

 そう考えると、昨日の昼に食ったワニの唐揚げ以降、ずっと肉食な俺達ってかなり贅沢な食生活してるのか。


「折角の鹿だから、そうねぇ……人数も多いし、鍋にでもしようかしら」


 チーム『パレシャード』の三人とレイアちゃん一家、更にエレさんを加えてると俺達だけでも七人になる。

 そこにクレアを含めた村長さん一家の七人が加われば、総勢十四名となるのだ。

 対するお裾分けしてもらった肉は多めに見積もっても一キロぐらい。

 これでは普通に焼いて分けようとすると、一人頭の量なんて百グラム以下になってしまう計算だ。


 現状、あまり肉に食指が動かない俺としては百グラム程度でも気にならないのだが、歓迎会も兼ねた夕食会のメインが一口二口程度の肉では物悲しすぎる。

 だったら野菜も入れた鍋料理にしてしまえば、肉の少なさはカバーできる。

 俺としても肉オンリーに比べればずっと軽くなるので大歓迎だ。


「煮込むのにちょっと時間がかかるから、それまでゆっくりしててね」


 十四人前だしなぁ。

 今から食材を仕込んで煮込むとなると、下手すれば日が暮れてしまうだろう。

 それまで暇なんで、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうとしよう。




「相変わらずのショボさだなぁ」


 目の前には客間だと言われた部屋。

 家具も藁よりはマシ程度の木製ベッド、勿論マットレスなどない。

 いや、マットレスがあったとしてもノミやダニがいて寝るどころではないか。


 あとは引き出しもついていない、棚と言った方が正しい気もする机。

 イス代わりであろう木箱。

 正直、前回来た時となんら代わり映えしない景色だった。


 まぁ前に来た時から一か月も経っちゃいないんで、早々変わったりはしないか。

 VIPであるエレさんが泊まる方の部屋は、慌てて掃除したのか結構整っていたようだが、その分こちらには手が回らなかったようで、うっすらと埃が積もっている。

 まぁこの程度ならシャーロットの『超洗浄』で一発なんで、気にはしないけど。


 早速、彼女の魔法で部屋を綺麗にしてもらうと、適当な壁にバックドアを召喚する。

 このバックドアがある限り、どんなにショボく狭い部屋だろうと関係ない。

 チートスキル様様である。


 ガチャリとドアを開けると、とりあえずリビングルームに向かう。

 寝室に向かっても良かったのだが、今日の部屋割りは未だ決まってないからね。

 レウスさん次第じゃ、再び寝室を明け渡す必要もある。


 だったら無難なリビングルームで旅装を解くことにしたのだ。

 脱いだ鎧や槍なんかは、マジックバッグに入れておけば、部屋の移動も簡単だしな。


 着替えを済ませた俺は、コタツに入るとテーブルの上に置きっぱなしにしていたオレンジを剥き始める。

 食事の準備が整うのはまだ先だろうし、オレンジ一個程度なら間食のうちにも入らない。

 ピザ作りで疲れ切った心と体を、コタツ様のヒーリングパワーで癒すのだ。

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