第1192話 今は『いい国つくろう』ではなく『いい箱つくろう』らしい
「…………」
「…………」
「アナタ、剥けましたよ」
「うむ、貰おう」
「……ん、ママ、今度はこっち」
「はいはい、甘えんぼさんねぇ」
俺の正面に座るレウスさんに、剥いたオレンジを渡す左に座るゴルナさん。
そのゴルナさんに、今度は自分の分を渡す右に座るレイアちゃん。
火龍一家の仲睦まじい姿を見せつけられていると、独り身の俺への当てつけかと勘繰りたくなる。
俺がコタツでまったりと夕食が出来るのを待っていたら、レイアちゃん、レウスさん、ゴルナさんの三人がリビングルームにやってくると、そのまま空いている所に座った。
そしてそのまま一家団欒が始まったワケだが、正直俺が異物のように感じられて少々居心地が悪い。
いっそ席を立ってしまいたいんだけど、なんかレウスさんの様子が変なんだよな。
ずっと黙ったまま、スジを取ったオレンジを口に運んでいるが、その目は俺をじっと見ている。
敵意とか殺気のようなモノは感じられないが、黙っていれば威厳ありまくりのレウスさんに見詰められているのも、居心地の悪さを増長している要因の一つだ。
なんていうのかな……ウチの父も、何か大事な事を言い出すときって、大抵こんな感じに黙っていたんだよな。
レウスさんにも同じような気配が感じられるから、こうして居心地の悪さを感じながらも座っているワケで……。
こっちもずっと黙ったままってのも辛いんで、出来れば早めに切り出して欲しい。
なお、俺の勘違いかもしれないんで、こっちからは切り出さない。
こっちが気を利かせて「何か話がありますか?」なんて聞いたのに、「何もないぞ」なんて返されたら、それこそダッシュでここから逃げ出したくなる。
いや、むしろ切り出せば、ここから逃げるきっかけになるのか?
何かあるなら話のきっかけになるだろうし、何も無ければ部屋を出て大浴場に向かえばいい。
今、チラッと確認したら、シャーロットを示す光点が大浴場にいるしな。
あれだ、「こんなところに居られるか! 俺は別の場所に行く」ってヤツだな。
あれ? でもそうなると、俺に死亡フラグが立ってしまうのか?
話そうとしたのに逃げられたレウスさんが怒ってボコりに来るか、大浴場に侵入してシャーロットにボコられるか。
どちらにせよ、そんなフラグは立てなくないので、逸る心を抑えつつレウスさんが話し始めるのを待つ。
「うむ、実はだな……そろそろ戻ろうかと思うのだ」
「戻る……というと、火山へ……ですか?」
「うむ。ここの風呂も悪くないが、やはりあの溶岩の海には及ばないのでな」
ウチの大浴場と溶岩を比べられても困るのだが……まぁ言わんとしていることは分かる。
レウスさんが火山の火口で溶岩浴をしているのは、火口から噴き出す魔素を取り込むためだ。
火龍というか真龍種という種は、そうやって魔素を取り込み生命を維持していると以前聞いた覚えがある(第884話参照)。
ウチの大浴場も魔素は含まれてるようだが、どうやらレウスさんの好みとは合致しなかったようだ。
多分、魔素が持つ属性とか、そんなのが合わなかったのだろう。
なにせシャーロットによれば、ウチのダンジョンコアは『空』属性らしいからな。
そりゃあ見るからに火属性っぽい火龍様とは合わないよな。
まぁ、ウチの大浴場が肌に合わないのなら致し方ない。
元々レウスさんはレイアちゃんを連れ戻しに来ただけだしな。
むしろ今まで家族会議してたのかと、彼らのタイムスケールに驚いたぐらいだ。
あれ? これまで家族会議してたのはレイアちゃんの今後を決めるためであって、その結論によりレウスさんは火口に戻ることにしたんだよな?
となるとレイアちゃんはどうなるんだ?
連れ戻しに来たんだから、彼女も一緒に戻るのか?
それともこのままなのか?




