第1187話 ピザ回しには、練習用のゴム製ピザ生地があるらしい。
GWはビルダーズ2で、ダンデライオン号を作ってみようかねぇ。
「よっ、はっ、ほっ」
クルリと回転させるように生地を投げると、その遠心力によって生地は薄く広がっていく。
その回転を維持するように両手を忙しなく動かせば生地は空中に留まり、あっという間に丁度いい大きさに生地が伸ばせる。
ピザ職人が生地を延ばす際のパフォーマンスとして、よくやっているピザ回し。
その職人芸ともいえる技を、遂に俺も会得できたようだ。
もっとも隣で同じように生地を回しているクレアは、俺よりももっと早く会得していたけどな。
しかも奴は二つの生地を同時に回す離れ業まで編み出している。
右手と左手、それぞれの手で生地を回転させるとか。ピザ回しのプロでも難しそうな技っぽいのに、あっさり会得しやがった。
まぁ彼女の場合、つむじ風を起こす魔法とやらを使ってのインチキだが。
でも、クルクルフワフワと回るピザ生地は、見た目のインパクトは抜群だ。
クレアが生地を投げる度、周りで見ている客たちがどよめきの声を上げる。
くそう、本当は俺の方が先に生地を回し始めたってのに、やはり見た目が派手な方に人の目は集まるのか。
初めはちょっとしたイタズラ心だった。
普通、ピザ作りの工程でもっとも目立つのは、やはり焼き上がってピザ窯から出される瞬間だ。
香ばしく焼き上げたピザが出される度、みんなが殺到する。
対する生地延ばしの工程と言ったらどうだ。
誰も見ちゃいないし、見られているとしたら「さっさと延ばせよ……」なんて視線ぐらい。
実に地味だ。
だが俺の知識には、この地味な行程を一つのパフォーマンスに昇華させる、とっておきの秘策があった。
それがピザ生地をクルクル回して延ばす、通称ピザ回しだ。
コイツを思い出した俺は、早速生地を投げ回してみた。
勿論、ド素人の俺がいきなりやって成功するはずがない。
クルリと回したはずの生地は回転が足りず手元からこぼれ落ち、べちゃりと延し台の上に落ちてしまう。
それでも諦めずに二度三度と回し続けるうち、偶々上手に生地が回る瞬間が生まれる。
元々生地を投げるなんて変わったことをしていたせいで、多少なりとも注目は集まっていた。
投げては落とし、投げては落としの俺に「何してんだ」「さっさと延ばせ」なんてヤジが来る中、それでも「頑張ってー」と声をかけてくれる人も居た。
その声に励まされ、どうにか上手く生地を回せた時、周りから「おおー」と歓声があがったのだ。
やった! 生地延ばしなんて地味な工程でも、ちゃんと目立てた!
周りからも「やったな!」なんて声まであがり、俺の承認欲求も大満足だ。
が、俺の天下はそこまでだった。
俺の隣で生地延ばしを担当してたクレアもまた、目立ちたがりの素養を持っており、生地延ばしなんて地味な工程に鬱憤を溜めていたのだ。
俺にかけられた称賛の声が羨ましかったのか。ヤツも俺を真似して生地を投げるとクルリと回して見せた。
再び湧き上がる歓声。
それも先程の俺よりも声が大きい。
俺が何度も失敗してようやく回せたのに、クレアは一発で成功させたのだ。
そりゃあ目立つに決まってる。
それに味を占めたのか、もたつき何度も失敗する俺の隣で、クレアはクルクルと上手に生地を延ばす。
ピザ回しは単なるパフォーマンスではなく、こうして回すことで手早く生地を延ばせる利点があるため、ピザを焼く回転率も上がっていく。
クレアへの称賛は留まるところを知らなかった。
あと何故か知らんが、生地がモッチモチになるらしい。
クレアが延ばしたピザは、「生地がモチモチして美味い」なんて声が上がるほどだ。
美少女補正とか、村長の娘補正じゃないかと俺は思ってるけどな。
まぁとにかく、クレアの一人勝ち状態が生まれたのである。
「目立とうとして、ピザ回しをする男がいるんですよ~」
「なぁーにぃー? やっちまったな!!」
「男は黙って」「ヒッププレス」
「男は黙って」「ヒッププレス」
「野郎のケツで延ばしたピザなんか食いたくないよ~」
(c)クールポコ




