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第1181話 息子は預かっている。返してほしければ……

(このサブタイは、新聞の切り抜き文字によって書かれている)

「えーっと……改めまして、ショータと言います。冒険者でアレク君達のパーティーと一緒に立ち上げたクラン『白銀の旅団』のリーダーをしています。で、こっちが……」

「シャーロットだ。同じく『白銀の旅団』のメンバーだ」


 回復魔法で癒してもらったのに、未だ痛む感じのする頭頂部を抑えながら、俺達は自己紹介する。

 こういった時の自己紹介は、大抵自身が所属しているパーティーを言うらしいが、俺達が『パレシャード』でアレク君達が『麗しき暁の旅団』だからな。

 ちょっとややこしいくなるので、共同で立ち上げたクラン『白銀の旅団』の方を名乗る。


「あらまぁご丁寧にどうも。ワタシがアレクの母のアルマで、こっちがアレクの父のアランよ」

「……アランだ」


 アルマさんはアレク君によく似た雰囲気を持った人だな。

 多分、彼の性格はアルマさんに似たのだろう。

 たとえ血が繋がっていなくても、十数年も一緒に過ごしていれば似てくるようだ。


 アランさんはアルマさんとは真逆な感じだな。

 寡黙というか、必要なこと以外は話さないように見える。

 普段、森の中で獲物を待ったりしていると、自然と口数が少なくなるのかね。


 もっとも、後でアレク君に教えて貰ったのだが、アランさんが寡黙そうに見えたのって、実は人見知りで知らない人が来ると緊張してしゃべらなくなるからなんだとか。

 なんか黙ってジーっと見られていたから、ちょっと……いや結構怖かったんだけど、アレって単に緊張していただけなのか。


 ただ、アルマさんもアランさんも、髪に白いモノが混ざり始めている。

 ワザワザ白髪に染める必要は無いだろうから、恐らく結構お年を召しているのだろう。

 アレク君の歳を思えば彼と二人との血縁関係は無さそうだが、それでも二人ともアレク君の父と母と名乗っているのだから、そんなモノは家族の絆には必要ないようだ。


 ま、血縁関係だけが家族というのなら、夫婦なんて全くの赤の他人からのスタートだしね。

 血の繋がりは無くとも、みんなで一緒に過ごした時間が、家族の絆を育てるのだろう。 


 それに、この世界じゃ見た目なんてあまり当てにはならないしな。

 隣のシャーロットなんてこう見えて五百歳越えだし、産婆のアイナさんはどう見たって小学生にしか見えなかったし。

 とはいえ二人の見た目が若いのは、どちらも寿命の長い魔族の血が入っているためだけどね。

 普通のヒト族である二人は見た目通りの年齢に思える。


「とりあえず、立ち話もなんだから座りましょうか……ってイスが足りないわね……」

「母上殿、我々はこのままでも構わないのだが」

「お客さんを立たせっぱなしにするわけにはいかないわ。ちょっと待ってて……たしか物置にイスの代わりになりそうな丸太があったはず……」

「いや、そこまでして頂かなくても……」

「……そこに座ればいい」

「あら、そうね。その方がみんなして座れるわね。じゃ、こっちでお話ししましょうか」


 アランさんが示したのはイスが三脚しかないテーブルではなく、リビングらしきスペースに敷かれた毛皮だった。

 何の毛皮なのかは分からんが、かなりデカい。

 五人が座っても十分な大きさの毛皮とか、生前だとどれ程の強さを誇ったんだろうね。

 そしてソイツを仕留めてきたアランさんの強さも。


 どちらがイスに座るか揉めているぐらいなら……と、アランさんの提案に従い俺達は毛皮が敷かれた床に座ることにした。

 決してアランさんの鋭い眼光に射竦められた訳では無い。

 そう、これから二人に話すことを思えば、ここは大人しく従うのが正しいのだ。





「……という事で、アレクを守るために、ショータの奴隷となったのだ」

「うーん……勇者の卵とか言われても良く分かんないけど、とにかくアレクは納得したのね?」

「うん。シャーロット師匠は嘘を言うような人じゃないからね。多分、こうなることが一番なんだと思うんだ」

「……そうか」


 敷かれた毛皮に車座になって座ると、さっそく本題であるアレク君が奴隷になった経緯を話し始めた。

 と言っても、説明するのはシャーロットで、俺はその横で黙っているだけだが。


 シャーロットの鑑定に出た、アレク君に秘められた素質の事や、それを裏付ける予言の事。

 過去にもアレク君のような勇者の素養を持つ者が現れ、その予言を信じた奴らによって悲惨な最期を遂げてしまった事。

 かつて俺がアレク君の主人になったときに聞いた説明を、シャーロットはアレク君のご両親にも丁寧に話してくれた。


「で、その『勇者は二つの性を持つ者に現れる』っていうの? それってどの程度信頼できる予言なの?」

「信頼度としては半々といったところだな。正直、私もこの予言は外れていると思っていた」


 まぁ実際、五百年もの間、勇者は出現してなかったからな。

 そりゃ外れると思うのも当然だろう。


「だが、その思いはアレクを一目見て一変した。この者こそ勇者になる者だと、私の勘が告げていたのだ」


 私の勘って言われても、アルマさん達はキョトン顔だぞ?

 俺はお前が元魔王だと聞いているからまだ大丈夫だけど、アルマさん達にとってのお前は単なる一冒険者だからな?

 とくに有名でもない冒険者の勘なんて、どんな保障になり得ると思っているのだろうか?

 己の立場をよーく思い出してから、もう一度同じセリフを言って欲しいものだ。

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