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第1180話 娘さんをください

「ふふふ……可愛いなぁ。出ないのに必死になって吸っている」


 まろび出された褐色スライムさんを赤子が吸い付ている。

 その赤子のプニプニしたホッペを、シャーロットはツンツンと突いている。


 どうやら泣き止まない赤ん坊をあやすために、彼女は自身の褐色スライムさんを生贄に捧げたらしい。

 その見返りとして、プニプニほっぺを突ける権利を得たようだ。


 って、いやいや、それじゃダメだろ。

 赤ん坊にしてみれば、お腹が空いているから吸ってるんだからな?

 出ないなら無駄な体力使わせずに、出る人に任せろよ。

 そして代わりに俺に吸わせろ。


 そうツッコミを入れてやりたかったが、赤子に褐色スライムさんのピンク色した先っちょを吸わせているシャーロットの姿を見ていると、もうちょっと見守ってやりたくなる。

 決して真っ昼間から褐色スライムさんのご尊顔を拝謁出来たからではなく、赤子を抱く彼女の姿が、さながら一服の絵画のように見えたのだ。


 もしこの絵画にタイトルをつけるとしたら、「母性」とかそんな感じのを付けたくなるだろう。

 とりあえず「元魔王、赤子をさらう」とは絶対に付かない、そんな光景だった。


 とはいえ、いつまでも見惚れている訳にもいかない。

 褐色スライムさんの角からは何もでない為、今は大人しく吸い続けている赤ん坊のクルト君も、いずれはその事に気付きギャン泣きを再開してしまうはず。


 それにお腹が減っているからああして褐色スライムさんに吸い付いているのだ。

 赤ん坊の事を思えば、さっさとキャスカさんに返すべきだろう。


「あぁーぷにぷにだなぁ。ずっと突いてられる」


 赤子が褐色スライムさんい吸い付くのを止めないように、シャーロットもまた赤子のほっぺをつつくことを止めない。


 それはさながら、どちらが先に止めるかを争うチキンレース。

 延々と突いていられるシャーロットに対し、吸い続けても目的が果たせない赤ん坊の方が圧倒的に不利なレースだ。


 あ、いや、シャーロットの方もヤバいな。

 さっきは母性すら感じる光景だったのに、プニプニホッペを突いているせいか段々だらしない顔になってきてる。

 そのうえ、「うへへへ……」なんて呟きまで聞こえるようになってきやがった。


 マズイ……このままでは「うへへへ……」が「ぐへへへへ……」に変わってしまうのも時間の問題だ。

 これは赤ん坊が泣きだす前に、シャーロットの方が「お巡りさん、こっちです」をされてしまう。

 仕方ない……シャーロットの名誉を守るためにも、俺が強制介入して水入りに持ち込んでやるか。






「だからー、アレはお前を守るためなんだって」

「いい年して人の乳に吸い付こうとする奴に、守られたいなどと思わん!」

「ショータさん……」


 いや、サイズに好みはあれど、スライムさんを嫌いな男は居ないからな。

 たとえジジイになってても、吸い付きたいと思うぞ?

 ましてや褐色スライムさんともなれば、誘蛾灯に群がる蛾のごとく吸い寄せられても仕方ないだろう。


 当然の事だが、シャーロットを守るためにワザと吸い付つこうとしただけだからね?

 まぁ流石に「バブー」はやりすぎだったかもしれんが、こうして俺が体を張ってお巡りさんを引き付ければ、被害者となったシャーロットが通報されることは無いからな。

 そう、俺は『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』ってヤツを体現したのだ……違うか。


 まぁとにかく、シャーロットの名誉は守られた。

 俺の名誉は少々損なわれた気もするが、身を挺して彼女を守ったことでプラマイゼロになったはず。

 シャーロットの俺を見る目がジト目になっているが、褐色美人のジト目ならむしろご褒美です。


「それより、さっきの事。頼んだからな?」

「む、露骨に話を逸らそうとするな。……だが、まぁいい。お前一人では不安なのも確かだからな。引き受けてやろう」


 よっしゃ、人身御供ゲットだぜ。

 あとはシャーロットが説明する際、なるべく気配を消し続けていればいい。

 そうすればご両親の怒りの矛先は、ご主人様となった俺ではなくソレをけしかけたシャーロットの方に向くはずだ。


 準備は整った。

 これで安心して「娘さんをください」イベントを実行できる。

 まぁアレク君は娘ではなく息子だが、目的は似たようなモノだ。


 コンコンコンと、森の中にあるログハウスの扉をたたく。

 アレク君の話だと、この時間帯なら狩人のお父さんも戻ってきている頃合いらしい。

 やはりこういった大事な話をするなら、ご両親が揃っている時に伺うべきだよな。


 ノックして待つこと暫し。

 パタパタと駆け寄ってくる足音がしたと思ったら、勢いよく目の前の扉が開かれる。


「初めまして! ワタクシ、ショータとい――――!!」


 ――ゴッっと、鈍い音が森に木霊する。

 ドアが開かれるタイミングで挨拶しようと頭を下げたせいで、無防備にその攻撃を頭頂部に受けてしまったのだ。

 あまりの不意打ちに、思わず崩れ落ちる俺。


 くっ……のっけからこの仕打ちとは、やはり「娘さんをください」イベントは強敵だぜ。

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