第1175話 お中元といえば羊羹とゼリー
ケチャップを入れる竹容器は、節と節の間を使って作られているため、竹の生長の度合いにより内容量がまちまちになる問題。
これを解決するには節を片側だけ使い、容器としてしまえばいい。
このアイディアをドヤ顔で披露してみたのだが、ご婦人方に一蹴されてしまう。
曰く、「そんなのはとっくに思いついているわよ」らしい。
そして節のない方を完全に密閉する方法が見つからず、この方法は諦めたそうだ。
コルクのような柔らかい栓を使ったり、あるいは竹の葉っぱを使って蓋にしたりと、それはもう色々頑張ったそうだ。
おおう、葉っぱの蓋は試し済みだったのか。
俺が思いついたアイディアも、同じ竹の葉の蓋だったんだよな。
片側だけ節になった竹を思いついたとき、すぐさま竹羊羹を思い出したからな。
竹羊羹は祖母が夏になると作ってくれた、我が家にとって夏の定番ともいえるお菓子だ。
俺も何度か作るのに駆り出され……ゲフンゲフン、手伝った記憶がある。
うーむ、自信満々でダメ出ししてしまったのに対案が無いとか、これじゃあの時の上司と同じになってしまう。
ソレだけは何としても回避しなくては。
うなれ! 俺の脳細胞! 超高速回転して別の代案を思いつくのだ!
竹……葉っぱ……羊羹……羊かん……洋館……羊羹はよう噛んで……
くっ、ダメだ。下らな過ぎるギャグしか思いつかない。
こうなったら羊羹の案は諦めよう。
時代は和菓子ではなく洋菓子だよな。
洋菓子……ケーキ……プリン……ぷっちん……ゼリー……
ん? ゼリーか。
フルーツゼリーって、中身が零れそうになるぐらい入ってるけど、アレって中をゼリーで充満させることで空気が入らないようにして、長期保存を可能にしていると聞いた覚えがある。
これならイケるのでは?
「たしかに普通に入れるよりも、しっかり入った気がするねぇ」
「でも零れてしまった分が勿体ないね」
「そこは慣れるしかなさそうだね。なるべく早く零れない丁度いい量ってのを身につければ、解消できるかな」
竹容器にケチャップを溢れるぐらい入れた後、中身を零しながら竹の葉で封をする。
封をした直後は、ブラッディバンブー<血塗れの竹筒>なんて二つ名でも付きそうな見た目だったけど、綺麗にすればちょっと古くなった感のある竹筒になったから大丈夫なはず。
これなら後はご婦人方の言うように、習熟していけば零す量も減るだろう。
良かった良かった。
これで俺の面目も保たれただろう。
いや、画期的なアイディアを出したとして、末永く称賛されるかもしれん。
「甘い、甘々っス。その程度じゃ密閉性は高め切れないっス」
そんな俺のささやかな野望に、シュリは水を差してきやがった。
良いじゃないか、これで。
逆さにしても零れてこないんだから、これで十分だろ。
そう言おうとして葉っぱで封をした竹筒を手に取り逆さにしてみる。
ところが封の仕方が甘かったのか、筒の中身がぶちまけられ辺り一面さながら血の池地獄と化してしまう。
特に俺の被害が酷い。
お腹周りなんか、それこそ刺されたかのように真っ赤だった。
思わず「なんじゃ、こりゃぁああ!!」と叫んでしまう程だった。
「ケチャップっスよ。見て分からないっスか?」
「いや、これはジーパンが殉職した時のだな」
「ジーパンはズボンっスよ? 殉職なんかするはず無いっス」
くっ、これがジェネレーションギャップというモノなのか。
奴も俺も同じ幼少期を過ごしたはずなのに、あの名シーンを知らないようだ。
いや、俺も再放送か何かでドラマの名前を知ってるだけで、実際のシーンは見た事無いんだけどね。
「ちょっと! くっちゃべってるのはいいけど、掃除ぐらい自分でしなさいよね」
「「ア、ハイ。すみません(っス)」」
ご婦人方が手際よく、俺が汚してしまった床やテーブルを掃除してくれているのを見て、邪魔をしない方が良いかと思っていたが、そうは問屋が卸さなかったようだ。
ケチャップ塗れの服は便利魔法の『洗浄』で、床やテーブルは普通にモップと台拭きで大まかな汚れを綺麗にした後、更に『洗浄』を掛ける。
この方が初めから『洗浄』で全部を綺麗にしようとするよりも、ずっとMPの節約になるのだ。
「で、人の名案にケチをつけた以上、それ以上の案を持っているんだろうな?」
「モチのロンっスよ。伊達に城に籠ってポーションとか作っちゃいないっス」
モチのロンってお前……本当はジーパンネタも分かってただろ。
やはり若く見えても俺と同年代のようだ。
「ポーションも長期保存が必要な薬品っスからね。参考になる保存の仕方が沢山あるっスよ」




