第1164話 ホタカ
モグモルはモグラみたいな魔獣だけど、サイズは一般的なモグラと違い中型犬ぐらいはある。
多分、体重的には20kgはあるだろう。
そんなモグモルを獲物として狩れるホタカは、鳥の王者と言えるかもしれん。
しかしこの世界においては、鳥の王者イコール空の王者ではない。
この空には、空を飛べる生き物は鳥以外にも数多く存在しているからだ。
ワイバーンや飛竜、そして……真龍。
人は魔法か飛空艇によってしか空を飛ぶことは出来ないし、その戦闘力は真龍種には遠く及ばない。
空は未だ彼らのモノなのだ。
その空の王者たるドラゴンの中でも最強を誇る真龍種。
その一角たる火龍のレイアちゃんが狙っていたモグ肉を奪い飛び去ろうとしたホタカは、まさしく逆鱗に触れたことになる。
全裸幼女が火龍の姿に変じ、ホタカの後を追う事、数十秒。
彼女は右手にモグモル、左手にホタカを掴み、戻ってきた。
ホタ肉、ゲットだぜ!
って、肉を奪われた恨みは分かるけど、ホタカまで狩ってきたのはやりすぎじゃないだろうか?
穴を掘って畑を荒らし、時には作物を食べてしまうせいで害獣認定されているモグモルは、見つけ次第討伐を推奨されているため、モグモルを狩ることは問題ない。
しかし、その害獣を好物としているホタカは、いわば益獣といえる扱いになる筈。
その益獣を勢いあまってとはいえ、狩ってしまったのは大問題になるのだろうか?
「ふむ……確かにモグモルを狩るホタカを狩ったのはマズかったかもしれん」
「じゃあ……」
「しかし既に獲ってきてしまった以上、今更どうしようもなかろう。それに町も近いからな。ホタカはモグモルが好物なだけで、別にソレだけしか獲らない訳では無い。人に被害が及ぶ前に退治できたと思えば、問題はなかろう」
そうか、モグモルを好むってことは、ホタカは肉食獣になる。
そしてモグモルの大きさは、おおよそ子供ぐらい。
加えて空からの強襲となれば、人間の子供がターゲットになる可能性は十分にあり得るよな。
実際、子供や場合によっては大人でも被害にあうケースがあるらしい。
そうなるとホタカも害獣認定され、討伐対象になるのだけど、こっちは中々討伐されることは無い。
動物保護団体の抗議が殺到するから……なんて現代的な理由では無く、単に狩れないからだ。
地面に穴を掘っているだけのモグモルと違い、ホタカは空を飛んでいる。
降りてくる時といえば獲物を狩るための急降下ぐらいなので、直接攻撃するチャンスは中々無い。
そうなると魔法頼りの戦いになるのだが、それはホタカの方も分かっているらしく、普段は魔法が届かない、豆粒にしか見えないような高度で、こちらの様子を伺っているのだ。
まぁそれも空が飛べる利点があるからこそ。
同じフィールドに立ち、ホタカ以上の機動戦が出来るレイアちゃんにとっては、単なる獲物でしかなかった。
ょぅι゛ょっょぃ。
ただ、レイアちゃんがホタカを狩ってきたことで、何も問題が無かった訳では無い。
ストリーキング幼女が出没した? まぁ確かにそれも問題だろうが、その手の紳士たちに知れ渡らなければ大丈夫。
それよりも問題なのは、レイアちゃんの正体が火龍だと、エレさんにバレてしまった事だ。
火龍という絶対強者を目の当たりにしたエレさんが、その驚きの余り腰を抜かしている。
いや、股間を隠そうとしている仕草からすると、恐怖でチビってしまったのかもしれんな。
本人の名誉のために、あえて指摘したりはしないけど。
精々、その仕草を心のアルバムに残しておくぐらいだ。
あ、もう一つ問題があった。というか出来た。
この後、俺が飛空艇を召喚しても、インパクトがめっちゃ薄れるじゃん。
何も無ければ「こ、これは……」とか言ってもらえたかもしれないのに、レイアちゃんの後で召喚しても、「ふーん」の一言で済まされそうじゃん。
どうせバラすなら、もっと驚くタイミングでバラしたかったのに!
誰だ!? レイアちゃんにホタカを追わせた奴は!?
って、俺だ!
俺がうっかりモグモルの刺さった槍を掲げたせいで、ホタカに奪われたんだった。
俺のバカ!!




