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火曜日(1)

 お昼休み。

 鞄から取り出した丸のままのリンゴを囓る恭香に、くっつけた机の向こう、購買で買ったサンドイッチを開けたばかりの美晴が目を丸くした。

「何あんた。お昼、それだけ?」

「うん。向こう一ヶ月、りんご以外食べないから私。りんごダイエット」

「っか~! 磯野波子(なみこ)の娘が、お弁当にりんごだけ。泣くわよ、お母さん」

 恭香の母は、テレビにも出て本も出している、お料理研究家だ。昨日自分の事を、有名でもないけど無名でもないと評したのは、それが理由だ。有名人の娘は、無名ではなかろう。嘆く美晴を無視して、真っ赤で酸味の強い紅玉を囓ると、初恋の味がした……というのは、もちろん嘘である。

「豊満が売りのあんたが、痩せてどうすんのよ? 個性死ぬわよ」

 卵サンドを頬張りながら、美晴がつっこむ。恭香とて、まさか人目を気にしてダイエットをすることなど、予想もしていなかった。今の自分のスタイルだって、嫌いではない。だけど細身の管野と並ぶとしたら、華奢で素朴な外見のあの一年生の方が、断然お似合いなのである。

 小さめのりんごは、あっという間に芯だけになる。恭香はそれをゴミ箱に捨て、席に戻った。美晴のランチがまだ終わっていないので、真正面で親友の食事シーンをしばし眺める。今朝からりんごしか食べていないので、目の毒だ。


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