7/10
火曜日(1)
お昼休み。
鞄から取り出した丸のままのリンゴを囓る恭香に、くっつけた机の向こう、購買で買ったサンドイッチを開けたばかりの美晴が目を丸くした。
「何あんた。お昼、それだけ?」
「うん。向こう一ヶ月、りんご以外食べないから私。りんごダイエット」
「っか~! 磯野波子の娘が、お弁当にりんごだけ。泣くわよ、お母さん」
恭香の母は、テレビにも出て本も出している、お料理研究家だ。昨日自分の事を、有名でもないけど無名でもないと評したのは、それが理由だ。有名人の娘は、無名ではなかろう。嘆く美晴を無視して、真っ赤で酸味の強い紅玉を囓ると、初恋の味がした……というのは、もちろん嘘である。
「豊満が売りのあんたが、痩せてどうすんのよ? 個性死ぬわよ」
卵サンドを頬張りながら、美晴がつっこむ。恭香とて、まさか人目を気にしてダイエットをすることなど、予想もしていなかった。今の自分のスタイルだって、嫌いではない。だけど細身の管野と並ぶとしたら、華奢で素朴な外見のあの一年生の方が、断然お似合いなのである。
小さめのりんごは、あっという間に芯だけになる。恭香はそれをゴミ箱に捨て、席に戻った。美晴のランチがまだ終わっていないので、真正面で親友の食事シーンをしばし眺める。今朝からりんごしか食べていないので、目の毒だ。




