⑨ あわや大惨事
これは、後になって、ウアジェト女王から報告を受けた話である。
事件当日は、チーム・サンジェルマンの誰一人として、そんな大事件が起きているとは、知る由も無かった。正直な話、吞気にレストランで、お茶を飲んだりしていたのである。
それは5月26日水曜日の事である。そして時刻は、日本時間で朝10時ちょうどの頃。
東のとある大国の指導者……確か名前は〇リツィンとか言ったか……が、大陸間弾道ミサイル……所謂ICBMの発射ボタンを、うっかり押してしまったのである。
後に本人が語っている事を信用すると、その時の意識はまったく無かったそうである。因みにミサイルのターゲットは、〇スアンゼルスにセットされていた。
西の大国のレーダーに、その様子はしっかりと移っていた。当然、対抗措置として西の最高指導者……確か名前は〇リントンだった筈だ……もミサイルの発射ボタンを押した。
こちらもターゲットは〇スクワにセット済みだった。普通ならこれで第三次世界大戦の幕開けとなるところだった。つまり"人類の歴史の終わり"の始まりである。
その後、地球は"猿の惑星"になってしまうのかどうかはさて置き、人類滅亡は確定的だった。
……ところが、そうはならなかったのである。
結論から言えば、どちらのミサイルも、目標の都市に着弾しなかった。それが大気圏を抜ける直前に、どちらもレーダーからロストしたのである。
では、そのミサイルはどうなったのか?……それはどちらも、あの"大気圏クラゲ"にキャッチされてしまったのである。
捕らえられ、喰らわれ、すっかり分解、消化されてしまったのだ。そんなモノを食えるのか?いや、実際に食べてしまったのだから仕方がない。
言わばコレは、"惑星ガイア"……つまりこの地球の、自己防衛本能による、自浄作用とも言える現象であった。
そんな訳で、結局、第三次世界大戦は勃発しなかった。
人類の終わりは来なかったのだ。
正直な話、東の指導者も西の指導者も、胸を撫で下ろしたのである。
もちろん、東の指導者の精神を操る事によって、最初にミサイルを撃たせたのは、例のベルゼブブであった。自らの目論見通りに行かず、さぞや悔しがっている事であろう。
……だが、"ノストラダムスの大予言"の約束の日は、二か月後だ。まだまだ、油断は禁物でなのである。




