⑩ 伯爵の解説
「ベルゼブブの持つチカラの一つは、ターゲットの精神コントロール……。」
またもや、名護屋テレビ塔の、亜空間レストランに緊急招集された、チーム・サン・ジェルマンのメンバーに向けて、伯爵が解説を試みる。
「……どうやら、意志薄弱な者ほど、その精神コントロール下に置きやすいようなんです。」
「……つまり、心の隙につけ込むんですね。正に悪魔の所業だな。」
杉浦鷹志が呟いた。
「手始めに、エビ、カニなどの甲殻類の集団、そして次に昆虫のハチ、更にはストレスが溜まっていたニンゲンの高校生をたぶらかし、最後は、カネと権力に取り憑かれた、大国の指導者の心を操りました。」
「……単純な精神構造の生物から試して、ニンゲンには共通して、心の隙が有った者を狙ったのね?」
真田雪子が、わが意を得たりという顔で、そう言った。
「……そうです。そして、東西の大国から、双方の核ミサイルを発射させました。しかし、ベルゼブブの目論見通りには、事は進みませんでした。」
「成層圏クラゲたちが、私たちの味方についてくれたのね?」と由理子が言った。
「いや実は……必ずしも、そうとは言い切れません。」
「えっ?」
「彼等は、地球の大気汚染を防ぐために、動いただけ……つまり普段の生活の、延長上の行動をしただけ、という見方も出来ます。」
「……そうなんだ。」
残念そうな由理子。
「多分また、別の手段を使って、ベルゼブブは攻めて来るでしょうね?」と雪子。
「或いは今度こそ、直接支配に踏み切るのか、かしら?」と京子。
「正面から攻撃してくれた方が、私たちとしては、ヤリ易いんだけどねえ。」と香子。
「その時は僕が、ひと思いに、叩き潰しますよ。」と、気乗りのしない感じで言う雪村。
「大体、そのベルゼブブという名の悪魔は、どんな姿なのかしら?」と弓子。
「伝説によると、巨大な蝿の姿をした魔王だとか……?」と伯爵。
「一体、何処に潜んで居るのかしら?いっそコチラから、先制攻撃してやりたい気分だわ。」とカグヤ。
「……私も同感です。そんな卑劣な輩は、今すぐ、この剣で斬り伏せてやりたいです。」とジャンヌ・ダルクも言った。
「相手が虫の類ならば、私の八咫烏も、きっとお役に立ちますよ?」と巫女の藤原貞子も、鼻息荒く言った。多分彼女も、あれから様々な修行を積んだ筈だ。その他にも、色々と使えそうな式神を、数多く持っている事だろう。
「実際の話、この地球の海底も成層圏も、まだまだ私たちニンゲンにとって、未知の領域だらけですしねえ……その上、地球外にまで目を向けるとなると、敵がいつ、何処から襲ってくるのやら、サッパリ分かりません。」その点に関しては、流石の伯爵も、見当がつかないようだ。
「今後も、ウアジェト女王の協力を仰ぎながら、警戒を怠らないようにしましょう。」最後に彼は、そう言ったのだった。




