⑪ 6月の侵略者
6月14日の月曜日。時刻はちょうど正午を回った頃。
ウアジェト女王(フルカネルリ卿)の報告によると、彼女の12基の人工衛星が、太陽系内の、ちょっとした異変をキャッチしたとの事だった。
まず一つ目は火星だ。赤道付近に広がる、全長約4,000km、深さは最大で10kmに達する巨大な裂け目、マリネリス渓谷の中央辺りから、大小の不審な円盤型の影が現れ、それが火星の地表から離れた瞬間に、姿を消した事だ。
そして、まるでその動きに呼応するように、月の裏側の方からも、別の円盤らしきモノが出現し、それが表側を横切った瞬間に、消えてしまったのだ。その日は、たまたま新月だったから、危うく見落とすところだったらしい。
昔から、新月の日は"物事を新しくスタートさせるのに、最適なタイミング"とされ、それが円盤の出現と重なった事に、何かしらの意味を感じてしまう、とも彼女は言っていたのである。
しかし、異変はそれだけに止まらなかった。
彼女の本拠地の地下世界にも、再び、急進的な爬虫類族……アラハバキの残党が、攻め込んで来たのだ。どうやらついに、奴らはチベットのポータルを突き止め、抵抗するダライラマを退け、押し通って入ったらしい。
その状況下では、人工衛星で待機していたウアジェト女王は、地下に戻らざるを得ず、気になる宇宙の監視は部下に任せ、自らは急ぎ、城に帰って行ったのである。
ところが地下の迎撃中に、どこからともなくメジェドがやって来て加勢し、盛大に目からビームや口から火の玉を出したので、アラハバキ軍は、早々に退散して行ったのだった。
メジェドのおかげとは言え、あまりにもあっさりと敵が退却した事に、女王は違和感を感じた。何か変だ。どこかがおかしい。まるで"遊撃"か、或いは"おとり的な攻撃"のような……?
その不安を裏付けるように、地上の世界各国で、思わぬ敵の伏兵が現れたのだ。
それは、凶暴な飛蝗の大群である。中央アジア、ロシア、中国、オーストラリア、フィリピン、アフリカ、マダガスカルなど、その地域は多岐に渡り、同時多発的に襲い掛かってきたのだ。
サバクトビバッタやトノサマバッタなどが各地で作物を食い尽くし、農地のみならず、街にも押し寄せ、家や店の中にも侵入して来たのだった。
サン・ジェルマン伯爵は由理子、香子、貞子、雪村にそれぞれ依頼し、味方の神獣・幻獣・霊獣を、世界各国に直ちに派遣して、それらに対応した。
スフィンクス、鵺、雷獣、八咫烏、九尾の狐、白澤、ガネーシャ、グリフォン、アエテルナエなどが、虫どもをことごとく蹴散らし、滅していったのである。




