㉚ 真のラスボス
「えっ、それは一体、どういう意味なのかな……?」
ウアジェト女王は、聞き捨てならないと言う顔になった。
サン・ジェルマン伯爵は、その問いには答えず、話を続けた。
「……思い返せば、かつてアラハバキにより、蝿のDNAに細工して作り出された生体兵器が、自我を持ち、コントロール不能となりました。皆が危険を感じたため、ソレを3万年前に火星に封印したのは、当時古代エジプトの神々の役目を担っていた、我々五次元人でした。」
「……。」女王は黙って続きを聞いている。
「そして、少なくともその後、我々チーム・サン・ジェルマンの面々は、誰一人火星に行っていません。」
「……。」女王はまだ、黙っている。
「蠅の王の封印を解除し、ヤツを再び目覚めさせたのは、貴女ですね?ウアジェト女王。」
伯爵は、静かに女王に尋ねた。
女王はまだ、黙っている。
「貴女も当時、我々と共に、ベルゼブブの封印に関わっていました。だからその解除法も知っている……貴女になら可能だ。その上貴女は、人工衛星を始めとする、宇宙で活動する高い技術力を持ち、普段は誰にも怪しまれずに地下に籠って、好きなタイミングでポータルを使い、様々な場所に自由自在に出入り出来る……もしかしたらその中には、直接火星まで行けるようなモノまで、有るのではありませんか?」
伯爵はあくまでも冷静な態度で、彼女に重ねて尋ねた。
「証拠は……有るのかい?」
彼女は、ミステリードラマの犯人が、追い詰められた時に必ず言うセリフを、ついに言ってしまった。
「残念ながら……目撃証言が有ります。」
伯爵は、本当に残念そうにそう言った。
「……それは、我々の事だね。」
そう言いながら、エレベーターから出て来たのは、白猫ミケーネ王子と黒猫バステト嬢だった。
もちろんスフィンクスと鵺は、二人をお客様として大人しく迎え入れた。
「……ああ、キミたちのような重要な存在の事を、すっかり忘れていたよ。」
ウアジェト女王は、まるで罪を認めるように、力無くそう言った。
「……我々の主義として、他の時間軸……時空の出来事には関わらないという事を、いつも心がけています。」
ミケーネ王子が語り出した。
「でもどういう訳か、獅子王と狼王に勧められて、バステト嬢とのデートがてら、この時空の火星見物に出かける事になったんですよ……本当にたまたまですよ?たまたま。」
彼は、しらばっくれたような言い方をした。
「我々はそこで、見覚えの有る人物が、火星のクレバス……マリネリス峡谷の中で、何やらゴソゴソやっているのを見てしまったんです。ソレは間違い無く、ウアジェト女王でした。しかも彼女が去った後で、そこに3万年前に封印したはずの、蠅の王の円盤が現れたのです!」




