③ 由来の深堀り
「はい。コレ、バレンタインデーだからね。」
「ああ、ありがとうございます。」
「定番のゴディバだけど、一応、限定品よ。」
「ホワイトデーは、何がご希望ですか?」
「う~ん、考えておくわ。」
そんな京子と伯爵のやり取りを見て、不思議そうにしている貞子。
「あのう……今日は何かの記念日なんですか?先程は、あちらのテーブルで、鷹志さんと由理子さんが、同じような事をなさっていたんですけど……。」
「そうか。貞子さんは見た事が無いわね。コレはね、今から1700年程前に、ローマ帝国っていう、外国で起きた事件が由来なの。若い兵士が恋人と結婚すると、士気が下がるっていう理由で、皇帝……つまり偉い王様が、ソレを禁止したの。でもキリスト教会……伴天連のバレンタイン司祭が、内緒で結婚式をやってあげたのよ。それを知った皇帝が怒って、最終的には彼を処刑してしまったの。その日が2月14日……今日の日付なのよ。後世の人々は、その勇気ある行動と深い愛を称えて、恋人たちの守護聖人として彼を祀るようになったって訳。それが"聖バレンタイン・デー"。」
「……はあ?」
「ああ、それだけじゃ分かんないわよね……その後1000年以上たった頃、ヨーロッパという外国の地域で、その日が"愛を告白する日"として定着したの。基本的には恋人でも家族でも友人でも、愛と感謝を伝える相手は自由なんだけど、日本ではいつの間にか、女性から男性にチョコレートを贈る日になっていたのよ。」
「……それはまた、どうして?」
「所説有るけど、一番有力なのは、日本の菓子メーカーの、モロゾフが仕掛けたキャンペーンの影響っていうのが、有力ね。それで、まんまとチョコの売り上げが上がったって訳。その上調子に乗って、男性から女性に、クッキーやホワイトチョコなんかをお返しする、"ホワイトデー"まで3月14日に勝手に決めて、もうやりたい放題よね。」
「はあ……そうなんですねえ。」
江戸時代から来た貞子にとっては、やはりよく分からない話だった。
「……まあでも、あと25年もしたら、流行りすたれる習慣なんだけどね。」
「……えっ?」
「ああ、いけない、いけない。つい口が滑っちゃったわ。今のは忘れてね。」
京子はそう言うと、貞子に向かってテヘペロして見せた。
「はい……分かりました。」最後に貞子はそう言ったが、説明の半分以上が意味不明だった。
(まあ、それぐらい、遠い未来に来ちゃったって事ね?)彼女はそう考えることにしたのだった。




