㉘ 大団円の前に
1999年8月1日の日曜日。時刻は午前10時頃。
サン・ジェルマン伯爵とその仲間たちは、あの闘い以来、久しぶりに全員、名護屋テレビ塔の、亜空間レストランに集まって、ティータイムを楽しんでいた。
そのメンバーは、チームリーダーで不老不死の伯爵以下、そのパートナーで雪女の村田京子、"蝿の王"との闘い代償に、チカラの大部分を失った真田雪村、その妻でヒーラーかつテレパスの弓子、妹で植物使いの香子、実は"スカラベ"だった杉浦鷹志、その妻で動物使いの由理子、永遠の17歳で"超時空の旅人"の真田雪子、すっかり体調も回復した、若きアヌンナキのカグヤ・イシュタルと、雪村由来のクローン人間である成雪のカップル、そして聖女ジャンヌ・ダルクと、地下世界を統治するウアジェト女王まで来ていた。
「メジェド君も来れば良かったのにねえ?」
エレベーターの前でお座りをしている、スフィンクスと鵺の頭を撫でながら、今日も赤い髪にメイド服姿の由理子が、誰にとも無く言った。
「彼は相変わらず、世界中を放浪しているようですよ。まだまだ彼は、人類の事をイロイロと知りたいようです。」
バーテンダー姿の伯爵が代表して、ソレに答えた。
彼の座る席の同じテーブルには、村田京子、真田雪子、ウアジェト女王が、揃って座って居た。因みに、今日も京子は黄色いワンピース、雪子は冬物の長袖セーラー服、女王は爬虫類族の女性の姿だった。
「まあ、とにかく、"ノストラダムスの大予言"の災厄が、回避されて何よりでしたね?」伯爵が皆に向かって言った。「皆さん、お疲れ様でした。改めてお礼を言わせて頂きます。本当に協力してくれてありがとう。」
それに対して皆が口々に「いやいや」とか「当たり前の事をしただけ」とか「そういう運命だったんでしょう」とか同時に返事をした。ただみんなに共通していたのは、誰もが笑顔だった事だ。
「ソレはそうと……。」ザワザワした皆の呟きが収まる頃に、鷹志が言った。
「伯爵は一体いつから、ボクの正体を知っていたのですか?ボク自身も知らなかったのに……。」
「ああ、それでしたら、以前にも申し上げた通り、キミに初めて会った日からですよ。」(第13巻 参照)
「それって、どういう……?」
「あの日キミは、何故かボンヤリした様子で、もう赤信号になっていたのに、横断歩道を渡っていました。」
「……確かに、そうだったような。」
「その交差点へ、私のシルバーのビートルが、右折で侵入したのです。私は咄嗟に車体前部の電磁防壁を出しました。無論、キミの身体を傷つけないようにするためです。」
「はい。その節は、ありがとうございました。」
「ところが、恐らく本能的に危険を感じたキミは、その瞬間に、大きなコガネムシ……つまりスカラベに変身してしまった。同時にキミが、周りに張った生体防壁と、私のビートルの電磁防壁が、ぶつかり合ったのです。」
「えっ、そんな事が!?」




