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「セーラー服と雪女と大予言」(セーラー服と雪女 第30巻 第一部完結編)  作者: サナダムシオ


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㉖ 真打ち登場

「えっ!?」鷹志は我が耳を疑った。

 しかし、この期に及んで、あのサン・ジェルマン伯爵が、冗談を言うはずも無かった。


 しかも伯爵は、他の二人から剣を預かると、合計6本になった剣を、全て鷹志のビートルの助手席の窓から、彼に届けに来たのだ。


「鷹志君。あとの事は、キミに託しますよ。」

「えっ、ちょっ、伯爵!?」

 鷹志はもう、パニックだった。

 自分はごく普通のニンゲンだ。

 腕は2本。剣は6本。これで一体、どうしろと言うのだ?


「今、キミに必要なのは、自分が何者なのかを、思い出す事だけなのです。」

「そんな事……急に言われても……自分にガネーシャの父親の属性が有るって事は、ついこの間知ったけど……?」


「もっともっと、以前の事ですよ。私のクルマとぶつかって、交通事故になった日の事をよく思い出すのです。あんな真昼間から、公衆の面前であんな事になるなんて……周りの人々の記憶の消すの、大変だったんですよ?」

 伯爵は、言いたい事だけを彼に伝えると、離れて行ってしまった。


「伯爵のクルマと、ぶつかった時の事……?あの時ボクは、考え事をしていたのか、何だか意識がボンヤリしていて……それで……どうしてたんだっけ?」

 鷹志は、すっかり途方に暮れてしまった。


『何をそこで、ゴチャゴチャやっているのだ?貴様が、最後の戦士だと言うのなら、今すぐ、決着を着けてやるぞ?これ以上、決着を先延ばしにしても、無意味な事だからな。』

 ベルゼブブはそう言うと、鷹志の緑色のワーゲンビートルの前に、立ちはだかった。そして、6本の脚でクルマを掴むと、直ちにそれを、潰し始めたのだ。


「わああっ、やめろ!やめてくれえええっ!」

 鷹志は、恐怖でパニックになり、泣き叫ぶ。

 何だコレは?悪い夢なのか?伯爵は一体、何を考えているんだ?


 どうして雪子さんも、それにジャンヌさんまで……助けに来ないんだ?

 ボクが、こんなバケモノに、たった一人で、敵う訳が無いじゃないか!

 彼の精神は限界を超えて、すっかり追い込まれてしまった。

 すると次の瞬間、とんでもない事が起こった。


 鷹志は、自分の額の中央に眼が開き、次いで自分のカラダが、光の粒子になるのを感じた。そして、今自分が乗っている、緑色のフォルクス・ワーゲン・ビートルと、融合するような感覚を覚えたのだ。


 ふと気がつくと、彼は、自分が本当にビートルと一体化したのを感じた。

 彼はおもむろに、空中に立ち上がった。

 すると、ビートルの腹側から、4つのタイヤが姿を消し、その代わりに、6本の鋭いカギ爪のついた脚が、ニョキニョキと生えて来たのだ。


 そして彼は、その6本の脚に、それぞれ6本のオリハルコンの剣を握った。

 先程まで、かつてポルシェ博士が考案した、その傑作カーボディだったモノは、いつの間にか、すっかりリアルで巨大な、ターコイズブルーの甲虫の姿に、変化していたのだった。


 今や彼は、言いようのない、多幸感と万能感を感じていた。

 そして、どこか懐かしいような充実感。

 そうだ。これこそが、本来の自分の有るべき姿だ。

 今や彼は、そう確信していた。

 そして、とても大事な記憶を、とうとう思い出したのだ!

(そうだ、ボクの本当の名は……!)



挿絵(By みてみん)

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