㉒ 作戦の伝授
「あのう……すいません。」
そこで巫女の藤原貞子が、おずおずと手を挙げて発言した。
「どうされました?貞子さん。」
伯爵がジェントルに尋ねる。
「実は私、祖母からちょっとした伝言を、預かって来ているんです。」
と貞子が、皆に向かって遠慮がちに言う。
「ほう……それは興味深いですな。是非とも教えていただけますか?」
伯爵が後を促す。
「……はい。この伝言は必ず、皆さんの目の前から雪村さんが居なくなってから、サン・ジェルマン伯爵に伝えなさい、と言われました。」
「ほほう?それはまた妙なタイミングを狙いましたねえ。」
「あの蠅のバケモノを退治するための作戦です。」
「ソレは聞かなくてはですねえ。では皆さんご一緒に、こちらへ集まって来て下さいますか?」
伯爵が残ったメンバーを部屋の中央に集めた。
「あの、昔から、"壁に耳あり、障子に目あり"という諺も有りますので、ここは小さな声でお伝えしますね?」
彼女はそう言うと、その場のメンバーに出来るだけ小声で、何やらゴニョゴニョと囁いていた。やがてみんな、"うんうん、是非そうしよう"という話になったのである。
作戦はすぐに決行された。
準備を整えたメンバーは、全員が銀色、緑色、赤色、黄色、黒色の5台のワーゲンビートルに分乗し、早速、地下駐車場を出発して、日本列島の上空を目指して、ただひたすらに上へ飛んで行ったのである。
ベルゼブブとその仲間たちは、既に大気圏に突入していた。異常に丈夫な外骨格のおかげで、少し赤くなっただけで、後は平気なようだった。全く、やっかいなバケモノたちである。
「やあやあ、みなさんお揃いで、ようこそおいで下さった。再度訪問する手間が省けて助かったよ。それで……良い返事が聞けるのかな?」
巨大な蠅が、毛むくじゃらのカラダを揺すりながら、そう言った。
「我々としては、全力で抵抗する事にしましたよ。」
サン・ジェルマン伯爵はそう言った。
「そうかね。ソレは残念だな……まあいい。こちらも全力でお相手しよう。」
「では、行きますよ!」伯爵のその一言が合図だった。
5台のワーゲンビートルは、素早くフォーメーションを作った。
黒いビートルを中心にして、その直上に銀色、真下に緑色、右側に赤色、左側に黄色のビートルが……つまり5台のビートルで十字の形になるように、それぞれが陣取った。




