⑳ 次の一手
暫くして目を覚ました成雪は、まだ回復していないカグヤに代わって、皆に彼女の父の死と、ベルゼブブのフィジカル面の強靭さについて語った。
「……そうですか。カグヤさんには、気の毒な事をしましたね。しかし、彼女の全力の雷撃を受けても、ベルゼブブはノーダメージでしたか……それは、中々のツワモノですね。」
伯爵が、そんな感想を述べた。
「……まあ、攻略法が無い訳ではないんですけどね?」
成雪がボソッと呟いた。
「えっ、今何か言いました?」
耳ざとく鷹志が詰め寄る。
「ああ、大した事ではないんですよ。腹側の各関節部に、ピンポイントで同時攻撃を加えるんです。まあもちろん、そんな隙は中々見せませんけどね?」
まるでそれが何でもない事のように、成雪が言った。
「成る程ね……アレ?この話って、前にもキミとしたっけ?」
「……さあ、どうでしょう?」
成雪は何故か、はぐらかすような言い方をした。
鷹志は、何か思い出せそうで思い出せない、ヘンな気分になった。
そこで雪村がスッと立ち上がると、隣に居た弓子に言った。
「ごめん、僕、ちょっと行って来るよ。」
「えっ?」弓子の返事を待たずに、彼はその場から姿を消した。
次の瞬間にはもう、雪村は宇宙空間に漂う、ベルゼブブとその部下たちの目の前に移動していた。
『何だ、またニンゲンか?最近は、ただのニンゲンが、宇宙空間に生身の姿で出ても、平気なんだな?3万年もたつと、随分驚かされる事が増えるものだ。』
それほど驚いた様子でもなさそうに、ベルゼブブが言った。
「そうか。貴様には、僕も普通のニンゲンにしか、見えてないんだな?」
雪村は、少し落胆したようにそう言った。
「じゃあそのまま、もう一度封印してやるよ。」
彼はそう言うと、おもむろに両腕を広げ、柏手を一つ打った。
すると、ベルゼブブとその部下を取り囲む空間が、収縮を始めた。
『このチカラには……覚えが有るぞ。そうかオマエは……古代エジプトの太陽神だった、アモン・ラーだな?』
「今ごろ気づいても、もう遅い!」
『……どうかな?吾輩も3万年前とは違うぞ。』
ベルゼブブは余裕の笑みを見せ、そしてあっけ無く、空間の収縮を止めて見せた。
『相変わらず、こんなバカの一つ覚えのような、チカラの使い方をしおって……実力の10分の1程しか、使いこなせないとは、オマエも不憫なヤツだな……よし、正当防衛として、同じモノを喰らわせてやろう!』
そう言うとベルゼブブは、6本の脚で、同時に柏手を打って見せた。
すると次の瞬間、雪村は、周りの空間ごと消えてしまったのだ!




