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「セーラー服と雪女と大予言」(セーラー服と雪女 第30巻 第一部完結編)  作者: サナダムシオ


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⑲ 二人で撤退

 そこで初めて、後方に控えていた成雪……の姿のセト神が、動きを見せた。

 何と彼は、その場で両腕を高く上げたのだ。


『何だ、ニンゲン?それは降参の意思表示なのかな?』

 訝しげに尋ねる、ベルゼブブ。

「うん、或る意味、その通りかな。」

 ニコニコ笑いながらも、成雪は否定しなかった。


 すると見る見るうちに、原子レベルまで粉々にされてたカグヤだった粒子が、彼の目の前に集まり出し、やがてすっかり、カグヤの原型を取り戻してしまったのだ!


 ただ彼女はぐったりとして、意識は戻らないようだった。そのカグヤの裸身を、すかさず成雪が小脇に抱えた。


『貴様、ニンゲンのクセに、面白い手品を使うのだな?』

 ベルゼブブは、感心したようだった。


「ボクが、ただのニンゲンにしか見えないのだとしたら、キミの目も、随分と曇ってしまったんだねえ?どうやら、火星での長い封印生活のせいで、色々と不具合が出ているようだ。」


 ニヤリと笑う成雪。そして……「あ~あ。今ここに、スカラベ君が居ないのが、とても残念だよ。」と言ったのだ。


『何!?』 

 初めてベルゼブブの顔に、焦りの色が浮かんだ……ような気がした。


「何しろ彼は、キミの唯一の、天敵なのだからねえ。あの頃は楽しかったよねえ。やれやれ……こんな大変な時に、一体全体、彼はどこに居るのやら?いや、案外近くに居たりしてね?」


『貴様……何者だ?』

「やだなあ……セト神だよ。忘れちゃったのかい?例え姿が違っても、気配で分かりそうなものだけどねえ?そんな事も分からないとは、実に残念だよ。」


『何……だと?』

「まあ、とにかく、僕も慣れないチカラの使い方をして疲れたし、彼女もこの通りグロッキーだから、今日のところは潔く、撤退させてもらうよ?」


 成雪はそう言うと、来た時と同様に、一瞬で姿を消してしまった。それは鮮やかな去り際だった。

『……セト神だと?』


 後には、辺りに漂う宇宙船の残骸の中に、ただ途方に暮れたように見えるベルゼブブと、その部下たちが残されるのみだった。


 亜空間レストランに戻って来た成雪は、カグヤを抱いたまま、もう一歩も動けなかった。

「すいません、僕はもう……すっかり疲れてしまって。伯爵、カグヤの事をお願い……します。」

 彼はやっとの事でそれだけ言うと、床に倒れこんで、気を失ってしまった。


 暫くたって回復した彼は、皆に、ベルゼブブのフィジカル的な強さについて語った。

「カグヤさんの、全力の雷撃を受けても、ノーダメージでしたか……それは、中々のツワモノですね。」

 伯爵が、そんな感想を呟いた。

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