⑱ アヌンナキ以上
『やれやれ。貴様も異教とは言え、神の端くれのクセに、問答無用で破壊行為とは……随分と野蛮な真似をするのだな?』
完膚無きまでに破壊したはずの、円盤の残骸の中から、尚もテレパシーを送って来る者が居た。
ベルゼブブはそこに、無傷で存在していた。
部下の虫たちも同様だった。
『……そもそも我々には、宇宙船など必要無いのだよ。この頑丈な外骨格さえあれば、宇宙遊泳など楽なモノなのだ。』
「なんですって?」
『ただ火星からここまで、長距離を移動するのに、少しでもラクをしようと、船を使っていたのだよ……まあ、無精者と呼びたければ、そうしたまえ。ハハハ。』
「くっ、この虫けらめ!よくも私のお父様を!」
『キミの父親?ああ、さっきの小さな船の中に居たのか。まあ、自業自得だろう?コチラとしては、撃たれたモノを、そのまま撃った者に対して、お返しさせて頂いたまでだ。月面にキズを付けるのも、無粋だしな。言わば正当防衛だよ?それに対して腹を立てるのは、いささか理不尽というものだよ。』
「……理不尽で結構よ!」
そう言うとカグヤは、雷撃のエネルギーを剣の形にして、両手で握り、文字通り光の速さで、ベルゼブブとの距離を一気に縮めた。そしてそのまま、敵のカラダに袈裟懸けに斬りかかった……のだが?
『……ぬるい攻撃だな。オマエは本当に、あのアヌンナキの一柱なのか?』
痛くも痒くも無いという涼しい顔で……いや実際には、細かい表情は読み取れはしないのだが……ベルゼブブはそう言った。
そして部下の者たちは、一歩も動く気配を見せなかった。それ程、この"蠅の王"の強さは、絶対的という事なのだろう。
そして彼は、『こんなモノか……期待はずれだったな。実につまらん。さてオマエにも、正当防衛をさせてもらおうかな。』と言いながら、おもむろにその6本の脚のかぎ爪を、カグヤのカラダの左右から、同時にグサリと突き刺したのだ!
「ぐふっ!」カグヤは口から血を吐いた
『脊椎動物とは、実に脆弱な生き物だな。哀れな事だ。次に生まれ変わる時には、外骨格を纏う事をお勧めするよ。』
「く……そっ!」彼女の両腕が、力なくダラリと、下に降ろされる。
『吾輩も鬼では無い……今すぐ、ラクにしてやるからな?』
ベルゼブブはそう言うと、6本の脚の先から、同時に超音波振動を起こし、カグヤのカラダを、原子レベルにまで、バラバラにしてしまったのである。




