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第6話 隣の厳ついお兄さんと奥様

とある教団の幹部候補。


我が家が“身をひそめるよう”に暮らしていた2軒長屋。

そんなあばら家のような家賃の安い家に、彼はある日いきなり引っ越してきた。


あの当時。

昭和50年代後半。


いわゆるヤンキー漫画全盛期。

そしてまるで世相のようにそういう格好の若者、溢れかえっておりました。


まさにそれを体現するかのような強烈な個性の男性。


確か“ピエロ”とか、そんな名前の団体だったと思う。

……うろ覚えだけどね。


当時“そういう団体”でかなり“上のお人”だったようで。


ただの中学生(どちらかといえば、世を斜めに見ていましたが…)には刺激の強い人でした。


「ハハハ。数十人に囲まれたこともあったかな…まあ、昔の話だよ?」


そう言い、遠い目をしはにかむ彼。


確かあの時、私よりも6歳ほど大人だった彼は。

真直ぐ私の瞳を見つめてきた。


腕っぷしの強そうな雰囲気。

そして何よりも。

――すさまじい自信。


一瞬で憧れにも似た想いが、私の中に宿っていました。


――だからこそ、彼の推薦というかお誘い。

断れなくて“前話のような悲劇”が訪れたのだけれどね。


ハハハ、ハ。


何はともあれそんな長屋。

私の思春期は過ぎていったのでした。



※※※※※



朝晩と鳴り響く“信仰の声”


家では母親と私の祈り。


そしてまるで呼応するかのように。

薄い壁から地響きのように。


振動とともに伝わるその男性と奥様の祈る声。


まあ。

カオスだね(笑)


そして驚くのは彼らのフレンドリーさ。

きっと彼、奥様に指示というか伝えていたんだろうね。


死んだような目をして牛乳と新聞の配達をこなし、内職に明け暮れる中学生。

もちろん学校にはちゃんと通ってたし、部活だって所属してた。


だけど貧乏だけは変わらない。

私は必死に毎日を生きていたんだ。


たまにすれ違う時。

真っ直ぐ彼を見られなかったことを思い出してしまう。


自信に満ち、弾けるような笑顔を浮かべる彼。

まぶしくて――



※※※※※



そんな私の夏休み。

部活を終え帰宅した私に、隣の奥様が声をかけてきた。


フレンドリーな奥様。

夏休み、一人帰宅した私を誘いソーメンを振舞ってくれた。


「たくさん作っちゃったから」


そう言いはにかむ。


私は当時中学1年生。


何故か薄着。

目のやり場に困ってしまう。


壁の薄い長屋。

思春期突入間もない私は。


敬虔な信者の一面とは違う。

夜な夜な聞こえる『その声』


――どうしようもなく。

沸き上がるよくわからない衝動。


必死に抑えていたんだ。


目に入ってしまう白い肌。

見たことの無い成長した肢体。


届く甘い女性の匂い。


喉が渇く。

視線を合わせる事すらできない。


私は。

――自分の度胸の無さに心から感謝していたものだ。


もちろん何も起こるわけがない。

当たり前だ。


でも。

あの時の興奮…


私の“性癖”はきっとあのことが原因なのだろう。


コホン。


まあそんなこんながあった中学時代だが。

おかしかった私はなぜか“冷めていた”ことを思い出していた。


そう。

まるでリアルではない。



熱が伴う事はなかったんだ。


きっと。

すこし不幸だっただけの普通の少年。


烏滸がましいが。

13歳という時点でいくつもの経験をしていた私。



次は幼少の時の思い出、語るとしよう。



ああ。

因みにだけど。


私が大人になり数十年後。


彼は本当にその教団で、かなりの地位まで上り詰めていましたよ?

やっぱり真直ぐで真剣な人。


そういう人はどこでも頭角を現す。




私はそこまで信じる事、出来なかったけどね(笑)


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