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81、動き出し

四章本編にようやく入る準備ができました。


 鬼人種の王であり魔王に認められし大貴族が収めるオガスと人族の中で広い領土を持っていると言われる5つの大国のうちの一つであるオスタチア王国による第3次鬼魁平野の戦いが終戦してから数日後―――弥叉の時間では商人に繋ぎを着けようと動いていた頃―――宝石が埋め込まれて輝きを放っている椅子に座りながら少々太り気味のオーガが同盟関係の証明書に署名をしていた。

 オーガと対峙している男は証明書を確認し懐へ仕舞うと立ち上がり握手を交わした。

 お互いに笑顔だが心は全く信用していない。しかしそれは相手も同じことだ。

 一時的に利害が一致したから協力しているだけだ。


「これで歴史は変わりますよ」

「両者の祝福すべき日になりそうですね」




 ◇ ◆ ◇




 ノルティア都市は、オガスの西側に接した妖鬼の領土の街である。

 街と言っても歴史が長いだけで領土は小さい。アドリーバスと比べるまでもなく乏しい街である。

 そんなノルティアの領主が住む一室で第三次鬼魁平野の戦いの結果報告を読んでいた女性は憤りと不安を覚えていた。

 また戦い?

 王不在で決行?

 それで結果がこれ?

 これでは相手の方が喜べる結果じゃないか!

 王は一体何を考えているんだ。相手は人間、信用できない。戦いの火種になった滅びたという国は上手くいったようだがそれは異例だったのだ。その国と仲が良かったからと言って友好的だという保証はない。だからもっと早く国境を強化するべきだったのだ。

 それを断ったどころか戦いにすら参加せず被害を増やすとはあの駄王。

 そして被害の中に無視できない名前もあった。

 アジュラ・ヘスラー

 あの戦闘民族の規格外がやられたとは信じられない。

 死亡ではなく重症なので生きてはいるみたいですがあいつとは昔っからよく知っている。Aランクの魔物を散歩がてらに倒して回るような化け物で遊びに行こうと言ってその中に連れられて何度死にかけた事か。

 だからこそそのアジュラを重症にさせるようになった人間は危険だ。

 ただ数の多かった弱者ではなくなってきている。

 この報告書は魔族にとって悪夢の成果だ。

 そして自分は悪夢を越えて不安定な状態だ。


 ノルティアはオガスとオスタチアで線を引くと丁度正三角形の中間位置にある。

 いつ戦火がこちらに回ってくるか分からないという不安。


 人間が利用できる戦力になることを示したことによる。

 身内に裏切り者が出る可能性があるという不安で二つ。


 領内が不安定になり自分の立場が悪くなる。

 自分との約束が破棄されるのではないかという不安で三つ。


 本当にあり得る事だけに頭が痛くなってくる。

 先日もこちらへの侵攻に備えて防御の強化を進言したがオガスが守ってくれるのだから問題ないと家臣からは反対意見のみが返ってきた。

 ノルティアは歴史だけはある所為で頑固というか変化をやたらと嫌う者が多い。政策一つにも今まで上手くいっていた、とか歴史や文化が、とかいちいち反論が出て長引かされる。


(このまま野心を持った者が今の情勢をオスタチアに送られれば間違いなくここは攻め落とされる。悪ければ人間に鬼人種の領土を奪われる結果になる可能性も)


 家臣にも何人かこの事は伝えたが妄想が過ぎると笑われてしまった。

 鬼人族は内乱が今までなかった種族だ。これからも仲間を売るような者がいる訳ない、と。


(それはまだ鬼人種の地位が弱く団結しなければならなかった時なのに)


 女性は誰にも理解されない考えを一人で抱え込みながら今日の書類仕事の残りを片付けていく。





 ◇ ◆ ◇




 オスタチア王グランドール三世は同盟成功の知らせを聞き同時に軍の進撃準備ができ次第出撃するように伝えよと武漢に命令して走らせた。


「魚は無事食い付いたと言った所か」

「その様ですな陛下」


 グランドール三世はわずかに口元を上げてそう言うと隣で同じ報告を聞いていた宰相が肯定した。


「オガスの馬鹿王は今の状況下で外に出ていると知った時も思ったが鬼はバカばかりだな」

「所詮魔物という事ですよ」

「そうだな。・・・そなたも直ちに出撃の準備に入れ。部隊を一つオガスの警備に触れさせとけ」


 グランドール三世の顔に変化が無いまま続けて命令を下す。


「それからカビが生える前に掃除はしておけよ」

「よろしいので?」

「いつまでもゴミを部屋に置いておく気はない」


 宰相の問いへの返答は癒有無を言わさぬ強い物で王としての風格がそこにはあった。

 宰相は一礼を入れて謝罪すると準備の為に部屋から出て行った。

 護衛の兵のみになった部屋でグランドール三世は立ち上がる事は無くもう一方の報告書を手に取って少しムッとした表情になった。


(このような時に)


 書かれている内容は秘かに忍ばせていた商人からのもので商いでの潜入が見破られたのか現在撤去もしくは調査がなされていてこれ以上は危険であるため撤退を希望するという物であった。

 捕まってこちらの動きを悟られるわけにもいかないので許可するしかないがこのタイミングで潜入を悟られるとはとイラッとしてしまう。

 ここでオガスの動きを知るすべが減るのは痛手である。

 ここはもう一手打っておくべきであるかもしれないな。


「ノルティアへ使いの者を用意せよ。その後、魔物部隊で初撃を与える」



宰相に恩売った。昇格試験してギルドランクを明確にした。商人との繋ぎつけてアドリーバスの問題解消した。アジュラを出して・・・ようやく本編。

本編も本編で長いのに前段階でかなり時間かかったと思わざる得ないな・・・。


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