66、奪還戦争
魔族領と人族領の境にある”鬼魁平野”。
この平野は200年前に戦争跡地になってから大貴族の十席に新しく加わった鬼人種の妖鬼によって人族からの守護の命を受けて統治されている。
その総面積は18,600,000km²。
サハラ砂漠の約2倍の面積があり所有の3分の1を占め、周囲の山々から水源が流れてきて田や畑、農牧に適している為、多くの村や町が一定間隔の距離を取って存在している。
そんな場所で現在大規模な奪還戦争が開始していた。
戦いに発展したのは1年前。
平野に隣接している国境沿いにある人族領の小国が”何者か”の襲撃によって王族、貴族は皆殺し。住民は都市全体に火の手が渡り逃げ延びたのは2割にも満たない虐殺が起こった。
その小国は魔族との戦争には関心が無く魔族と友好にな関係を築こうとして隣接している妖鬼領土の民を受け入れる姿勢を取り、妖鬼側も新人貴族だったこともあり古い教えに縛られることはなくその手を取って戦争に傷が癒えるまで公にはしないが同盟関係を築くこととなっていた。
その小国が滅んだと聞いて犯人は誰だという事になるのは必然であったが魔族が人族の国の調査に行けるわけもなく国の調査は小国を囲うように存在する大国に任せることとなった。
小国からは信用している同盟国だと聞かされていた国である。
その国なら必ず犯人を特定してくれるだろうと思われた。
しかし大国の調査結果は耳を疑うものとなった。
調査で判明したのは魔族の侵入の形跡に死体となった者達の武器に魔族の皮膚や血痕が付着していた事であった。
この結果に当然真っ先に疑われたのは関係が深かった妖鬼。
調査した大国はこの事に怒りを挙げて妖鬼の領土に軍を進軍させ威嚇しながら審議を問い詰めてきて、妖鬼側は自分達ではないと主張したが後から逃げ延びた住民が発見され、”魔族からの襲撃にあった”と証言されたことにより責任を逃れようとしたのだと逆に大国に宣戦布告を叩きつけられることとなる。
小国滅亡から1ヵ月で国境沿いの砦で第1次鬼魁平野の戦いが勃発した。
この戦いは妖鬼側は宣戦布告から急ぎ砦へと兵を送ったが向かわせる兵の準備に砦までの距離、そして多方面でも小規模の戦いが起こり始めたことによって援軍は間に合わず、すでに進軍していた敵軍二万に砦の兵300で応戦して戦ったが数の暴力により兵は全滅、砦は半壊した。
それから敵軍は平野にある魔族の集落を次々に襲いながら攻めながら妖鬼の長がいるオガスに向かって進んでいった。
これに対し妖鬼側は自分達がやっていない罪によって民が殺されていくのを無視することは出来ず住民をオガスへ避難勧告を出したのち平野の中間地点で敵軍を迎え撃つ姿勢を取った。
これが第2次鬼魁平野の戦いである。
この戦いでは先の戦いの様な兵力差はなく野戦の為策略はなく数日に及ぶ小競り合いになっていた。
戦いは均衡しどちらも相応の戦死者を出したが徐々に地の利のある魔族軍の方が押し始めると敵軍は徹底抗戦をせずにすぐに撤退を開始した。
まだ進軍された集落は取り返せていないが当座は敵軍を追い返すことに成功したので勝利を収めたと言えた。
それから元集落の住民には悪かったが現状維持という流れで第2次の戦場に陣を張り敵が動き出したらこちらも対応するという形を取っていた。それは他の場所で起きた争いに中に領内の馬鹿貴族が簡単な挑発に引っかかり争いを引き起こしたり、こちらの境遇を知らない商人が貴族たちの上げ足を取って街を我が物にしようと企む者の所為で住民にも被害が出ているなど無視できないものが多く、戦って取り返すという単純な対処でいいこちらが後回しにされたのが理由である。
半年経ってようやくそういった争いに収拾がついたので奪還に乗り出せたのであった。
これがのちの第3次鬼魁平野の戦いの開戦までの流れだ。
「第一陣激突!敵、中級魔法の詠唱を確認!」
「1陣左方に障壁展開。その後娘の近衛部隊を投入し殲滅させよ」
半年という時間で兵力は第2次とほぼ同等数揃えられたがそれは敵も同じように軍を待機させていた。
既に激突した先鋒にその後ろから右翼と左翼の軍が構え今回の指揮官にして大将のいる本陣が後詰として控えながら指示を飛ばす。
魔族の部隊は鬼人種が収めた領だけに先鋒はオーガやゴブリンであり、その戦闘の光景は弥叉が見ればゲームでのイベントの再現を見ているように思ったはずである。
激突の現場では体格の大きい事を生かして力押しで切り崩そうとするオーガ相手に人側は常に多対一の数的有利になるように移動しながら戦っている。軍でぶつかったといってもその更に前線で武器をぶつけ合う数は決まっていて常に有利を保っている人側の方がやや押し気味であるように見られた。
そしてその下がり始めたオーガに向けて追い打ちと敵側方からの魔法攻撃が撃ち込まれ左はゴブリンメイジによる魔法障壁、右には一人の甲冑を纏った娘が単身で突っ込み魔法を消し飛ばした。
「キャッハーー!!」
甲高い奇声を上げ魔法を打ち消した勢いそのまま満面の笑みを浮かべたまま味方も連れずただ一人で敵左翼へと進み飲み込まれて・・・否、甲冑を纏った娘が入った場所から人が上空に向かって飛ばされていった。
「種族が貧弱な人間共!俺と対峙した不運をに嘆きながらさっさとその命置いていけや!!」
その娘はオーガではない。その身なりは人と変わらないものだ。しかしその皮膚は人のものと比べて赤みが掛かり額には鬼人種の大半が持つ角が生えていた。
そんなオーガに比べて小さい身体から繰り出される一撃に人が4人も5人もまとめて飛ばされていった。
「キャーハッハッ――!!俺の槍でてめえらみんな地獄に送ってやんよ!!」
その姿に対峙した人々はオーガ以上の畏怖を持って混乱が軍へと浸透していく。
多くの人によって作られていく屍の山から逃げようと後ろへと逃げる者も表れ出していく。
これでもう右翼は大勢は決したと判断した所で視界は白の閃光で埋め尽くされた。




