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65、受けた者しか分からぬ重み

 俺の名前は一応あるのだがなぜ名前で呼ばれることが少ない。

 部下の兵には副隊長又は隊長で通っており、参謀のフローウにも副隊長、オリバーさんに至ってはいつまで経っても若造呼ばわりである。

 そして最近になってシャル様も副隊長呼びに変わってしまって名前呼ばれることは日に一度あればいいほどであった。

 だがこれまでその事を気にしたことはなかった。

 むしろ地位も実力もそこそこ自信があったから存在感がある方だとすら思っていたのだ。

 しかしこの旅に入ってある事実に気づいてしまったのだ。


(俺この3人にそもそも名乗りを挙げてない)


 弥叉に最初会った時は人柄が分からない者な上に間者かと疑いもあったので名乗っていないし再開はオリバーさんの重症でその後はすぐ戦いで軍備に追われていた。

 戦い後はもう他の人と同様に副隊長呼びで定着していたので名乗ったと思ってしまっていて気が付かなかった。


 今までそれでやってこれたんだから問題と思えばいいのだが、一度気づいてしまうとやたらと気になってしまう。

 名乗った方がいいのか、しかし今更名乗るのも・・・といった感じで悶々としていながらも結局何もせずにそのままでいたら名前知らなくても普通に会話できてしまうのがどうにも虚しく俺の名前の存在意義について考え込んでしまった。






 と、旅には全く関係ないどうでもいいような悩みに陥っているうちにいつの間にか5日も経過してしまっていた。

 その間弥叉とゼルフは修行していたようなのだがその方法は説明内容のうち半分以上理解する事ができず始まっても通常の素振りや技の習得の様なものではなく旅に何の支障もないただ付いて来ているだけに見える。

 グラムさんも同じ意見で何の修行か分からないが取りあえず旅に支障がないならと修行を許可した。

 更に道中に現れた魔物も弥叉とゼルフが片付けてくれるため旅は順調(これは修行ではないそうだ)。

 というか正直暇なほどだ。

 弥叉達の戦いを見ていると自分がアドリーバスの警備隊長を任されているのに自分の強さに疑問を持ってしまうのを正面から受け止められなかったのでどうでもいい思考に陥っていたのだがそれを言う必要はないだろう。

 そんな訳で弥叉達は何の修行か分からない修行をしていたのだが日に日にやつれていって遂にこの日突然二人して歩いている途中でぶっ倒れた。

 俺とグラムさんは当然驚いていたが隣にいたマリアは「もう限界ですか」、と弥叉達が倒れたのに涼しい顔で、いやこれは昔オリバーさんに新兵強化合宿と称した新兵殺しの訓練で倒れ伏した俺達に向けられた顔にそっくりで俺はこの顔を向けられた後、半日気を失い、1日筋肉痛でベッドから起き上がれなくなったこと思い出し震えあがった。

 それから一時休憩でグラムさんに診察してもらったところ弥叉達は極度の疲労による過労なだけだという。

 確かに旅は5日目で魔物との戦闘はすべて任せていたがこんなに疲労する事は普通あり得ないというのがグラムさんの見解であり俺も同意見であった。

 そこで矛先が向いたのは修行の発案者であるマリア。


「一体何をしたんだ?」

「始める時に説明したじゃない」

「確かに聞いたがここまで疲労するものなのか?」

「なら試してみる?」


 その問いに頷いたことで俺は弥叉達の体験した地獄を体験し、1日で後悔することになるがそれを知るのは休憩が終わり弥叉達が目を覚ました後の事である。




 ◇ ◆ ◇




 儂はグラム。自分で言うのはなんじゃがそれなりに名の通った治癒師じゃ。

 儂は最近戦争が起こるという情報を受け魔族ギルドに冒険者の護衛を頼んで向かっていたのじゃがその護衛を頼んだ冒険者が口先ばかりの無能者で賭博都市で前金を使って遊び惚けていたまでは、駄目だが我慢できた。しかしその後冒険者の一人が賭博場で問題を起こし付き添いでいた自分も含めて捕まり大きく出発日時が遅れてしまったのじゃ。

 ここで解雇しとけば良かったのだが再度募集する手間を惜しんでそのままの護衛で向かってしまい、食糧不足、遭難、魔物の群れから逃げるなど今までで一番の問題満載で時間を割いてしまい予定はかなりの余裕があったはずなのに手前の街に付いた時にはもう戦争が開始してしまっている時期でこのままでは間に合わなくなってしまう状態じゃった。

 そんな折に着いたのがアドリーバス。

 産業で発展し大貴族が収める大都市と遜色ない豊かな街だと聞いていたが街は内乱で混乱が起こり街を出ようにも通行には元領主の残党が一掃されるまで掛かると言われて通行ができなかった。

 ここで時間を割けば完全に間に合わない。

 儂は焦った。

 そして儂を護衛していた冒険者もそのことが理解する頭はあったようでギルドに掛け合うと言ってギルドに向かって行き儂も頼るものが無いので気が進まんが頼ることにした。

 それからは知っての通り護衛は解雇、新しい護衛が付けられたがこの護衛の冒険者が違う意味で変な奴らでランクはFの初心者、聞けば冒険者になったばかりだというがギルドマスターの申し出を断ったと思えば受付嬢の言葉で引き受けたり領主と面識があるとは聞いたが客人扱いを受けている。

 だがこの時は門を通過できれば何でもいいと思っていて敢えて気にしなかった。

 しかし今は後悔しておる。

 それがまさか旅の護衛の勝手な疲労をしてその回復に自分が使われるなんて思ってもみなかったのだから仕方がないじゃろう。

 ついでにもう一人の領主が付けた兵士も同じく疲労で倒れおったから無駄に魔力を使わされた。

 こんなことしている場合ではないので依頼主として文句を言ったら唯一元気な最も若い少女に論破されてしもうた。

 更に食事や寝具の準備もさせられたりと今まで任せていたことも儂の方に回ってくるようになった。

 これでも儂、治癒師の実力者じゃから近年は儂に仕事をさせようとする冒険者はいなかったので正直耳を疑ったわ。

 儂偉いのに、と叫んで愚痴を溢したくなる。

 旅はあと6日。こんな調子で旅を続けられるのか。

 憂鬱じゃのう。







 

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