67、宮殿
4章は3章と比べてもかなり長いものになる予定です。
その分、今までやってこれなかったことを入れていく章でもあります
都市オガス街
魔族領大貴族の納める領土の首都の一つ。
戦後に新たに造られた街は広大な面積があり、造られた当初から役割ごとに建築物の配置を割り当てられ住みやすく、大貴族の庇護下の元生活する事から安全性も高い為総人口が1000万人を超える文句なしの大都市である。
そして都市の外には鬼魁平野という戦後の戦場跡地が広がっており、そこがいい修練場となっているおかげでオガスの兵士は強兵として有名といわれている。
これが俺が知っているオガスについてである。
◇ ◆ ◇
都市の城壁が見えてやっと到着したという気の緩みから三人が無様に転げ落ちた。
「何やっているの、さっさと行くわよ」
マリアがその三人を追い抜き(俺の背中を踏まれ)進んでいく。
それを呆れ顔でグラムさんが横目で見ながらついていき俺達は立ち上がって置いて行かれないように速足で追いつく。
旅でもうお馴染みになった光景である。
5日目に倒れてグラムさんの回復と重力のない休憩で翌日に完全回復した後マリアは俺達の限界値を見極めたおかげで耐えられるギリギリの負荷を掛けられるようになり倒せることはなくなったが妥協も許されなくなった。
魔物の戦闘で解放されたのも倒れてからは全部マリアが対処する様になったため無くなり文字通り24時間ぶっ続けで重力が掛けられている。
まぁ、俺達よりもっとかわいそうな三人目よりかはマシではあるが・・・。
「・・・・・・・・・」
俺達の同行を任された副隊長は俺達が倒れている間マリアの修行を体験したいと興味本位で始め、少ししたら解放されると思っていたのだろうが一度始めたら終わるまで、つまりオガス到着までは続けることとなり俺達と一緒に修行する羽目になった犠牲者である。
今では・・・元々口数は少ないが、まったくの無口になってしまっていた。
それは俺もゼルフも似たようなものだがたまに「俺は帰ったら部下には優しくしてやろう」とか言って目が死んだ魚の目になる時があり精神が病んだ患者みたいに見えだしていた。
もしかしたら修行が終わってもトラウマになっているかもな。シャルの元に帰って俺らと一緒に居たら精神を病むなんて思われないといいけど。
「ようこそお越しくださいました、グラム様」
こちらに来て定番になっている問題発生率一番の門番による身分検査はグラムさんの顔が利いて隣で列をなして並んでいる横を素通りする事ができた。
・・・・・本当に有名人だったんだ、このおじさん。
門番達が丁重に招き入れるのに「これが普段の儂の待遇じゃ」とこちらに得意げな顔を向けて来るのが偉いとは俺には到底思えないのだが。
「至急城内に案内するよう宰相閣下から言伝を預かっておりますので我々に付いて来て下さい」
「うむ」
「それでそちらの冒険者は解散・・」
「いや少々道中で問題があってこの者達も城内について行かせてもらいたい」
「分かりました、では参りましょう」
それにこの旅で上下関係がはっきりして、
「よくやったわ」
「グラムさん完全にマリアには頭が上がらなくなったからな」
道中何度もごね出すグラムさんをマリアが論破しているうちにマリアの方が立場が上になっていった。
それで妖鬼の謁見に俺達もついて行くのを了承させろというマリアの意見、もとい脅しで俺達も城内にいく様に頼んでいたのである。
そういう意味でさっきの道中の問題という言い回しは間違っていないか。
「今回の戦いで集落の奪還には成功したんですが敵側が味方がいるのも関係なく地中に設置していた魔裂核を発動し前線で戦っていた兵士の死者数が予想より被害が出てしまい場内の治療師も足りず困っていたところなのです」
魔裂核というのは魔力茸を魔道具として作り出そうとしたが魔力を吸収させることは出来ても再度魔法のエネルギーに変換させることは出来ず魔道具その物を爆発させないと使えないという出来損ないまでしかできなかった。それでも威力があるため軍の兵器として使われている。
まぁ、元の世界のダイナマイトの様なものだ。
魔力を吸収させた術者の魔力に反応するので少し離れた場所からタイミングを取る事ができるそうなので危険度は高く、失敗作で出来ていい物ではないと俺からすれば思ってしまうのだがこの世界の魔法使いからするとそれなら自分で中級魔法を放った方が楽なのだそうだ。
魔道具についてはこのぐらいでいいとして今回あった戦で戦死者は700名に重傷者200人の被害が出たそうだ。
この数が多いのかというと今回出陣した兵数は味方7千に対し敵側は2万。
兵数差では少ないがオガスの兵はほとんどが人間三人を相手取れるオーガ兵に高魔族が一騎当千できると考えれば疲労を考慮しても互角以上こちらのが兵力差は高い。
そのうえ更に前の戦いで相手方の兵は急増しただけで錬度が低かったので全体の1割の死者数は十分多かったというのが案内してもらっている兵士の意見だ。
そんな此度の戦いの結果を兵士が話している間に大貴族が住んでいるという大きく聳え立っている宮殿の様なとんでもない建物の前にまで来ていた。
前と言っても門の前で玄関口と思える場所まで更に200m以上離れていて庭が広がっているのでまだ遠いのだが間も前庭で手入れされているのが金持ちの家といった感じが出ており中に入るのに躊躇いを覚える。
「いらっしゃいませ。私ここの執事をしております者です。ご用件はなんでしょうか?」
「治癒師グラム様が来て下さったのでその案内です。宰相閣下の元へ連れて行った方がいいと伺っています」
「そうですか。ではここからは私が案内を承りますので兵士の皆さんは仕事に戻っていただいて構いません」
「了解しました」
案内してくれた兵士は役目を執事の人が引き継いだようで帰っていき執事の人に促されて俺は宮殿内へと緊張しながら足を踏み入れた。
建物内部は美しい造形の数々が並べられて・・・ではなく観覧用とは思えない武器や防具が壁に無造作に放置され、見渡せる壁や床、天井には真新しい、明らかに置いてある武器によってつけられた跡が至る所に見られ、その風景は外とは違いどこかの修練場の中にでも入ったのかと思わせられた。
そんな通路を普通の事の様に執事の人は歩いていきグラムさんとマリアも平然と後に続いていくのでこの世界で普通の事なのかと思ったが副隊長は叫びを上げた。
「この惨状は一体何ですか!まるで襲撃でもあったかのような」
「まさにその通りですが」
「へ?」
「私達の主人が住宅街と商店街などから市民は出ないようにとの勧告を出した後オガスを模擬戦会場にして戦わせて不甲斐ない事に守備側が城内にまで入られてしまいこの有り様になったのです。模擬戦後直す予定ではいましたがご主人様がこのままの状態で放置せよと言ってそのままになっております」
もう何度も説明をしているようで執事はもういいですかと再び歩き出す。
あまりのスピーディ-さに副隊長は今度は呆然としてしまっていてグラムさんが一瞥入れていたのでグラムさんも同じことになったから平然としているんだなと合点がいった。むしろ何も知らずに整然とついて行っているマリアが異常なのだろう。
それに街を模擬戦に使う主人というのも相当問題があるように思える。
なんか会うのが嫌になってきたな。




