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54、内乱 後編

 四人のうち前に飛び出したのはゼルフのみ。

 親が見せたのと同じ雷爪を右前脚に纏ってハクに向かって突撃していく。

 狙われたハクの方はゼルフの動きを阻害する様にクナイを投げたがそれぐらいではゼルフは止まらない。簡単に避けるだけだろう、そう思ったがゼルフの眼前でクナイがゼルフを追うように不規則に曲がりその予想外の変化に対して反応が遅れたゼルフは突撃を止めて回避をせざる負えなくなりクナイは頬を霞めていった。

 一方のこちら側はホムラによる火の五矢による先制を同じく雷の五矢で迎え撃ちぶつかり合った瞬間互いに距離を詰めた。

 相手の武器は奇襲を受けた時同様の鉤爪。それを弥叉はアイテムボックスから出したナイフ二刀で捌いていった。


「へぇ、長剣だけじゃなくてナイフも使えるんだ。私に合わせてだね?」

「これでも十分きついがな」


 ホムラの鉤爪は実質二刀流の様なものだ。それに魔物や普通の二刀流と違って武器は甲に装着しているので手は空いている状態なのでクナイや他の武器も握れる。

 これに対応するのは振りが大きくなる長剣では無理だと判断した。

 またホムラだけではなくハクの武器もまた武器を絡めて取れる鎖鎌であるのも理由だ。


 最もそれでも対応しきれずに、


「うおっ」


 鉤爪ばかりに気を取られて空いた横っ腹を蹴り上げられ後ろに飛ばされた。


「それはそうだよだってお兄さんと私では基礎の身体能力で私の方が勝ってるからね。いくら対応しやすくしてもどこかで反応しきれずに喰らうのは当然だよ」


 ホムラの言う通りだ。

 今の俺のレベルは31、対するホムラは58だ。倍近くレベルの離れたホムラと俺の差は1,5倍程の開きがあると思われる。だから動きにはついていけても徐々に相手の速度についていけずに攻撃をもらってしまう。

 これがゼルフの様に10未満しか差が無いのなら十分に覆せる範囲なんだが無い物ねだりをしている様なものだ。


「貴方はもう少しやると思いましたがこの程度なら早く済ませてハクの加勢に行きましょう。どうやらあちらの方が厄介なようみたいだし!」


 ホムラは勝利を確信して弥叉に突っ込んだ。




 少し前、隣で戦っているゼルフとハクの戦いは接近戦を得意とするゼルフを中遠距離で戦いたいハクが近づけさせないようにゼルフの近づこうとするルートを悉く投げクナイで防いでいた。

 そのクナイの量も尋常で傍から見ているシャル達にはマシンガンの様な連射に見えていた。

 そして近距離戦に持ち込めないゼルフはそのクナイの雨を何とかすべて避け続けていたが精神的に疲労して集中力は乱れ始めていた。

 というのも初見で放たれた追尾してくるクナイ。これが非常に厄介なもので軌道を読んで避けたと思った後に曲がって来る為完全に避けきるまですべてのクナイに集中力を向けなければならない状態でそのうえ気を抜けばそのまま攻撃に移られる。クナイによる攻撃を止めさせるのもまた近距離戦にするしかなくそれができないことに精神がすり減る。


 何とか突破口を見つけたいところだった。


 曲がるクナイの正体。その仕組みについてはゼルフはすでに看破している。

 ハクの使っている系統魔法は風。

 そのうちの一つである『通風』。

 弥叉の通電同様風系魔法の初歩の初歩の魔法で詠唱いらずだが殺傷力ゼロ、効果範囲もそれほど低くない魔法で効果は自分の周りの空気の流れを一瞬だけ変えられるというものだ。

 とても弱い魔法で戦いで使われる事なんて無いような魔法。

 しかしハクはその効果をもたらした風の流れにクナイを投じることによって効果を十二分に活用しているのだ。

 しかもいくら使用してもMPが先に切れることもない。技が分かっても正面から攻略するしか方法が思いつかなかった。

 力押しで来る相手ばかりを相手にしてきたゼルフにとっては初めて見る戦い方だった。


 逆にハクの方はクナイが切れた後について考えていた。

 クナイの数は確かに大量に持っているが無限ではない。既に50本は優に投げているのに当たったのは最初の霞めたのだけその後はいいところまで行っても当てきれずにいる。

 その為このまま投げ続けた所であの狼を倒しきることは難しい。

 ただでさえ的が小さく当てづらいのに動きに統一性が見られないから次の動きも読みづらい。おまけにスピ―ドとパワーもあるから中途半端な攻撃では攻撃の網を縫って近づかれる。そうなったら私も無傷では済まなくなる。

 そう判断してから次の策を練ってはいるが確実に勝てそうな方法は思い浮かばない。強いて言うならお兄さんを相手しているお姉ちゃんが無力化してこっちに助太刀してくれるのが望ましいかった。

 しかしそこで一瞬視線をホムラの方に向けたのは失敗だった。




 再び弥叉側

 あの後ホムラと再び激突し今度はこちらから攻撃を仕掛けたがカウンターを喰らって同じ結果になるだけホムラの言う通りこのままでは勝ち目がなかった。


(やっぱり実力差は歴然か・・・)


 二回目のカウンターは鳩尾にクリーンヒットしてかなり痛いしどう考えても今のままでは勝てないし諦めたくなってくる。

 本当に一人のが楽だ。すぐに諦められるし誰かに迷惑懸かんないしこんな大変で面倒なことに関わらないで済む。

 なのに関わりを持つとそいつらの為に頑張らないといけなくなる。

 危険な賭けに身を投じないといけなくなる。

 本当になんでこのタイミングなんだよ。俺の運が悪いの実感するわ。


「そろそろ本気で終わらせる。お兄さん覚悟してね」


 三度目の攻防の為にホムラが近づいてくる。その目は本気だもうさっきの様な蹴りではなく戦闘不能にする為に攻撃してくるだろう。


「行くよ」

(・・・・・・)


 ズドンッ

 三度目の攻防はその音だけしか聞こえなかった。

 その音にシャル達傍観者は息を飲みハクと抗争中のゼルフは思わず足を止めてしまった。

 もしハクが攻撃を続けていたらやられていただろう。だかそのハクはタイミング悪く戦況を確認しようと視線を向けていて攻防を見てしまいゼルフ同様攻撃を止めてしまっていた。

 そして最も驚いたのは対峙していたホムラだった。


「ぐ・・・」


 ホムラは後方に飛ばされやられた腹部を覆う。


「今のは・・・何が」


 パーティールームにいた全員の視線が一点に向けられる。

 そして弥叉は、


「やったか」


 自分の状態にホッと安堵していた。

 周りが見えておらず自分の体を確認する。

 その足元の床は窪みができていた。


「今のは何をしたの?」


 その姿にホムラは弥叉が何かしたんだと判断して質問をする。

 しかしその返事は、


「秘密だ」


 の一言で返された。

 そしてさっきとは逆に今度は弥叉ホムラに仕掛けていった。

 武器も場所も状況も変化は無い筈なのにその攻防は、ホムラが押されていた。

 さっきまで身体能力はこっちのが確実に上だった。なのに今は互角かそれ以上。


(付与魔法?・・・違うそれでもここまでの差は埋められない)


 一体何が起こったのか分からず防戦一方になっていた。




 マリアにはこの世界に来てから助けられてばかりで一緒にいなかった終刻の洞窟では自分だけでは生きていけなくって無力感を感じ。

 マリアに同じ訓練をされているはずなのにゼルフには数日で抜かれるわで今のままではいけないと自主練をこっそりしていた。

 その成果として通電のコントロールが全身に行き渡らせる事が出来るようになりスキル吸収を会得することに成功した。

 この吸収というスキル、これがネックだ。


『吸収』・・・体内に流れる魔力を吸収し自分の力に変える。魔力のの吸収力によってダメージをすべて吸う事もできる。


 そして俺の体は度重なる通電のおかげで雷系の魔法なら吸収力が高かった。

 だから俺は通電と同じ要領で初級の攻撃魔法を体内に放ちうまく吸収すれば自分の力に変えれるのではと考えた。

 考えて言うのは簡単だった。実行してからは地獄である。

 失敗は体内に直接喰らうので防御無視の攻撃を喰らうようなもので失敗するとただの自爆技へと変わる。

 しかも使用後にも問題があるが、まぁ今はいいだろう。

 その結果は、


「ぐぅ!」


 さっきまで勝てなかった相手を押せている。つまり現段階の身体能力を2倍にすることができたという事だ。



 これで戦える。

 ただ、それで勝てるかというと、


「認めるしかない。身体能力は相手に上回られた」


 そうでもなかったりする。






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