53、内乱 中編
俺達反乱軍は領主の屋敷門前に配置された警備兵を一掃。
門をこじ開けて先に入っていった兵はすでに敵兵の無力化と領主捜索の為に場内へと進入していた。
俺はまだ門を通過したばかりで隣には大将であるシャルが緊張した面持ちで倒れている敵兵を見つめていた。
シャルはまだ十代、それも領主の娘だ。戦いに慣れていなくてもおかしくはない。
「大丈夫ですか?」
「えぇ平気よ。山賊としての活動している時にも見ているから。それでもやっぱり慣れないけどね。
ヤシャの方は慣れているの?」
「俺は・・・見たことはあるけど自分ではないな」
「ヤシャも私と同じなのね」
会話をして少しは緊張が解れたみたいで顔色が戻りまっすぐ戦場になっている前線へと視線を移した。
そこへフローウが駆けてきた。
「ヤシャ殿これより私の隊は他の門前の兵を止めに行く。貴方はシャル様を連れて応接間へ向かって下さい。まだ確定ではありませんが領主がいるのが最も高い場所です」
「分かった。シャルの事は任しとけ」
「頼みます」
フローウは侵入した正門以外に配置されている兵が場内に戻らないよう足止めする為にシャルから離れれる事になっている。
本陣の3分の1がフローウの指示に従い集団から離れていく。
フローウが外部の敵兵の足止め、前線の露払いは部屋にいたもう一人の男が隊長を務めてシャルのいる本体でシャルの親父である馬鹿領主を倒すのが今回の作戦の大まかな流れだ。
そしてオリバーさんのポジションに弥叉とゼルフが配備していた。
今のところ善戦しているみたいで一階は制圧が30分足らずで終了していた。
抑々この襲撃を敵が感知していた様子はなかったので場内の敵は通常業務で巡回や待機している兵だけでそんなに多くはない。むしろ屋敷街からくる敵のが多いくらいで、だからこそ元宰相のフローウが迎え撃っているのである。
「シャル、応接間までは?」
「3階のパーティールームの隣の部屋です。応接間は多数ありますがあそこはパーティールームからしか入れず部屋の前に兵を配置しやすいし応接間には緊急用の脱出口があるからあの無能な父なら私が脱出口を知っていたとしてもそこで待機していると思うわ。たぶん屋敷の兵もそこに集結しているはず」
「つまり勝負は3階からか」
しかしその予想は外れる事となる。
屋敷は3階建てで1階から2階に上がる階段は3階にまでは繋がっておらず3階に上がる階段まで2階を移動する必要がある。
その弥叉達が2階に上がって3階の階段へと向かう途中の通路で先発隊と屋敷の警備兵たちが戦っていた。
多人数VS多人数の互いに陣形を考えて連動していく戦い。
ガルロルフの親との冒険者の戦いでは一体の標的に対しての最善を選んで戦っていたのに対しこちらは武器をぶつけている相手より周囲の状況を重視して指揮官の命令に連動している。
個々の差は見られないのに錬度の差というのか素人目から見てもこちらの方が少し押しているように見える。
「シャル様、ヤシャさん」
通路で戦っている為後方で立ち往生になっていた俺達の元に副隊長を任せている人が下がってきた。
「隊長からの伝令です。『ここは大丈夫だが情けない事に時間がかかり先に通すことも難しい。遠周りになるが迂回して階段を目指してくれ』、と」
「分かりました。本隊からの補充は」
「いりません。これからシャル様が向かい先こそ本当の闘い。我々の心配は嬉しく思いますがご自分の為に兵をお使い下さい」
「・・・・・分かりました」
シャルは副隊長の言葉に頷くと後方に下がり迂回ルートで階段を進むと叫び隊を動かした。
俺もその後を追おうとして、
「ヤシャさん」
呼び止められた。
「隊長さんからヤシャさん個人に伝言です。『シャル様をよろしく頼む』と私からもシャル様を守って下さい。お願いします」
フローウと同じ表情で言った後副隊長は弥叉の返事も聞かずに戦線へと戻っていった。
弥叉も無言でシャルを追いかけて走り出した。
シャルの取り巻き達はいなくなりその全員からシャルの事を託された。自分がすることの重圧を感じながらもその思いを果たそうと決意を固めた。
迂回ルートには3階まで敵兵はいなかった。
もっと言うとあの通路にいたので相手の場内にいた兵は最後であった。
その為3階の応接間前のパーティールームには相手は3人しか姿がなかった。
1人は目的対象である領主。
中年のいい年のオヤジだと聞いていたがその姿を見て表情を歪めた。
男は見るからに上等な衣装で領主なのは間違いない。だがその男は頭が中心から禿げが進んでいて河童のようになっていて、体格は悪法でたんまり入ってきた金で私腹を肥やしていたのだろう鏡餅みたいに顔がふっくら太っていてその下は更に脂肪と贅肉の塊という言葉に相応しいような体格。
でっぷり太った50過ぎの河童の鏡餅である。シャルの親だというのが嘘のように醜かった。
「おぉ~。我が娘シャルよ生きていたのか。この騒ぎはなんだ?あろう事か実の父に向ってこの狼藉!・・・だが儂も親だ。今すぐに兵を引いて儂の元へ戻れ。そうすれば許してやらんこともないぞ、シャル」
醜い河童もとい領主は他の二人に隠れながらなんか今更感があることを言っているようだがその動作一つ一つが気持ち悪く隠れ蓑にされている二人も顔を顰めている。
よく過信もこんなやつを領主にしたなと思うよ。
そして領主の返事をする為シャルが隊の前に姿を出した。
「お断りします。私はもうあなたを親とは見る気はありません。ここで敗れたなら皆と死ぬことを選びます。
それに状況を理解しているんですか?既にあなたは私達に追い詰められているのですよ。むしろあなたが抵抗せず諦めて下さい」
そう言っているシャルの目に迷いはない。何を言っても決意を変えることはしないだろう。
だが実の親と言っている領主はそのことに気づいていないのか尚もシャルを説得しようと口を開いている。
本当に親子かよと突っ込みたくなる。
そしてやがて説得が駄目かとようやく諦めたのかぶつくさ言いながら後ろの部屋に逃げて行った。
その後を追おうとした兵が飛び出していきシャルがその行動を止めに入ったがそれに反応したのは前に出た兵に釣られて出た者だけで後は前にいる二人に向かって突っ込んでいく。その数は数十人。
相手は二人だけで人数は圧倒的であったが二人に激突する直前突っ込んだ前半数が何をされるまでもなく床に倒れ伏した。
倒れていない兵は突然倒れた仲間を見て足を止め、再度シャルの「下がれ」という命令に従って二人から距離を取った。
下がる兵に対して二人の反応はない。
二人の視線は俺とゼルフの方を向いていた。
相手も俺達が相手だと思っているってことだ。
今の光景を見て予想していたが二人と戦わないといけないのかと思ってしまう。
逃げる気は毛頭ないが。
「ヤシャ」
「行ってくる」
「うん、気を付けて」
ゼルフは俺の頭から降りて二人で前に出る。
俺達が出てきたことで部屋に入ってから一言も話していなかった二人が初めて声を上げた。
「それじゃあこっちも始めようか」
「今回は邪魔になる物は無いよ」
俺の前にはホムラがゼルフの前にはハクがあの時対峙していた者同士で対峙している。
「なあ?こんな状態でなんだが戦わないって選択肢はないのか?」
「・・・それは無理な提案。私達はあの傀儡を狙う敵を倒せと命令を受けた」
「・・・・・」
ホムラがそう言ってハクも臨戦態勢を取って意思を示す。
戦いを回避することはできないようだった。
俺はアイテムバックから武器を取り出すと合した訳でもなく四つの影は同時に動き出した。
明けまして!
年明け最初の投稿です。
色々と変わりましたが今年も沢山読んでくれると嬉しいです。
感想待ってます。




