↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/104

43、茨の荘

 住宅街に入ったからかギルドに向かった時より店屋を見なくなっていき住宅が増えていった。

 既に日が落ちて明かりは街灯の光だけになった路地を進んでいくと目的の店の看板が見えてきた。

 宿を全貌を見た弥叉の感想は普通の宿っていうイメージしか抱かないどこにでもありそうな宿だった。

 紹介が山賊でギルドの受付嬢が名前を聞いて含みのある返事をされたので怪しい外装の店なのかと不安であったが杞憂だったかもしれない。

 そんなことを考えながら茨の荘の扉を開いて中に入ると、


「帰れ!」


 いきなり中年の筋肉隆々の親父にそう怒鳴られた。

 親父の後ろには弥叉の鍛錬に使っている大剣より大きい鉄製のハンマー置かれ親父自身も何の皮なのか分からないが防具を身に着けていて間違いなく受付ではなく戦士の方が合っていた。

 顔はムスッとして明らかに客を迎える気が見られない。

 今日は受付で落胆するのが多いな。


「聞こえなかったか坊主、さっさと帰れ」


 あまりにも態度が悪すぎて言われた通りすぐに出て行こうと思ったが、マリアが先に一歩宿の中に歩を進めた事でその行動は途中で中断となった。

 取りあえずこの筋肉親父のステータスを確認だけしておく。


   オリバー ドルゴドフ


 性別:男性

 職業:商人

 年齢:53

 種族:鬼人種

 レベル71


 おぉ!?なんだこの親父強すぎるだろ!レベル70以上ってマリアや終刻の洞窟を除けば今までで一番高い数値だ。一商人が到達できるレベルじゃないぞ。本当に宿の受付かよ。

 そんな親父に対してもマリアはなんでもない様子で話しかけていった。


「この宿には紹介してきたんだけど?」

「誰の紹介か知らんが家は一介の旅人を止める気はねぇ!」

「シャルという名に心当たりは?」


 ムッとここで親父のムスッとしていた顔が少し歪んだ。

 シャルの事は知っているようだな、一介の旅人が駄目ってやっぱ山賊専用宿ってことなのかな。


「知っているのね」

「何者だ」

「あなたが言うように一介の旅人よ。ただここへ来る途中後ろの弥叉がその子からこの宿を紹介されたから立ち寄っただけ」


 親父は警戒してかドスのきいた声で聴いたがマリアの相変わらずのマイペースな返答にしばらく黙って睨んだ後諦めたように表情は崩れた。


「証明できるものは?そいつが在ったら信じて泊めてやるよ」

「ヤシャ、紙を」

「あぁ」


 マリアに促されてアイテムボックスからシャルに書いて貰ったこの店の名前が描かれた紙を取り出して親父に渡した。


「・・・・・・確かに、宿代は1日銀貨1枚朝夜の二食付きだ。小さい従魔なら部屋に入れていいが粗相はしっかりそっちで始末しろ」


 紙を見て納得して宿代を提示してきた泊めてくれる事になったらしい。

 金を払い親父から部屋の鍵を受け取って2階の部屋に案内された。その際親父の体の下半身が2足歩行のできる牛の体になっていて驚いた。

 種族が鬼人種だったが種類は牛鬼にあたるそうだ。

 部屋はベッドと机があるだけのゴブリン村の宿を数段ランクアップしたようなものだ。

 テレビや冷蔵庫などがないので何処も部屋はこんな造りなんだろう。

 これでしばらくゆっくりできるとベッドにインして横になってゴロゴロしているとマリアから外に出ると言われて外に出された。

 飯は宿が用意してくれるのに何で今更外に出る必要があるんだと聞いたのだがマリアからは「用があるの」と返されるだけだった。

 何があるっていうんだろう。





 ◇ ◆ ◇




 そうして今いるのは最初に立ち寄った換金した店の近くだった。


「それじゃヤシャはこの辺で少し待っていてすぐに戻ってくるから」


 とマリアは俺とガルロルフを置いて人込みを掻き分けどこかに行ってしまった。

 なんでこんなところにと思わなくもなかったがギルドで置き忘れた件もあったので素直に従っている。


「おに~さん、おに~さん、見ない顔だね。旅人さん?」

「んっ?」

「暇しているんならちょっと遊んでいかない?」


 一人(ガルロルフもいるが)でいると声を掛けられた。

 声の主は高校生の―――勇者達と同じぐらいの年齢の女性であった。


「いや、結構だ」

「そんな冷たいこと言わないで遊んで行ってよ~」


 今度は別の声で最初の声よりおっとりした感じの声に変わった。ただ顔は瓜二つの顔であった。


「なんだったら私達二人で相手するよ」

「安くするからお得だよ~。双子の相手も悪くないからぁ」

「へぇ、双子なんだ」


 そしてこの遊びってやっぱりあれだよな。・・・異世界だからいいんだろうけど、まぁそれはいいか。


「いっぱいサービスするからさぁ」

「従魔ならこっちで預かってられるよ~」

「悪いんだが連れがいるんだ。他を―――」


「ヤシャ―!」


 そう言っている間にマリアがこちらに来ていた。

 疚しいことはしてないがこういう現場を見られると恥ずかしいな。


「お待たせ・・・てっ、そっちの二人は誰?」

「いや、ただ声を掛けられただけで」

「「・・・・・・・・・・・・」」


 弥叉が言い訳している様な口調で説明している間、声を掛けてきた二人はマリアを見て、


「なんだよ女付きかぁ」

「それならそうと早く行ってよ」


 とつまらなそうに去っていった。

 その姿をマリアは姿が消えるまで目で追っていたが見えなくなるとまた弥叉を連れて移動し始めた。

 今度は飲食店に行くと伝えられた。そこで人を待たせているらしい。

 人を待たせているって誰だ?

 知り合いなんていないはずだし、喋ったのは門番は論外、受付嬢は話してないからギルド内の酒場マスターか?かなり仲良く話してたし。・・・・・シャルってこともあるかもだが。


 しかしそんな弥叉予想は見事に外れた。

 正解は、


「改めて初めまして、ケリン スピリアです」


 換金する時マリアの相手をした店員だった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。