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27、スキル進化

 暗くて時間の間隔が分からないが多分3日は経過した。

 何度か危険な目に遭っていたが何とか生きてこられた。

 しかしここに来て重要な問題が生じた。

 食料が底を尽きたのだ。

 元々次の目的地には洞窟に落ちた日の次の日までしか用意されていない。

 それを何とか切り盛りして食べていたがついに無くなってしまった。

 弥叉は目の前に並べた物を見て表情を暗くする。

 これから人生最大の選択と言ってもいい難題に挑まなければならなかった。

 並べた物はこの洞窟内に生えていた鑑定不明の植物ばかり。

 食用か不明、食べれるかも不明、どころか真面な物かも怪しい。

 しかし、食べなければ飢え死にである。

 正体の分かる物が見つけられなかった自分の所為だと言い聞かせ怪しい植物の中で食用には見えない。良く言えば一番安全そうなただの雑草に見える草を取った。

 手に取って数秒そのままの姿勢で固まる。動いてもないのに汗をかき逆の手は微妙に震えている。


「・・・・・・」


 無言で次第に手が口へと近づいていく。

 海外で在りえへん食材を食べる芸能人を今の俺は確実に超えているとどうでもいい事を浮かべて口の中に草を押し込んだ。


 ぱく。もぐもぐ・・・・ゴクッ

 ・・・・・・

 ・・・

 ・


「うぇ・・・不味い」


 草って味だ。それ以外の味はない。

 ただ非常に不味い。何とか食えるって感じだ。


「食料としては保留だ・・・・・」


 ドサッ

 ガクリッ・・・




 ◇ ◆ ◇





 この洞窟は他の魔物の住む洞窟とは異なる部分が多い。

 その中で冒険者ら外部の者が最初に思うのは洞窟内での死体を発見率の少なさ。

 別に死体が出ないというわけでは決してない。

 毎日どこ彼処で戦いに敗れた死体が生まれる。

 だからといってその死体を勝者が全て食べると言う事は珍しく、残り滓やそのままの死体はその場に放置することのが多い。

 ではなぜ少ないのか?答えは洞窟の環境にある。

 洞窟の中にいる魔物は群れる事が少ない。

 弥叉が遭遇したロングスネークは本来子分のような存在であるショートスネークを引き連れて行動をしている。

 それがこの洞窟内では行われていない。

 理由は至って簡単だ。

 この洞窟で群れでいるのは単独でいるよりも危険だからである。

 群れるという行為は強者を弱者が勝つ為のもっとも簡単な戦略である。

 しかしその行為を黙って見ている強者もまたいない。

 洞窟内での群れは強者から獲物から敵へと変わり見つかり次第皆殺しにされる。

 群れれば十割皆殺しになるのに群れようなんて魔物はいない。

 ではそれでもなお群れる魔物とは何か。

 それは・・・


「グルルル」


 岩の影から身を隠すように移動していた魔物が周りの安全を確かめ姿を現す。

 一体や二体ではなく二桁はいるその魔物は二足歩行で毛に覆われているが猿ではなくその顔はペンギンに近く、かと言って胴体は筋肉の付いた人間のような体格に長い尻尾を生やした様な歪な容姿であった。

 クナズエナ。それがこの魔物の名で、スピードと統率力で敵を翻弄し体力を奪って仕留めることを得意とした魔物であるがこの洞窟内では弱者の中でも低い力しか持ち合わせていない。

 群れるからこそ手強いにも拘らずここでは群れるとすぐに強者に狙われるクナズエナは生態を変えることとなり、まるでハイエナのような戦い終わった死体を漁って生活し繁殖率が通常の倍増えるようになった。

 そんなクナズエナは次の身を隠す場所の近くに血の匂いのしない無防備に横たわった見知らぬ生物を発見しその足を止めた。

 集団の足が全て止まり先頭のクナズエナが何かの罠かとゆっくりと近づいて行く。

 何事もなく近づくことができ腕が届く位置に立っても横たわったまま動かない生物からは無防備にあった寝息が聞こえてくる。

 クナズエナの細長い口から涎が垂れた。

 久しぶり、又は初めての生きたままの餌が目の前にあると喜びとも取れる声で仲間達に来るように声を出した。仲間達も歓喜の声で鳴いて囲むように近づいていく。

 後は食べるだけの状態になり代表して先頭の確認を行ったクナズエナが腕を振りかぶり息の根を止め、


 ガリュッ


 変な音が鳴った。

 クナズエナは確かに腕を振り下ろしたのに何もなっていない目の前の生物に疑問を持ち首を傾げるなか周りのクナズエナは何が起きた正体に震えていた。

 僅かに視覚に捉えた影の先を見たクナズエナは次の瞬間その生涯を終える。

 ここでようやく自分の腕が無くなっていることに気付いたクナズエナが悲鳴を上げた。その間僅か0,5秒、悲鳴を上げ終わったクナズエナの見た光景は先ほどまでいた仲間の無惨な姿。

 それを最後に視界が暗くなった。


 ――――――・・・がう。


 影は魔物全てを殺し尽くすと一声鳴いてその場から去って行った。





 ◇ ◆ ◇





 謎の草を食って数時間どころか一日以上たったかもしれない。

 俺は何度も死にかけて・・・嫌現在進行形で死にかけている。

 俺の前にはこれを食べようと決意する前と同様に植物が並んでいる。

 よく解らない文字化けになり鑑定できなかったこの植物を再度鑑定を行った。


『即眠草』・・・食べるとすぐに深い眠りについてしまう。普通の雑草と見た目も味も変わらないのでそもそも食おうと思わないだろうが注意が必要な植物。

『麻薬つくし』・・・ランダムで弱いのから強いのまで3種類の麻薬の効果を与える。表面を削ると青い中身が見えるのが特徴。

『ドクドクしい根』・・・一口であの世に行ける暗殺者の最強アイテム。見つけるのが困難だから食べちゃった人はアンラッキー。

『痺れ茸』・・・麻痺草よりもたちの悪い遅延性の麻痺。右手から左手、右足、左足と順番に麻痺していく。麻痺時間も麻痺草の3倍。

『ゴルゴウン草』・・・石化効果を持つ。草が蛇の絡まったような歪な形で見た目からヤバそうなので判別は簡単。猿でも見分けられるよ。


 その効果に・・・プラスアルファ馬鹿にしたような説明文に怒りと共に全力で投げ捨てた。

 どんなラインナップ食ってんだ俺はー!、と叫びたい気持ちを抑え、しかし行き場のない気持ちが隠れている岩を殴るという行動で表れる。

 危険過ぎた。

 脳が狂って自分のした行動に赤面になったり、長時間代わる代わる痺れが走ってのたうち回ったり、足元から石化していく姿に恐怖した。

 特に即眠草とドクドクしい根はやばかった。

 ドクドクしい根はあと一歩遅かったらあの世行きであった。

 即眠草はそのものには命の危機はないが起きた時大量の魔物の死体の中で眠っているという現実逃避したくなるような状態であった。今でもなんであんな事になっていたのか分からないが一番近いのは俺を餌としての取り合いをして共倒れではと思う。でなきゃ俺生きているわけないし・・・

 はっきり言ってもう二度と正体不明な物なんて食うかという気持ちだ。

 弥叉はそんな捨てていった物とは別に残った物を手に取った。


『付与草』・・・特殊な条件があるスキル以外ならスキルレベルを2上げる効果を持つ。その代わりに通常より効果が低くなる。

『魔力茸』・・・最上位魔法5回分の使用できるだけの魔力が溜まっている茸。食用ではなく魔力を流して使用する食べるとMPが回復するがMPより魔力のが多いと体内で暴発する恐れあり。

『特回復草』・・・加工無しで食べればHPが回復する。特効薬やポーションの材料として浸透している。


 付与草は食べていないので効果は分からないがーーーのアメと似たようなもんだと解釈すると凄いものだと思う。

 特回復草はそのままのHP回復、意外と皮が柔らかい。

 効果を見て凄いと捨てていないが魔力茸は死にかけた。食べたら体内が急に熱くなっていき萌えるかと思うほどの熱量を味わい。上5つ同様のやばいシリーズだと思っていた。

 もし我慢して耐えていたら爆発だと思うとヤバい物に入れてもしょうがないと思う。

 そんな何度も死にかけた俺の命を救ってくれたのは最後に残した真っ赤な花だ。


『生命花』・・・一口で食べた者の状態回復に細胞再生回数を上昇させる。花を丸々食べればHPを全回復効果も持つ。


 石化によって足から石になっていく中、何とか生き残ろうとして目の前にあった物を取り敢えず口に入れて食しそのうちの一つに生命草があったのだ。

 最初は何が起こったのか分からなかった。急に石化したが融け出したと思ったらやたらと身体が良く動いた。口に入れたのは特回復草と生命花という無意識の時に選んだものが安全なものだというミラクルには驚いたが今は関係ないのでスルーする。

 それで最後にもう一つ報告がある。

 その出来事はドクドクしい根を食べた後、もう少し生命花を食べるのが遅かったらあの世行き。

 ・・・って今日一日で何度死にかけるんだよ、と自分に突っ込みを入れていると、


《鑑定の熟練度が一定量に達し、条件を満たしました。進化を行いますか?》


 声のようなものが頭の中に声が響き渡った。

 誰か自分以外にいるのかと周りを見回すが誰もいない。


《進化を実行しますか?Yes/No》


 再び頭の中に声が響く。

 どうやら脳内に直接送られているらしい。今までのスキルのレベルアップでは何もなかったのにいきなりである。

 なんか聞いたことのある声のような気がするが取り敢えず進化するならしといた方が良いだろと安易な判断でYesを選んだ。


《承諾しました。これより鑑定を進化します・・・・・・成功しました。鑑定は中級鑑定へと進化しました》


 それから声は一向に聞こえず、何が起きたのか確認するためステータスを確認した。



  クドウ ヤシャ(工藤弥叉)

 性別:男性

 職業:遭難者

 年齢:25

 種族:鬼人種

 レベル:20

 HP:1157

 MP:910

 攻撃力:150  魔攻撃力:70

 防御力:740  魔防御力:530

 俊敏:820   運:-10

 装備:クシャナ族の服装

 スキル:中級鑑定 アイテムボックス 環境適正Lv4 俊足Lv3 隠密Lv2

 魔法:雷魔法Lv1

 称号:神に見放された男  契約者


 うん。見ない方が良かったかもとちょっと後悔。

 この洞窟に来て戦闘も鍛錬も出来ないから5日以上経っているのに2しかレベルが上がっていない。

 数値も心なしか伸びてないし・・・運が・・・運がマイナスになってる!?

 落ちたからか?落ちたから神の嫌がらせの0を下回ったのか?

 それとも今まで否定してきたけど、これが俺本来の運なのか・・・

 弥叉は本来の目的である中級鑑定を忘れて自分の運の無さに肩を落とし項垂れた。

 かなりのショックの大きさにしばらくの間その体勢でいたが何とか立ち直り中級鑑定について模索し始める。

 やることは中級鑑定自体を鑑定するだけだが、


『中級鑑定』・・・鑑定時では鑑定できなかった高級アイテムや高レベルのステータスを見ることが出来るようになり、鑑定の時より詳しく詳細を鑑定できる。


 これは凄いかもと今まで詳細が分からず酷い目に合っていた植物を鑑定し始める。

 本当に鑑定から進化したようで謎の植物の正体が判明していった。

 判明してその効果に文句を叫んだが、先の自分の運のなさを思い出しすぐに落ち着いてほかにも使って見ようと中級鑑定を使っていく。


『雷魔法』・・・雷系統の魔法を使うことができる。Lv1~3は初級、Lv4~6が中級、Lv7~9が上級まで使えるようになるとされている。

『俊足』・・・俊敏を上昇させる。直線的な動き程が効果が上がる。

『隠密』・・・気配が薄まり認識されにくくなる。臭いや音は消せない。相手の一部を掴むことで一時的に相手にも効果を与えることができる。


 凄い!やりますよ中級鑑定さん

 鑑定では最初の一分だけだったのがプラスαで補足説明ついてますよ。

 今はこれだけしかスキルが無いからそこまで飛躍的に何かが上がるってことはないけど、この補足説明を知っている人間や魔族がどれぐらいいるか考えたらかなりのアドバンテージじゃないでしょうか。

 Lvが無いから育たないと思ってたたけど進化って盲点だったよ。旅先で文字練習のためにこの世界の知らない物を片っ端から調べて辞書にしようなんてやってなかったら全く使わずに腐らせていましたよ。

 しかも中級!まだ上級に進化する可能性があるってことですよね!

 マジ嬉しいッスは~♪

 それじゃこの調子で俺の持っていた唯一のスキルの補足説明も・・・


『環境適正』・・・環境に合わせ瞬時に適応できるようになる。


 ・・・・・・・・・

 自分の唯一のスキルにこれ以上の効果が無いという事が分かっただけだった。

 もう何も言うまい。Lvもどうして上がったのか分からないし放置にするしかないな。



 取りあえずこんな感じで中級鑑定に進化することになりました。

 後は魔物のステータスをどの程度見れるかだけど危ないし隠れた途中で発見した時にでも使えば良いだろう。

 これまでで分かったことだが魔物が多く出現する場所もあれば殆ど出現しない場所もあるという事が判明した。

 それも脱出するために外に出るためのルートと思われる同じ方向に多いことから目を覚ました所からさほど進めていない。何とか食料が尽きる前に脱出をと魔物のいないルートを探していたがそんなルートはなかったのでこれからはどうやってあの魔物達を切り抜けて行くか考えないといけないだろうな。

 何とか洞窟を出るための糸口も掴まないと、


 「ウキャッキャッキャ!」

 「へ?」


 立ち上がり隠れていた岩から顔が出た瞬間たまたま通りがかっただけの猿の魔物と目が合ってしまった。

 向こうも俺を視認してしまっては隠密で隠れることも出来ない。


「・・・まずい」


 俺の運の無さがマイナスなのをすっかり忘れていた。







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