26、終刻の洞窟
『終刻の洞窟』
ローデス山脈東方の全貌が今だに把握できていない洞窟の名前である。
この洞窟に入っていけるのは最低でもAランク以上の戦闘力が必要で複数人のパーティーが万全の準備を装備して行くような場所として認識されている。
この洞窟の名前の由来は遭遇する魔物が全て最終進化状態の魔物しかいない事。強くも弱くも最終進化のみしか現れず平均討伐推定はA+。
それも奥に進む程その強さは上がっていき、発見された魔物にはSランクの魔物も発見されている。
しかしそれだけならば他の地方の洞窟でも同程度の強さの場所はありそこの探索は順調に進んでいる。
ではなぜ全貌が今だに把握できずにいるのか。
それはこの洞窟の探索で起こった事件でその危険性が跳ね上がったからだ。
◇ ◆ ◇
洞窟発見は250年も前
当時の冒険者ギルドに所属する人族も魔族も未開の地に偉業や功績、名声を得られるかもしれないと期待し高ランク冒険者以外は洞窟内の下級の魔物によって大半が命を落とした。
決して少なくない犠牲の後、冒険者ギルドは侵入する冒険者の制限をかけ低ランク冒険者を入れなくした。
これにより死者数は減り高ランク冒険者が持って帰ってくる情報だけに集中でき洞窟の内部情報が明らかになっていった。
当時の平均討伐推定はB+。
それでもかなり高かったがそれはまだ洞窟の中間までの情報しかなく徐々に強くなっていく魔物についていけなくなったパーティーの死亡件数が増えていった。
そんな中、大変なものが洞窟内にから発見された。
『付与草』
『魔力茸』
『生命花』
他にも珍しい物はあったがこの三つは国レベルで動く価値があるほどの幻の一品と言われる物である。
付与草は特殊な条件があるスキル以外ならスキルレベルを2上げる効果を持ち、魔力茸は内部に最上位魔法5回分の使用できるだけの魔力が溜まっている茸で、生命花は使用者の状態異常、体調不全、病を全回復し寿命を5年延ばせると言われている花であった。
どれもが馬鹿げた能力を秘めており発見が無いに等しい物が洞窟内にあった。権力者達は何が何でも取るために大量の兵を差し向けた。
冒険者ギルドのこれまでの情報は強制的に侵入する各国へと流され大量の人間が終刻の洞窟へと入り、情報にあったはず魔物の情報を無視した隊から死者がまた増加した。
その代わり冒険者の探索手前までの地形が完全に把握され地図の作成ができ実力者の進行が早くなった。
そしてついに人族の国の近衛部隊が目的の三つを発見する。
地図のどこにあるのかも人族国家にのみ知らされ、それからしばらくの間一定量の採掘がなされた。
それからしばらくして急にまた帰ってくる人間が一気に減少し出した。
初めはいつもの魔物の強まりについていけなくなったのかと思ったが一向に死者数は減少せず死者の殆んどが採掘場所の情報を貰っている人物ばかりで全滅しているあることが分かり、死者の中には他国に名の知られた戦士長や魔法使い、Sランクの冒険者パーティーも入っていた。
そのことに気が付いた冒険者ギルドは各国にこのことを伝えると問題を重要視した各国は今度は今まで探索で功績を上げていた人物や参加していなかったが一人一人が偉業を成した人物200名にもなる部隊を作り上げた。
それは当時最強だったと言っても過言ではない部隊が誕生した瞬間だった。
結果は大変なものになった。
ここからは冒険者の生き残りからの話である。
地図の制作が完了している地点までの移動はローテーションで戦闘を行っていき拍子抜けするほどあっさりと到着したらしい。
強者の気配を感じてか、それとも人数に恐れをなしたか探索をしていた人が魔物の遭遇がいつもより少ないと言っていた。
到着からローテーションを止め、先方に探知が得意な人物を後方に拠点にする場所の確保する人物を置いたり慎重に行動を開始した。
この冒険者は拠点確保に回された。
探索が完了したら拠点を前進させていく。
ここに来ると流石に怪我人が出始めたが順調に探索が進んでいた。Aランク以上しか出ないと先鋒の人間が愚痴っていたがそれでも余裕があり笑って話していたのが精細に残っていた。
そう何もかもが順調に進んでいたはずだった。
突然、先方に出ていたはずの連中がいつもの時間になっても帰ってこないのだ。
不安が広がりある可能性にいきついたが否定したくて首を振る者「ありえない」という言葉を隣にいる仲間が漏らす。
しかしさらに数時間経っても彼らが帰ってくることはない。
もう確認しに行くしかなかった。
先方の人数より少ない拠点班は前に進むよりも逃走を優先して進んでいった。
そう。何も怠らなかったその場で最善の選択を選んだはずだった。先方が進行した所まで追いつくことにも成功した。
だがそこで見た光景は、まさに文字通りあり得ない光景だった。
大量の魔物の死骸と激しい戦闘があったのが物語っている戦闘後、それに混じって人の死体も確認できた。人数からいって全滅。
それはおかしなことだった。
魔物は確かに多い、しかし誰一人助からなかったのかというと疑問が残る。
最強の部隊と言われていた実力は本物である。
死者が出たとしても辺りに散らばる魔物の戦闘力は道中より確かに強いが昨日の倒した魔物と大差ないものばかり、いくら多くても全滅するとは考えられなかった。
そんな異常な光景に最初に異常に気付いたのは大国の主席宮廷魔法使いの地位についていた老人である。
実力はあるが進行するのに年で動くのに支障が出るといけないと拠点班に回されていた。
「どうした?」
「この空間、魔障粒子が散らばって瘴気になっておる」
「どういうことだ」
魔法使い以外首を横に傾けたが言葉を聞いた同じ魔法使いの驚愕具合に不安を抱きながら拠点班の隊長が詳しい説明を促す。
「魔障粒子は少量では特に問題になりはせん。だがここまで濃くなった粒子は有毒で初期症状で魔法の発動を阻害し浴び続けることで身体が麻痺していく。知覚は難しく何時から浴びていたのか分からないがすぐに撤退するべきじゃ」
その説明でも正直分からなかったが後で説明された話では最初の症状で魔法使いは使い物にならなくなり、次に麻痺によって戦士も使い物にならなくなる害であるのに魔法使いなら初期症状が戦士なら2次症状が出るまで分からない恐ろしい粒子だと本当に詳しく恐ろしさを聞かされた。
先の死者の大半が症状に気が付かず奥まで進み何もできないまま死んでいったのだ。
隊長はすぐに全員に撤退何としてもこの情報を国や冒険者ギルドに届けるために行動を開始した。
どこから粒子になったのかは分からないが拠点だった場所は確実になかったと言い切れた為、拠点まで全てを逃げることに捧げて安全地帯を目指した。
しかしこの時全員が見落としていた事がある。
先方の部隊はこの場所で戦闘になり全滅した。
急いでいたとはいえ撤退が出来るように動いていた自分達と先方の進み具合に大きな差があったとは思えない。
もし同じなら魔法使いの何人かが使い物にならなくなったとしても戦士は症状が表れていないので戦えたはずだ。それなら全滅は無いはずなのだ。
なのに結果は全滅した。
撤退を開始した後方でその理由が目の前に迫っていた。
最初の犠牲者は殿を務めていた副官だった。見ていた者がいなかったことで何が起きたのか分からず悲鳴だけが聞こえ全員が後ろを振り返った。
そこには噂には聞いていたが誰一人遭遇したことのない絶対強者がそこにいた。
魔族の高位魔族と同格の力を持つと言われる災害級の化け物。
討伐推定は最高位のS+。
会うな、関わるな、すぐ逃げろが基本になっているような魔物。
初めて見たそのS+の魔物は四肢で立つ足とは別に肩からさらに日本に腕がある異形な形で後ろを振り返り絶望が広がり絶叫して逃げる間に二人の仲間がその手に捕まり容易に命を奪っていった。
疑問は解消された。
なんて事はない。
この化け物が魔物との戦闘をしている中に乱入しすべてを殺し尽くしただけの事だったのだ。
「散!」
隊長がそれを見て残る全員に聞こえるように命令を下す。
命令内容は分散。
一帯になってもただ獲物として捕食されるだけ散らばって一人でも多く生き残るにはこの選択しかなかったのだろう。その後、最悪一人で出口に行かなければならなくなったとしても・・・
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」
散らばって逃げ始め運が無かった者の悲痛な叫びが後ろから聞こえる。
それを無視して前だけを向いて走った。
走って走って走って走って、
息が切れても無理やり呼吸しあの化け物から離れるだけを考えた。
どれだけ走ったか分からない。
仲間とは全員と逸れた。
ただ止まったのは走った先に見覚えのある場所に出た事だった。
焚火の跡、それが意味するのは拠点への帰還。
数時間前まで笑っていた場所に来たことでさっきまでの事が夢だったのではと現実逃避しそうになったが
来てからほんの僅かで何かが走ってくる音が聞こえ恐怖によって現実に戻される。
身構えその人物を見て安堵した。
仲間のうちの二人、名前も覚えていないぐらいの人物だったがまるで無二の親友のようにお互いに抱き合った。「誰が俺を庇って死んだ」や「親友が助けてって言ってるのに見捨てて来たんだ」と二人とも自分の無力さを涙交じりに零した。
だがここが安全というわけではない。すぐに逃げようと拠点を後にしようとした。
その時、二人は見ていなかったが俺だけはそいつが視界に入った。
さっきの化け物とは別の姿をした見たこともない背筋が凍るような視線を向けた魔物が俺らが立ち去るのを見て洞窟の奥へと消える様子を、
俺達はなんとか洞窟の出口まで辿り着くと糸が切れたように倒れ警備をしていた者たちの手によって保護された。
そして洞窟内の出来事が世間へと伝えられた。
その後は各国諦めて撤退していき洞窟に入るのは最奥を目指さず途中で引き返す者ばかりになり、終刻の洞窟は魔法使い殺しの災害洞窟としてS級危険エリアに認定される。




