25、奈落の先
硬い感触に身体の痛み、空腹そういった複数の感覚が交わり耐えきれずに目が開いた。
目を開くとさらに身体の痛みがさらに伝わってきて眉根を寄せながら歯を喰いしばって立ち上がった。
頭がくらくらする。
背中には強く打ったのか打撲しているようで、右手は痺れ、左手には腫脹ができ、右足は擦り切れた所為で血が流れ、無事なのは左足だけであった。
それでも最後の記憶を思い出すとよくこの程度で済んだという方が合っている。
よく骨折しなかったよなぁ。
上を見るがそこには光もなければ穴もない。
ただの天井があった。
いったいどのように助かったのか皆目見当がつかないが生きているのだけは現実である。
「とにかく助かった。・・・って事でいいんだよな?」
見た限り洞窟で暗いが視野が無くなることはなく少し呼吸しづらいぐらいで変わったことは特にない。
「とにかくまずはこの洞窟から自力で出れるか調べて見るしかないな」
ぐるる~
決意した出鼻を挫くように自身のお腹からそんな情けない音が聞こえた。
アイテムボックスにある食料を食べ腹ごしらえが済んだ所で洞窟内の探索を開始した。
現在地どころかこの洞窟のような場所がどんな所かもわからず探索するには最新の注意を払って進もうと隠れながら進み始める。
幸い洞窟の通路は広く、そこ彼処に隠れられそうな場所があり物陰から物陰への移動は容易だった。
それからどれくらいたったのか
分かったことは二つ
この洞窟は半端なく広い、それに物凄く危険な場所かもしれないという事だ。
一つ目の広いというのはこの洞窟がゲームの迷宮なんかの大部屋や行き止まりがあり、その道や部屋一つ一つが長くて広い。そこから考えてすぐに出られるような洞窟ではないと判断した。
問題は二つ目
その答えに至ったのは目の前にあるこの洞窟に生えている草やらキノコといった食べれるかもと思った物を鑑定で調べたことで判明した。
『?????』・・・???????????
『xyうぬfg』・・・htdhんぶbf
『いうfでzgh!!』・・・XXXXXXXXXXXXX
ふざけてません。
俺の鑑定が壊れているって訳ではないだろう。というか、これと同じ状態を俺は知っている。
マリア・K・マクペシュ
性別:女性
職業:・・??
年XX:!?死
種族:hgfd吸血鬼
俺がマリアのステータスを見た際の表示がこれだ。
これがどうして起こったのか分からないが俺のレベルが低い又は鑑定するものが上位物、その両方か
つまりこの草やキノコは本来俺のような人間では取れないような特殊な場所・・・危険な場所にあるのではという答えに至った。
取りあえず草やキノコはアイテムボックスに入れ探索を繰り返す。
まだここが危険であるという確たる証拠はない。まだ生き物に遭遇していないからだ。
遭遇したくないという恐怖と確認したいという好奇心の二つが混ざり合いながら歩を進めていく。
先程も警戒していたが今は今までにないくらい周囲に慎重かつ正確に身を隠していた。
「シャ―――!」
分かれ道に入り動こうとした先にそんな声と何かの影が視界の隅に引っかかり慌てて身を岩陰へと戻しその影の動向を伺う。
影はこちらに近づかず何かと対峙しているようだった。
取りあえず鑑定を使った。
ロングスネーク
種族:爬虫類
魔物には職業も性別も年齢も表示されない。
それでも表示した甲斐があった。この何のひねりもない名には覚えがある。
初めてマリアに投げて寄こされた魔物の名がショートスネークという。と、いうことはこの蛇はその上位種という事だ。
予感が的中した。ショートスネークは今の弥叉が真剣に勝てなかった魔物と同格である。その魔物の上位種に弥叉では逆立ちしても勝てる訳がない。
相手が気付いていないことが分かり岩陰に沿いながら見やすい位置へと移動していくとその全貌が見えてきた。
名前の通り長かった。ショートスネークの倍どころか3倍にも見える化け物のような蛇がそこにいた。
見た目はそのまま大きくなったようだが頸部が大きく広がっている。見つかったら死ぬ存在が目の前にいる。
その恐怖が足の震えという形で表れる。
迂回してすぐに逃げよう。
そう考え動いた所でもう一体の魔物の姿が姿を見せた。
全身は長く粗い体毛で被われ顔には体毛がなく、皮膚は黒い猿。1メートルにも満たない対峙する蛇と比べるとすごく小さい。腕が不釣り合いに長いがそれだけであった。
今、飛び出すと猿の魔物の視界に入ると再び岩陰から顔を覗かせその様子を観察する弥叉。
体格と蛇の強さのある程度の予想からどう考えても猿は捕食側に見えた。そしてついに動き出す。
・・・・絶句した。
迫りくる蛇の頭部がいきなりあらぬ方向へと曲がったと思ったらがら空きの頸部を腕で殴りつけ、
ゴギン!
と音が弥叉のいる場所まで聞こえてきた。殴られた蛇はそのまま壁へと叩き付けられる。
まだ生きているようで尻尾は動くが勝敗は変わらない。追い打ちに空中を一回転して膝落としを胴体に決めてチェックメイト、ロングスネークはピクリとも動かなくなった。
「ウォ!」
勝利の雄たけびと思われる声を上げ拳を突き上げる猿。
その戦闘光景に硬直してしまった弥叉は猿の鑑定も忘れ、ロングスネークを運び出して消えて行くまでそのままだった。
ドサリと腰を抜かして倒れた。
ヤバい。ほんとにヤバい。何なの此処?化け物しかいないの?それともあの猿が主?
とにかくこの洞窟は不味い。俺はどこかまだ大丈夫な気がしていた。しかし会えば死ぬという状況に足が竦んだ。
化け物のような魔物に広い洞窟、今まで助けてくれたマリアは今はいない。
しばらくの間弥叉はその場から動けずにいた。




