S5、学園生活開始
入学式は無事に終了を迎えた。
上級生の行ったデモンストレーションは見事なものであった。
ウィアから魔法の使用している所は見せてもらったことがあるが、それは初級の中でも最初に教わる魔法で効果も見た目も小さなものであった。
上級生が行っているのは中級魔法や初級の無詠唱で行う演武。
隆の宴の時の試合と同等の速度で打ち合う生徒に対し後ろに控える魔法使い打ち合いに合わせて魔法を放ち立ち合いを華やかに彩っていく光景は圧巻の一言であった。
デモンストレーション終了後、周りからは歓声が上がった。
それから最後に学長の話をして式は終わるとこの日は入学式のみのためそのまま解散になり、僕達はこれから暮らす寮の案内をされた。
ここで女性陣とは寮が別れているので離れ、代わりに隆と合流する。
真希にも会って起きたかったがそんな時間もないようですぐに向かう事になった。
「あの演武はなかなか凄かったな」
「隆から見ても凄かったのか」
「俺にはあの速度で決まった動きを相手と合わせるなんて出来ないからな」
寮に着くまで入学式の事を話しながら向かっていく。
寮は二人一部屋で隆と同じ部屋を手配されていた。
普通は同じ学部同士でルームメートになるので配慮されたようだ。
部屋は6畳あるワンルームでトイレとベッドと机が常備されていてクローゼットの収納スペースも広かった。
寮内には食堂とトレーニングルームに会議室もある。
ただお風呂はすべてシャワーのみで浴場に入るには寮の外にある専用のお店で入りに行かないといけないと言われた。女子寮には浴場もあるらしい。
そんな感じで寮での通いの生活が始まった。
そして今は翌日の教室
僕は総合部門の1-Cのクラスに決まり当然のようにサポートを頼んでいた三人もこの教室にいる。総合部門のクラスは全8クラス25名で他の部門も同じクラス編成だ。
隆は戦闘部門の1-Aに真希は魔法部門の1-Eになったそうだ。
ちなみにクラスみんな立って話したりしているが、もう授業は始まっている。
1クラス一担任なんてものは無い。
一限目に自習になっており、その時間で自分達で自己紹介をするようにして、それが終わればすぐに授業になる。
現在はその自己紹介の時間なのだが・・・
僕の周りには誰一人集まらなかった。
みんな遠巻きに見てはいるが勇者っていうのが気を引かせてしまっているようで近づいてくれる人はいないのだ。
ウィアとサポートの・・・・紹介をすると、
女性の方の名はユリーシャ・クリストラ
前にも言ったが伯爵家のご令嬢ですでに雷系魔法は中級も使えるというウィアにはユリと言われていている。たまに怖い時があるので逆らおうとは思えない人だ。
男性の方がジル・ダエ二ール
自分の事を某とか言って最初は侍や忍者がこの世界にも!?と思ったが見た目は完全に兵隊員で性格は抜けているという何ともキャラが定まっていないような男だ。それが印象に残っていてサポートに選んだ。
それとウィアの本名はウィア・フィード・アロドフ。
こちらも人が一向に近づかないでいる。
三人にこの実習の意味を聞いてクラスメートとの交流をするのにこのメンバーで一緒に話していたら他の人が話しづらいだろうからお互い別れてクラスメイトと話そうという事にしたのだが、まさかここまでみんなから話しかけて来られないとどうしたものかと悩んでしまう。
僕だけでなくウィアも同じ状態なので尚更なんとかしたい。
僕は何かきっかけが無いかクラスを見回した。
そこで僕とウィアとは別にもう一人誰とも話すことなく一人で席についている生徒が目に入った。
思い立ったらすぐに立ち上がると覚悟を決めて話し始めることにした。
◇ ◆ ◇
アレク・リード
この生徒の名を知っている生徒は多い。
ウィア王女のような高貴ではない、平民の出だ。
それなのになぜ生徒に名が広まっているのか。それはこの学園にいる期間が長いためだ。
一年なのになんで長いのかって言うと留年。しかも今年で4度目の一年生である。
王族貴族の多いこの学園で自分のような平民がいるのもあって有名になっている。
入学当初彼は騎士になるために戦闘部門への進学を希望し試験で見事合格を果たした。
しかし入学式前戦闘部門への進学を希望しあと一枠あれば入れたと言われて総合部門に落ちた貴族の息子に嵌められ戦闘部門に入る資格を剥奪。この貴族の息子と代わる様に総合部門になってしまった。
それでもアレクは騎士になることを諦めずに総合部門で努力を積んできた。戦闘部門の試験に合格しただけあって体術や剣術面では彼は成績上位に必ず名があるほどであった。
しかしアレクには決定的な問題があった。
魔力量が圧倒的に少ないのだ。
本来受かった戦闘部門の進級試験に魔法のテストは含まれていない。
だが総合部門は魔法も出来なければ進級資格が貰えない。進級資格が貰えなければ部門の入れ替わり資格もないため必然的に留年になっている。
何とか騎士になろうと努力を続けたが結果は今の状態だ。
周りからは関わると進級出来なくなると噂が立つようにまでなっている。
「あの」
だから話しかけられるなんて思わなかった。
教師かと思ったが自分と歳が変わらないような整った顔立ちをしたクラスメイトの青年で制服だから判断しにくいが貴族ではないだろうか。
平民にしては肌、特に手が綺麗すぎる。
だけど貴族なら尚更話しかけてなんて来ないと思っていたが、何を話すのだろうか。
身体を動かして彼の方を向き、次の言葉を待った。
そして、
「僕と友人になってくれませんか」
まだ、お互いの素性も知らない時に言われたこの一言からアレクの今までの3年間とはまるで違う、4度目の学園生活が始まった。




