王宮の庭園で……
◇
その後、スキップしたくなるような陽気の中、王宮の庭を通って収穫に向かったのだが、そこで私は物陰で話す二人の貴族を見かけた。
「まったくな、あの宰相め。クヴァレ王の幼馴染みでなかったら……」
「ああ、血も涙もない男だ。姉であるヘル様を無理やり隣国へ追いやったそうじゃないか」
アイスベルク様への誹謗中傷。しかも事実に反している。ヘル様は隣国行きを喜んでいたはずだ。あまりの理不尽さにムカムカしていると、背後から声をかけられた。
「シンマァ? なにしてるんだ?」
「きっっきゃあぁぁぁぁぁ!!!」
庭に悲鳴が響き渡る。その悲鳴の余韻の中、私を震え上がらせる視線が、私の背後に立つ人物――アイスベルク様へと向けられた。
「っ、カルト候……!」
「い、いつからそこに……?」
二人の貴族は、先ほどまでの威勢が嘘のように腰を抜かし、泥のように怯え始めた。アイスベルク様はあえて答えず、ゆっくりと手袋を整えながら、彼らの至近距離まで歩み寄る。
「……そうだな。お前たちが、俺の噂話を始めた頃からだったか」
その言葉は氷の矢のように彼らに突き刺さった。貴族たちの顔色は青ざめ、その足は恐怖でガタガタと震えている。
「ところで……お前たちはこんな場所で何をしている? 今日は御前会議の真っ最中だろう。義務を果たさず怠けているようであれば、有無も言わさず降格処分だが?」
「っ、そ、それは……! ちょっとした休憩を……」
言い訳にもならない苦しい弁解に、アイスベルク様は冷ややかな笑みを浮かべた。
「そうか。ならば十分休憩しただろう。俺の噂話で喉が渇いたなら、持ち場に戻って水を飲むといい」
その声には、一切の反論を許さない絶対的な拒絶が込められていた。貴族たちは「ひっ!」と情けない声を上げると、地面に這いつくばるようにして逃げ出した。バタバタと乱れた足音が、王宮の庭に虚しく響く。
私は呆然と、その後ろ姿を見送った。
「……なぜ、噂は嘘だと言わないのですか?」
私は悔しさで涙を滲ませた。なぜ、彼はあんな理不尽な汚名を着せられたまま、一人で耐え続けているのか。
「言わせたいやつには言わせておけばいい。……シンマァが理解してくれているなら、他はどうでもいい」
アイスベルク様は、私の頭を優しく、けれど少しだけ力強く撫でた。その朱色の瞳には、私しか映っていない。先ほどまでの氷のような冷徹さは消え失せ、私にだけ向けられる穏やかな温度に、鼓動が激しく高鳴った。
庭の風が木々を揺らしているはずなのに、私の耳には自分の心音しか聞こえない。彼がそっと私の顎を指先で掬い上げ、そのまま王城へ続く回廊へとエスコートしてくれた。
「少し、場所を変えよう。……少しだけ、休憩しないか?」
彼の手は温かく、拒む理由などどこにもなかった。
◇
アイスベルク様が、出てこない……orz
次こそはだします!




