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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
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●「あの日あの時あの場所で」1/2

That day, that time, that place

私には両親の記憶がない。


物心ついた頃には、家族はおばあちゃんしかいなかった。


おばあちゃんはよく家で絵を描いていた。


私もよく一緒になって絵を描いていたものだ。




「いいかい、見たものをそのまま写す。こんなものは写真がやってくれる。絵を描くってのは見たものを自分の感性でどう捉えたか形に残す行為なんだよ。」




おばあちゃんは、私に絵を教えるときにいつもこう言っていた。


幼い時分は、それがよく理解できず、ふーんそんなもんなんだ。くらいにしか思っていなかった。




当時、絵を描く行為そのものの意義を理解する者はこの島にはほとんどいなかった。


今から思えば、生きるのに必死で娯楽を楽しむ余裕なんて皆なかったのだろう。




外で絵を描いていると周りから奇妙なものを見る視線が向けられた。


大抵それだけで済むのだが、同年代の子が時々私を狩りに出ない臆病者と罵り、泥を投げつけてきたりした。


私はそれが凄く嫌で絵を描くときに周りを気にするようになった。


少しの音も聞き逃さなかった。足音がすると直ぐに画材を隠した。


だんだん、音に過敏になり、風で揺れる木々の音、水車の水の音、様々な音にビクつくようになった。


当然、まともな絵なんてかけたものじゃなかった。わたしはスランプ?というやつに陥ったのだ。




しばらく筆を持てなくなった。あの時はおばあちゃんにも心配をかけちゃったな。




私は絵から離れしばらく過ごしていた。


何故、こんな思いをしているのだろう?私はただ絵を描くことが好きなだけなのに。


日々、そんな思いが頭の中を行き来していた。




私は島の人々から距離を取っていった、絵の価値を理解しようともしない奴らなんかになれ合うもんかと思っていたんだ。




あなたに出会うまでは。




あなたはある日突然私の前に現れたよね。


いきなり告白されたから、私は相当困惑したんだよ。


後からそれが、あなたなりの挨拶だって分かるまで本気で返事を考えてたのは苦い思い出よ。




私は最初あなたをただただ拒絶していた。


こいつもどうせ他の人間と変わらず、ただ狩りをしてその日を過ごすだけ、心のゆとりがないやつだって。


でも、あなたときたら私の予想を悉く裏切ってくれたわよね。


ただ純粋に好きなことばかりして、流石に少しは働けよと私が心の中で突っ込むほどだったわよね。


もしかしたら、あなただったら、絵のことを理解してくれるかも。


私はそう思うまでにあなたに気を許していった。




知り合ってから3週間ぐらいの時だったかな、あなたが私の家に来たのは。


おばあちゃんは私に友達が出来たって喜んでいたっけ。




私のアトリエにあるいくつかの絵を見せると、あなたはそれらにすごく興味を示してくれたよね。


あなたなら理解してくれるって思ってたけど、実際に見せるまで怖かった。


やっと心を許せそうな相手が出来たのに、また一人になるかもって。


杞憂に終わって本当に良かったって、あの日は思っていた。




それから、私の生活は一変した。




アミュレットと呼ばれる超能力を持つ一握りのエルフは、様々なことに影響力を持つ。


まさか、あなたがその力を持っていたなんて、私は知る由もなかった。


あなたが、この島に絵という文化を広めてくれたんだよね。


私では絶対に成し遂げられなかったことを、あなたは一か月でやってしまった。


あなたは、ただの暇つぶしだ。みたいな感じで笑っていたけどね。


絵は私にとって全てだったから、あなたは偉大なことをしてくれたんだよ。


あなたは私にとってヒーローになった。




絵が島に流行ってから、私の家には絵を学びにくるエルフたちがやってくるようになった。


その中には子供もいて、私はどんどん島民たちとの交流を持つようになった。




順調にいくことばかりではなかったけど、あの頃は充実していたなぁ~。




私はもう何の怯えもなく、堂々と外で絵を描いていき、スランプを脱却していた。




だけど、私はまたスランプに陥ってしまう。


それは、おばあちゃんが死んでしまったことが由来していた。




私の唯一の家族が、いなくなってしまった。


私は、一晩中泣き続けてしばらく動けなかった。




私のヒーローは再び現れてくれた。


私の傍にずっといてくれて、私を慰めてくれた。


私の涙が乾いた頃、あなたは私を島で一番高い場所に連れてってくれたね。


そこで見た夕日は今も脳裏に焼き付いている。


黄金のような眩しい輝きが私たち2人を包んでいたっけ。


あまりの美しさに何故か涙が止まらなかった。


私が泣くもんだから、あなたはとても困った顔をして私を慰めようとしてくれていたね。




思えばこの時からなのだろうか、いつもあなたの姿を追うようになったのは。


あなたと共に過ごす時間がとても幸福に感じられた。


私以外のエルフと過ごしてほしくないなんて独占欲まで湧いてきていた。


この感情を恋だと理解するまで、そう時間はかからなかった。




あなたに謝りたいことがあるの。


あなたが友達として純粋に接してくれているのに、私は我欲にまみれていた。


お家にお呼ばれしたとき、私はあなたの目を盗んで宝箱の中身を見てしまったの。


ただ、あなたのことで知らないことがあるのが嫌だったからなんだけど。


中を見てびっくりしたわ。


明らかに島のものじゃないのがたくさん入っていたんだもの。


見つかったら絶対にただじゃすまない。


島のことをあまり知らないあたしでも知っていたんだから当然あなたも知っていたんでしょうね。


でも怖くて聞き出せなかった。


あなたが来る前に片づけようと慌ててたんだよね。


中の物を一つ落としてしまったの。


それは中に液体が入っていたから、液をこぼしてしまったの。


パニックになってしまって私は液を掬って戻そうとした。


しばらくしてその液体は直ぐに蒸発してしまったから、証拠隠滅のために容器を黙って持って帰ってしまったの。




このことを伝えなくちゃって今も思ってるんだ。




そういえば、その翌日に異常なことが起こったんだよね。


このことはあなたにも話したことはなかったんだ。




私が、普段通り絵を描いていたときのことなんだけどね。




何かが音を立てたの。


私が、


「誰かそこにいるの?」


ていうと、音がピタッってやんだんだ。




しばらくすると、声が返ってきたんだ。


返ってきたというよりも頭の中に直接語りかけたっていう方が正確かもしれないけど。




何て言ってたかあんまり詳しくは思い出せないんだけど、神核、私は選ばれなかった、って感じのことを言われたことだけは今もはっきり覚えているの。




言葉の意味までは分からないけどね。




その日は知らないうちに眠ってたんだ。




次の日、いつものように絵を描きに行ったんだ。でもいつもと違うことが起きたんだ。


何が起こったと思う?


私の描いた絵がキャンバスから飛び出て、動き出したんだ。確かに魂を込めて絵を描いてはいるんだけど、本当に魂が込められるとは、驚いたわ。




これがアミュレットだと気づくのには、時間がかかった。


だって、アミュレットは生まれついての神から授かった超能力だって聞いていたから。




ねぇ、あなたはあの液体の正体を知っていたの?


一体何なの?


あなたが何だか遠くへ感じて、怖かった。




でも、同時にあなたと同じアミュレットを手に入れて近づいた感じもした。




私は自分のアミュレットの研究を開始した。


まずは、どの程度書き込めば魂を与えられるのかを試した。


結果をいうと、筆を放して1分で絵に魂が入っていた。


さらに、適当に絵を描くといい加減な魂が吹き込まれ、丁寧に絵を描けば描くほど本物に近づいていくことが分かった。


私はさらに能力を試していった。完全に使えるようになったら、あなたを驚かしてやろうなんて考えていた。


結局新しく分かったのは、今の2つのことが生物でも物質でもいえるって事と絵ならキャンバスや筆を使わなくても魂が吹き込めるって事だけだったけど。

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