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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
✟眠れる聖剣と神秘の森ー超大陸バンギア北西部最奥部「神秘の森 カティー二ャ」ー
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✟「秘密の園」2/4

オクタビアはある山の頂上付近へとたどり着いた。


オクタビアの能力。それは土の塊に自らの意識を移し、操ることができるというものだ。そのため意識を移している間は自分の体が無防備になったり、土の重量が自らに重くのしかかってくるという欠点があった。


だが、今は正念場だ。

ここで、あのパンドラボックスを何とかすれば皆の戦いが楽になる。

それにあのパンドラボックスとは少なからず因縁があるのだ。


オクタビアには両親がいない。

エルフとの戦いで殺されてしまったからだ。

しかし、ノナジ=ブエンディアという兄がいた。

ノナジはたった一人の妹のことをとても愛していたし、オクタビアもそんな兄のことが大好きであった。

しかし、ある日。


ノナジが家から出ていったきり帰ってこなかったのだ。

最後にノナジを見たという者の話を聞くと、彼は一瞬で箱に閉じ込められ連れ去られたとのことだった。


暗殺教団のことを知ったのはその後のことだった。

そしてその箱がパンドラボックスと呼ばれていることも後で知った。


多分、いやもう確信に近いがノナジは暗殺教団に殺されたのだ。


「兄さんの分も!私が仇を!」


オクタビアは能力を発動させる。


小さいゴーレムでは小屋を攻撃したところでびくともしない。

恐らく防御を高めているに違いない。それが能力なのだろう。

だからもっと大きなゴーレムで。


そう、彼女は一つの山をゴーレムにするつもりなのだ。


(動いて!お願い!)


意識は山に移すことが出来た。

あとは動かすことが出来れば!


ゴゴゴゴゴゴゴ


地面が揺れる。


(だめ!これ以上は!)


全身にかなりの負荷がかかる。

オクタビアは意識を失いかけた。


だが、彼女は耐えた。

ここで頑張らねばいつ頑張るのだ。


山でゴーレムを形成した。


「これで!お願い!」


ゴーレムが立ち上がる。


ドドドドドド


山が動くのだ、当然周りにかなりの衝撃が走る。


ドシンドシン


一歩、また一歩と歩くたびに地面が揺れる。


(意識が……!)


オクタビアはもう目があまり見えていなかった。


そして遂にオクタビアの意識がなくなった。

巨大な山の塊はその自重を制御できず前のめりになり倒れた。


あぁ、なんという奇跡だろうか。

ゴーレムが倒れた先には先程転がっていった小屋がいたのだ。


ズシン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


山一個分の重さが小屋に衝突した。

いくら能力で強化された小屋といえども流石にその重さに耐え切れなかった。


バラバラバラ


小屋が木っ端みじんになった。


錠が吹き飛ぶ。



「あれ?私どうしちゃったんだっけ?」


オクタビアは意識を取り戻した。


「ゲホッ!」


吐血した。

流石に山一つ分動かすと内臓がいくつか潰れてしまうようだ。


そのままオクタビアは転倒していった。


彼女は破壊した小屋の残骸と錠前がある場所へとたどり着く。


(やったのね……。)


オクタビアはもう声が出せる状態ではなかった。


「……俺がお前を……守る。」


どこからか声が聞こえてきた。

どこか懐かしい声。


「……お前が幸せに暮らせる楽園……を……」


真っ赤に見える景色でも声の主は見えた。


錠前だ。


錠前から口が生えてきていた。


「……助けるん……だ……」


声がはっきりと聞こえなくてもオクタビアには誰の声か理解できた。

彼女の目から涙がこぼれる。


(……兄さん……だったのね。)


以前の兄とは変わり果てた姿に驚きを隠せなかった。


錠前から足や手が生え始め、徐々に人の姿へと進化していく。

だが、以前の兄の姿ではない。何か新しい生物と言った方がしっくりとくるものだった。



「あぁ!あぁ!やったぞ!進化した!不死の生物リビングデッドに!」

(兄さん!なにを言ってるの?)

新しい何かは自分の手や足をじっくりと眺めていた。

目はないはずだが。


「さぁ、楽園を!新世界を!。」


それは瀕死のオクタビアに近づいた。


「今は気分が良い。あなたが死ぬ前に昔話でもしようか。」


それは非常に上機嫌だったのか、勝手に話を始める。


「自分には妹がいる。可愛い奴でね。僕のたった一人の家族なんだ。」

(やっぱり兄さんだ。間違いない。)


オクタビアは兄に自分が妹だと伝えようとしたが、上手く話せなかった。


「寿命を縮めるだけだ。もう少し話につきあって欲しい。」


ノナジは話をつづけた。


ノナジは妹のために誰よりも働いていた。

彼が働いている間幼いオクタビアは、隣の老婦人に引き取ってもらっていた。

この老婦人はノナジの前では優しそうに振舞っていたが、ノナジがいなくなった瞬間オクタビアに暴力をふるったり、精神的に追い詰めたりしていたのだ。


それに気づくのが遅く、オクタビアは人から愛されるように、必要にされるように自分のしたいことを話さなくなったという。


ノナジは自分を責めた。


彼のいる里は一番低い山、つまり最も貧困なものたちが集まる場所だった。

暮らしをよくしようといくら頑張っても、能力を持たない彼はもっと高い山へと移動することが許されなかった。


そんな彼は日に日に怒りを覚え、守るべきオクタビアにまで手を出そうとしてしまった。


(覚えてる。その日のこと。兄さんの顔が怖かった。)


ノナジは怯えるオクタビアにただ「ごめん」としか謝ることが出来なかった。


彼はそういうこともあって次第に家に帰るのが遅くなっていった。


オクタビアが成長すると彼女をさらい、金にしようとする輩も出始めた。

彼女は本当に危ない目に何度もあってしまったのだ。


妹を守りたい、誰からも、自分からも手が出せない場所へ。


ノナジはハーシュと出会い、果実を口にした。

そして彼の願い通りの能力が手に入った。

その身を鍵前に変え、中の物を決して外に出さない力。


この身は鍵前なのだから決して妹に手を上げることもない、外からくる誰も自分の宝物に手を出せない。


だが、ノナジはそれだけでは満足いかなかった。

彼女を死というものからも守りたいと思ってしまった。


ハーシュにそのことを告げる。


「君は洗礼を受け、今不死の存在の一歩手前まで来た。私と同じようにリビングデッドになるのには多くの者の魂がいる。その存在まで進化し、山の老人を復活させこの世に楽園を広げるのだ。そうすれば誰も死ぬことの無い素敵な世界が君を待っている。」


彼からはそう告げられた。


「だから、君も妹のために魂を捧げてくれ。楽園を築くための犠牲になってもらう。」


「……兄さん。そんなの間違ってる。」

「!?」


オクタビアは必死に声を出した。


「誰かの命を犠牲に永遠に生きるのはごめんだわ。」


オクタビアは倒れてはいるが、だが決して目はノナジを見続けながら言葉を紡いだ。


「それに兄さんに守られるだけの人生もごめんよ。」

「オクタビア……なのか?」

「そうよ。兄さん、聞いて。確かに危ないこともあったわ。」


そう、彼女は危険な目にあってきた。


だが、能力を手に入れより多くの人たちと交流を続けていくうちに。


「でも、外にでないとこの世界の素晴らしい部分に気付けなかった!」


マクシモヴィッチ、ジン、長老、他のダークエルフ達。


嫌な人たちもいっぱいいた、危ない目にもあった。

でもそんなのより、素晴らしい出会いがあった。


「お前さ。自分のしたいこともうちょっと言っていいんじゃないの?」


「家族ってのは素晴らしいぜ。」


自分が見たことの無かった世界に触れて少しずつ元気を取り戻せていけて。


「一人で勝手に色々なことを決めないで!わたしはもう守られるばかりは嫌なの!私を頼ってよ!」


オクタビアはノナジの頬をぶった。


「兄さんの!バカ!」


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