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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
✟眠れる聖剣と神秘の森ー超大陸バンギア北西部最奥部「神秘の森 カティー二ャ」ー
103/515

✟「今にも零れ落ちそうな雨雲の下で……」2/4

一方、ラルフとピザファットは


「変身!」

「ぐっ。」


ピザファットが鎧を纏いラルフを一方的に攻撃していた。


「ねぇ、ピザファット。」

「なんだ?今更命乞いでもしよってのか?」

「不思議に思ったことはないかい?どうしてあらゆる力の到達点は鎧なのか。」

「別に興味はねぇよ。俺っちは今お前ぇの目ぇ覚まさせることにしか興味はねぇ!」


ピザファットの右ストレートがラルフの顔面に当たろうとしていた。


ヒョイ


ラルフは頭だけ傾けてそれを避ける。


(冗談だろ?こいつこんなに強かったか?)


ピザファットは蹴りを入れラルフの軸を崩しにかかる。


「それは本当は鎧じゃない。」

「うるせぇ!興味ねぇって言ったろ!」


ラルフは本を取り出した。

本の中から剣を取り出す。


ギ―――


右足と剣がぶつかり鈍い音が鳴り響く。


鎧が少し削れた。


「なめんな!」


ピザファットはその巨体でラルフに突進する。


「全く、君は本当に昔から変わらない。」


グサッ


ラルフの剣が鎧を貫通し彼の心臓を貫いた。


「うっ!」


「何も考えずにひたすら真っすぐなところはいいですけど、その能力じゃなきゃとっくに死んでますよ。」


血が剣を伝い地面へと垂れていく。


「ん?だいぶ治癒力が落ちてきていますね。昔は瞬時に直せるような傷だったと思いますが。」

「うるせぇ、こんなの治すほどの傷じゃねぇってこった。」

「強がりを。」


ピザファットは心臓を刺されているというのにそのままラルフのところまで進んでいき、彼の手を掴んだ。


「……なにを馬鹿なことを!」

「これで、どうだ!おらぁ!」


そのまま頭突きをかます。


ラルフが後ろに仰け反った。

その勢いのままピザファットの顎に蹴りを入れ、後ろへと跳んでいく。


ピザファットの顔の部分の鎧が粉々に砕ける。


「そろそろ始まるか……。」


ラルフはピザファットの様子を窺っていた。


「さぁ、見せてもらいましょうか。ジギュレムの科学力を!」


ギュルギュル


壊れていた鎧の部分が瞬時に再生していく。


「おい、なに訳分かんねぇこといってんだよ!」

「早く、一体化してくださいよ。」

「お前何をどこまで知ってるんだ。」

「前も言ったでしょ。この本にはあらゆることが載ってるって。」

「力が見てぇなら見せてやる。大変身!」


腕の部分に力が溢れてくる。


「ははぁ、何か鎧に細工をしましたね。」

「ふん、ナタリーの嬢ちゃんは優秀だからな。」

「ナタリー?ナタリー=ガンデイユのことですか?」


ラルフが驚いた顔でピザファットを見つめる。


「ありゃ、俺っちひょっとして良くないことを喋っちまった?」

「いいえ、とても重要なことを教えてくれました。」


あちゃーとピザファットは顔に手を当てた。


「聖剣とそのレディを渡してください。そうすれば助けてあげますよ。」


ピザファットは一瞬も考えることなくラルフの顔面目掛けて殴りかかった。


「おいおい、この一発は相当力込めたんだけどよぉ。」


しかし、ラルフは片手でピザファットの拳を掴んでいた。


「もういいです。折角見逃すチャンスを上げたのに}


ラルフが邪悪な力を解き放った。

ピザファットの前に知恵の神が降り立つ。


「何だ?俺っちのパクリか?」

{そんな紛いものと一緒にされては困ります。ロード・メーティスの、本物の力を見せてあげましょう。}


メーティスは本をめくる。


{君の異常な回復力をまず何とかしましょう。}


メーティスは槍を取り出した。


「へへっ、今までよくそんな力隠してたな。」

{これは僕の新たな力。今の僕はエドガー、いや宮本さんよりも強い。}


「自惚れんなよ!お前はエドガーどころか、俺っちにも負けるぜ!」


メーティスは槍を振り回す。


{これは、神経毒を塗った槍です。君は切っても刺しても意味がありませんからね、毒で対処するのが一番です。}

「かもな!でも当たらなけりゃいいんだろ?」


ピザファットはラルフが言っていた鎧との一体化という言葉にさっきから引っかかっていた。

鎧と一つになれれば物凄い力が手に入るのだろう。

事実、手の部分が鎧と神経ごと繋がった時、とてつもない力を発揮することが出来た。

ナタリーはそれを親和性という言葉で示していた。

恐らくだが、全身が鎧と一体化することが出来るはずだ。

両手で20パーセントということは両足、腹、胸、頭も同様に神経ごと繋がれるという理論になるはずだ。そして、それぞれが何かしら凄まじい力を生み出せるという話になる。


(っつてもどうやって神経をくっつけりゃいいんだか。)


メーティスが迫って来る。


ブンブン


槍が高速で振り回される。


ピザファットの腕を槍が刺した。


「うぉぉぉぉぉ!」


腕から毒が回りだす。


{さぁ、この時点で僕の勝ちは確定しました。それじゃあ、さよならです。}


メーティスはピザファットに目も暮れず聖剣の台座へと向かった。

そして、そのまま聖剣を引き抜いた。

刀身から眩い光が放たれる。


{これが聖剣、なるほど確かに覚えました。}


ダークエルフ族の長が危惧していた通り聖剣はエルフ族の手に入ってしまった。

しかもその中で特に力を与えてはいけない存在に。


{情けです。毒で死ぬのも辛いでしょう。聖剣でとどめを刺してあげましょう。}


メーティスがピザファットを聖剣で一突きした。


「ん?」


ピザファットは死を覚悟した。

しかし、現実は違った。


{どういうことだ!?これじゃあ、何のために僕たちは……くそっ!}


メーティスが聖剣を地面に叩きつけた。


ピザファットはまるで命のガソリンを注ぎ込まれたかのように元気を取り戻していった。


「よく分かんねぇけど、目論見は外れたようだな。」


ピザファットの強力な一撃がメーティスの顔面に直撃する。


{うっ!}


メーティスは大きく後ろに吹き飛ばされる。


「ちっとは目ぇ覚めたか?」


ピザファットは聖剣を握る。


「刺されて分かったぜ!これは命を与える剣なんだ。」


聖剣で近くの切り株を刺してみる。

予想通り、切り株が瞬く間に成長し大樹になった。


「なるほどな、いくら俺っちでも理解できるぜ。こいつで死なねぇ奴を殺せるってわけだ!」


{当てが外れた。もうここには用はありません。}

「待て!……なんだ、痛ぇ!」


ピザファットは足に激しい痛みを感じる。


「あぁぁぁぁあ!」


ピザファットの口が勝手に動く。


「超変身!」


足の部分が神経と繋がった。


「おぉ!何か知らねぇけど出来た!」

{いいでしょう。今後いちいち邪魔されてもかないません。ここで潰しておきましょう。}

「力が溢れるぜ!」


ピザファットは足に力を籠める。


「おりゃあ!」


力一杯大地を蹴り上げる。


「あり?」


しかし、何も起こらなかった。

ピザファットはただ前に一歩歩いただけだった。


{所詮まがい物、その程度だったというわけですね。}


メーティスが本をめくる。


{また毒を使っても良いですが、それじゃあつまらないでしょう?次はこの炎の剣で灰になるまで焼いてあげましょう!}

「やべ、早く何とかしねぇと!」


ピザファットは鎧の機能を再確認する。


(何か、役に立つ機能はねぇか?)


装甲を纏う防御特化の装甲モード。

タキオン粒子を放ち高速で移動できるHyper Loop機能。

後は謎の機械。


カードは3つだ。


(どれだ?どれを使えば良い?)


メーティスが切りかかってくる。


(やべぇ!今は逃げるが勝ちだ!)


ピザファットは瞬時にHyper Loop機能を起動した。


ザーザーっと激しく雨が降り始める。


(何だ?)


ピザファットは奇妙な光景を目にする。

雨粒が一粒一粒ゆっくりと降りてきていたのだ。


(面白れぇ、ってそうじゃねぇよ逃げねぇと。)


ピザファットは一瞬逃げることを考えた。

しかし、このまま逃げるのは何か違うなと思い、ラルフの方を振りむいたのだった。


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