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世界にダンジョンが現れたので、好き勝手生きることにした  作者: 人間適合


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2/3

運試し屋

「ギギッ……」


ゴブリンが錆びたナイフを握りながら笑う。


その姿を見た瞬間、佐野颯太の全身が硬直した。


ゲームやアニメなら何度も見た。


だが目の前の存在は画面の向こうではない。


本物だ。


生きている。


そして――俺を殺そうとしている。


「ま、待て待て待て……!」


当然ながら待ってくれるはずもない。


ゴブリンが飛びかかってくる。


「うわっ!?」


慌てて横へ飛ぶ。


ザシュッ!


ナイフが空を切った。


あと一瞬遅ければ首だった。


心臓が爆発しそうになる。


「やばいって!」


逃げる。


だが洞窟の中だ。


出口も分からない。


逃げ続けてもいずれ追いつかれる。


だったら――。


「やるしかない!」


近くの石を拾う。


ゴブリンが再び迫る。


颯太は石を全力で投げた。


ゴッ!


「ギャッ!?」


額に直撃。


ゴブリンが怯む。


今だ。


颯太は半ばやけくそで飛び込んだ。


ドンッ!


体当たり。


そのまま二人とも地面へ転がる。


「ギギギッ!」


「うおっ!?」


思ったより力が強い。


子供ほどの体格なのに腕力では負けていた。


ゴブリンがナイフを振り上げる。


まずい。


死ぬ。


視界の端に大きな石が見えた。


必死に手を伸ばす。


届いた。


掴む。


そして。


ゴッ!


ゴブリンの顔面へ叩きつけた。


「ギャアッ!」


悲鳴が響く。


だが。


その瞬間。


颯太の顔が青ざめた。


感触だ。


石越しに伝わる感覚。


柔らかい何かが潰れたような。


骨に当たったような。


言葉にできない嫌な感触。


「うっ……」


吐き気が込み上げる。


気持ち悪い。


怖い。


やりたくない。


だがゴブリンはまだ生きている。


赤い目で睨んでいる。


止まったら死ぬ。


その事実だけが颯太を動かした。


ゴッ!


もう一度振り下ろす。


何か温かいものが手に飛んだ。


考えない。


考えたら身体が止まる。


生きるためだ。


ゴッ!


ゴッ!


ゴッ!


何度も振り下ろす。


そして。


ゴブリンは完全に動かなくなった。


「はぁ……はぁ……」


颯太は慌てて離れる。


手が震えていた。


助かった。


だが全然嬉しくない。


ただただ気持ち悪かった。


人じゃない。


魔物だ。


そう分かっていても後味は最悪だった。


その時。


ピコン。


電子音が鳴った。


『初討伐を確認』


『レベルシステムを解放します』


『レベル0→1』


『ステータスシステムを解放します』


『職業選択を開始します』


「え……?」


目の前に青いウィンドウが現れる。


そこには六つの職業が表示されていた。


【剣士】


【戦士】


【盗賊】


【弓士】


【魔法使い】


【運試し屋】


「最後だけ絶対怪しいだろ」


思わずツッコむ。


だが気になって説明を開いた。


【運試し屋】


運命に挑む者。


STR成長率:低


VIT成長率:低


LUK成長率:大


固有スキル『ガチャ』を獲得。


スキルポイントによるスキル取得不可。


スキルはガチャからのみ獲得可能。


「癖が強すぎるだろ……」


普通なら剣士を選ぶべきだ。


だが。


ゲーム好きとしては。


どうしても気になった。


「よし」


颯太は決断する。


【職業:運試し屋】


選択。


光が身体を包んだ。


『職業を取得しました』


『固有スキル:ガチャ Lv1を取得しました』


『初回限定特典を付与します』


『無料10連ガチャ』


「無料10連!?」


さっきまで命懸けだったのに急にソシャゲになった。


だがやらない理由はない。


「回す!」


瞬間。


目の前に巨大な黄金の扉が現れる。


鍵が浮かび上がり、ゆっくりと回る。


ギギギギギ……


重厚な音。


無駄に豪華な演出。


そしてガチャ結果が表示された。


【C】

ただの石


【C】

天然水(500ml)


【C】

非常食セット


【C】

ロープ


【C】

懐中電灯


【C】

乾電池


【C】

非常食セット


【C】

ただの石


【C】

ただの木の棒


颯太の表情がどんどん死んでいく。


「いや全部コモンじゃねぇか……」


そして最後。


少しだけ光った。


期待が膨らむ。


せめてUC。


いやRでもいい。


頼む。


結果は――


【C】

家庭用包丁


「全部コモンじゃねぇか!!」


洞窟に叫び声が響いた。


演出だけSSR級だった。


結果は見事なまでのコモン祭り。


だが包丁を握ってみる。


普通の包丁。


本当に普通の包丁。


それでも石よりはずっとマシだった。


その時。


新たな画面が表示される。


【佐野颯太】


Lv1


職業:運試し屋


STR:7


VIT:8


AGI:11


DEX:10


INT:10


LUK:30


GP:0


スキル


【ガチャ Lv1】


レアリティ


C → UC → R → HR → SR → SSR


GP100で1回ガチャを回せます


「運だけ高すぎだろ……」


筋力と体力は平均以下。


代わりに運だけ異常値。


強いのか弱いのか全く分からない。


だが一つだけ分かることがある。


ここはゲームじゃない。


死ねば終わりだ。


颯太は家庭用包丁を腰に差し、洞窟の奥を見つめた。


この世界で生き残るために。


まずは出口を探さなければならない。

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