第六十九話
母さまの許可を得たので、ジーヤと一緒に出かけます。
フォルトゥーナ号に揺られ、ソプラ通りにあるモンデパィ銀行にトンボ帰りです。
バンコ頭取とジーヤが細かな取り決めを確認します。
僕のサインの横に紋章刻印を押します。
バンコ頭取から鍵を受け取ります。
最後に笑顔で握手して契約完了です。
三億ゴルドの借金を負います。
鍵を手にジーヤとお店を訪れます。
「場所は申し分ないのぅ。広さも街一番。商品も家具を中心に用立て済み。後は店を任せる人物だけじゃのぅ」
僕はにっこり答えます。
「うん。ソプラ通りから、少し入ったところに住んでるらしいんだ」
フォルトゥーナ号に揺られ、チッタ通りを進みます。
生垣の切れ目にある二本の糸杉が目印です。
糸杉の門をくぐり、大きな荷馬車の横にフォルトゥーナ号を留めます。
レンガ造りの小さなお家から、若い家主が現れます。
「こんにちは、トキン君。それとお初にお目にかかります。ヴェネート公爵家の筆頭執事ジーヤ様ですね。ワカバさんから用件は聞いております」
サリンベーニさんが頭を下げます。
「硬くならずに頼むわぃ。早速で悪いが意見を聞きたい物件までご一緒願えるかのぅ」
僕とサリンベーニさんが馬車に乗り込みます。
御者台にジーヤです。
フォルトゥーナ号に揺られ、チッタ通りからソプラ通りに抜けます。
馬車が留まります。
「まさか、ここでしたか」
「まずは中を見てもらおうかのぅ」
ジーヤが鍵をあけ扉を開きます。
三人で細長い店舗を進みます。
奥にある巨大な空間に驚いています。
「家具を中心に生活雑貨の小物まで幅広く扱うお店になります。既に入り切らない量の商品を手配済みです」
「見立てを聞かせて貰えるかのぅ」
「なんと、こんな大きなお店だったとは。場所は言うまでもなく最高です。このお店いっぱいに品が溢れるとなると、売値次第ですが大繁盛間違い無しかと思います。素晴らしい物件です」
サリンベーニさんが興奮しながら捲し立てます。
「お店の名前も考えてあります。『サリンベーニ商会』とするつもりです。サリンベーニさん、僕の元で働きませんか」
「なんと!」
「ふぉふぉふぉ、それだけでは無いぞぃ。望むならヴェネート公爵家の家人となる道もあるぞぃ」
サリンベーニさんが言葉を失います。
僕とジーヤはニコニコしながら返事を待ちます。
しばらくしてサリンベーニさんが言います。
「王国トップ貴族の家人への道とは望外の喜びです。トキン様、ジーヤ様、よろしくお願い致します」
深々と頭を下げます。
「うん、よろしくね」
「ふぉふぉふぉ。明日の朝、別邸を訪ねてくれるかのぅ。主人のアリアンナ様に紹介するわぃ」
三人で握手を交わし別れます。
「あとはロック親方じゃったのぅ。先触れは出して無いが平気じゃろぅ。このまま行く事も出来るがどうかのぅ」
「うん、お願い。ジーヤ」
シェーナ街の南東にあるロック親方のお店『毛深いほうがいい』を目指します。
ジーヤと二人で歌います。
「トンテン、トンテ〜ン♪隙間なく〜♪」
急な訪問でしたが、親方の個室に通してもらいます。
「急にすまんのぅ、親方」
「なに、ヴェネート家にはガキ共の援助をして貰ってる。いつでも会うぐらいはするわい」
親方の個室には、未修理の武具が並んでます。
その中には、修理不可能と思われる損傷のものもあります。
「ロック親方、酷い壊れ方をしてる、この籠手は修理可能なのでしょうか?」
「そいつか。材料のミスリルがまず手に入らん。仮に手に入ったとしても、効果は取り戻せん。見た目が似ただけの別物になる」
「そうですか。では見ていて下さい。『修復』」
僕の手から優しく淡い光が溢れ、アイテムを包み込みます。
あっと言う間にアイテムが本来の姿を取り戻します。
「鑑定」
僕は鑑定結果を伝えます。
鑑定結果
「白銀の籠手」
良品
【ミスリルの籠手】
素早さ+50 力+50
ロック親方は目を細めたままです。
「親方が孤児達のために苦心しているのは知ってます。これからはヴェネート公爵家お抱えの鍛治師として、広く修理依頼を受けて下さい」
親方は黙って次の言葉を待ってます。
「修理報酬は全額、孤児達の為に使って貰って構いません。僕のユニークスキルの隠れ蓑となってもらう報酬です」
しばし目を瞑り、親方が言います。
「世話になる。ただしこの通り鍛治屋のドワーフじゃ。礼儀作法などは知らん」
「はははっ、よろしくね」
「ふぉふぉふぉ、今後、別邸に招くが作法など気にせんでいいわぃ。アリアンナ様も堅苦しいのは嫌いだからのぅ」
親方と笑顔で握手して別れます。
僕はそのまま鑑定屋さんに送ってもらいます。
店裏の鍵を開けて入ります。
ヒロン達の他に知らない子が二人います。




