第三十三話
僕は、母さまにお話があります。
母さまは部屋にいる様なので、ノックして呼びかけます。
「母さま、トキンです」
「トキン、いいわよ」
少しの時間、二人でお話して部屋を出ます。
「ジーヤ。トキンがバニーちゃんの店で買い物したいらしいの。ちょっと急だけど、この機会に伯爵令嬢をお誘いするのはどうかしら」
「ソフィアお嬢様じゃな。そうじゃのぅ、散歩に誘う手紙を書いて、ワカバに持って行かせようかのぅ」
さっそくジーヤが動き出します。母さまには、ソフィのことを一言も相談してないけど、こうなったら止まらないことは知っています。
「さあトキン、返事がどうあれ、この機会にレディの扱いを覚えておくといいわ」
この後、母さまのマンツーマン指導が炸裂します。
僅か一時間ほどで僕の気力が無くなりそうです。
トツカーナ伯爵家へ使いに行っていた、ワカバが帰ってきます。
「ソフィアお嬢様は、お誘いを受け、二時間後に迎えに行くことに決まった」と言います。
僕は、嬉しくて気合が入ります。
ここからはジーヤも加わり、指導が続きます。
あっという間に時間は過ぎます。
エリザとアンナが着替えを手伝い、髪も整えてくれます。
「トキン、そろそろ行くかのぅ」
母さま、サーラ、アンナ、エリザの女性陣四人がニコニコにニヤリを散りばめながら僕を見送ります。
ジーヤがフォルトゥーナ号の御者を務めます。
お隣さんなのですぐ着きます。
トツカーナ伯爵邸、正門前に馬車を停めます。
対応に出た使用人とジーヤが話します。
しばらくして、ソフィとお付きのメイドさんがお屋敷から姿を見せます。
ソフィの金髪によく似合う、薄い黄色のワンピースを着ています。
僕も馬車から降りて正門前で待ちます。ソフィが正門前に着きます。
「こんにちは、ソフィアお嬢様。誘いを受けてくれてありがとう。淡い黄色の御召し物が、髪色によく似合って、とても綺麗です」
「こんにちは、トキン様。お誘いありがとう。トキン様の装いも、とても素敵ですわ」
挨拶を交わし、馬車へエスコートします。
「フフッ」
「はははっ」
僕とソフィアお嬢様は、どちらともなく笑いだします。
お互い呼び捨てする気安い仲なのです。
貴族の礼儀作法がまるでお芝居に感じてしまいます。
ジーヤとメイドさんも、小さな僕達にニコニコしています。
ソフィが馬車に乗り、次にメイドさんが乗ります。
最後に僕が乗ります。
ジーヤがゆっくり馬車を走らせます。
僕はソフィが退屈しないようにお話します。
鑑定スキルを得て、鑑定屋さんをやっていること。
個性の強い冒険者さんのこと。
ソフィはちゃんと聞いてくれます。
ソフィもまた、教会へ行き回復魔法の訓練を受けていることを話してくれます。
馬車が停ります。
ニンジーノが先回りして待っていてくれます。
ジーヤがドアを開けて、まず僕が降ります。
次にメイドさん、最後にソフィが降ります。
「ソフィアお嬢様、ここから僅かですが歩きます。足元が悪い小道です。どうかお気をつけを」
「お気遣いありがとう、トキン様。フフフッ」
「はははっ」
また二人とも可笑しくて笑ってしまいます。
二人で並んで歩きます。
少し離れてジーヤとメイドさんが付いて来ます。
目的のお店に着きます。
生活雑貨・小物専門店
『野生のバニーガール』
一緒に店内へ入ります。
まずは入口付近にある宝飾品コーナーをみます。
「トキン様、可愛らしい品がたくさんある素敵なお店ですね」
「ソフィアお嬢様、こちらは初めてで」
「えぇ。私あまり外のお店に入ったことがありませんの。フフッ、フフフ」
ははははっ、ソフィがこらえきれずに笑うのをみて、僕も笑いが止まらなくなってしまいます。
「ごめん。僕もう可笑しくて、、、はははっ」
「フフフッ。せっかく頑張ってたのに。フフフッ」
「本当にごめん、ソフィ。僕のせいだよ。もう限界、普通に話して欲しい。お願いだよ」
「トキンが頼むなら、仕方ないわね」
その後も、僕達は会話を楽しみながら店内を周ります。
途中ソフィが目を留めた品のチェックも忘れません。
店内を周り終え、最後にこう切り出します。
「ソフィ、今日という日の思い出に、君に贈り物をさせて欲しい」
「いいの、トキン」
僕は右手を上げ、バニーちゃんと視線を交わします。
バニーちゃんが、ショーケースを挟んで、しゃがみ込み目線を合わせます。
「バニーちゃん、これを」
僕は一つのアイテムを指差します。
バニーちゃんがショーケースから丁寧に取り出し僕に手渡します。
黄金色の細いイチョウの葉が二枚あります。
二枚を重ね合わせた素敵なデザインです。
ソフィが長く目を留めていた品です。
「ソフィ、これを見て。僕はこれを見た瞬間に、君の素敵な金色の髪にきっと似合うと思ってしまったんだ」
「ありがとう、トキン」
ソフィは少しだけ頬を染めて言います。
僕はにっこりで、ホッとします。
バニーちゃんに包んでもらいます。
メイドさんに渡して店を出ます。
「フフッ、ありがとう、トキン。私うれしかったわ」
ソフィがニコニコしています。
「ソフィにそう言ってもらえて、僕も本当にうれしいよ。はははっ」
僕もにっこりします。
ソプラ通りに出ると、露天商でジェラートを売っています。
ソフィもそれを見かけたのを見逃しません。直感スキルもたたみかけろと言います。
ソフィとメイドさんが馬車に乗ったタイミングでいいます。
「あ〜、ソフィ。行儀わるいけど僕、ジェラートを食べたいな。一人じゃなんだから、馬車で食べるの付き合って欲しいな〜と思って」
「フフッ、わかったわ。トキンが食べたいなら付き合うわ」
僕はにっこりでお礼をいい、ジーヤを見ます。
ジーヤがジェラートを二つ買って来ます。
僕はソフィに一つ渡してから食べはじめます。
「あれっ、思った以上に美味しいや。ソフィはどう」
「フフッ、本当に美味しいわ」
僕はソフィの笑顔をみて、美味しく感じた理由がわかった気がします。
ジェラートを食べ終え、馬車が走りだします。
お店でみたアイテムの話、こっそり鑑定スキルを使った話などで会話を楽しみます。
まもなくしてトツカーナ伯爵のお屋敷に馬車が着きます。
「トキン様、楽しいひとときを過ごせましたわ。お礼申し上げます」
とソフィはカーテシーをとります。
「ソフィアお嬢様、僕こそ、これほど楽しい時間があることを、これまで知りませんでした。感謝致します」
と胸に手をあてぺこりします。
ソフィを見るとニコニコで小さく手を振っています。
僕もにっこりで、小さく手を振って馬車に乗ります。
フォルトゥーナ号に揺られて、すぐ小さなお家に着きます。
母さまや、メイド達が興味津々の目で僕を見ます。
ティータイムの準備も万端です。
話を聞く気満々です。
アンナとエリザは少し息が荒いです。
恋話が好きなお年頃なのかもしれません。
ですがまだやる事が残っています。
お礼の手紙です。
今日のお礼に加え、次回も誘わせて欲しいと繋ぐのです。
そして最後にこれを書きます。
追伸
ソフィに送ったヘアピンの名前を伝えるのを忘れてました。
鑑定結果
【薬師イチョウの髪飾り】
回復魔法+10%
トキメモ
鑑定 ランク2 (100/200)
リペア ランク2 (440/1000)
幸運コレクション
幸運アイテム数 11個
幸運+17 8個+(3個×3倍)=17
目標とする幸運値+100 (17/100)




