第三十四話
女性陣、四人に囲まれて、この世の地獄のような長いティータイムが続きます。
ソフィとのお出かけを、最初から最後までセリフを交えて再現させられます。
もう二周目です。
ジーヤは早々に離脱し、僕に味方はいません。
特に母さまが、「ここぞという時に、必ずこう言う様に」と場面ごとに教えてくれた決めゼリフは、キザな言い回しだったらしく、僕は赤面し女性陣は肩を震わせます。
これ程までに辛い時間があることを知りませんでした。
鑑定屋さんの準備があると席を立って逃走します。
それでもフォルトゥーナ号に乗ると、先程の楽しかった時間を思い出します。
にっこりが止まりません。
西門に着きます。
門番詰所に挨拶に行き、手土産を忘れたことに気づきます。
でもニンジーノがサーラから預かっていた様です。
無事に手土産を手渡します。
詰所入口の脇にゴザを敷きます。
小さなイスと丸テーブルを置きます。
ニンジーノが詰所と隣りの建物の隙間から看板を出します。
お気に入りの革エプロンをします。
後ろの紐も自分で結べます。
虫眼鏡を革エプロンのポケットにセットします。
革のミトン手袋と本を丸テーブルに置きます。
小さなイスにちょこんと座ります。
『トキンの虫眼鏡』開店です。
「いいこと、あったのかニェ〜」
えっ、と顔をあげます。
ダークエルフと思われる、いつもの少女です。
「こんにちは、今日もアイテムの鑑定をやってます」
「いいこと、あったのかニェ〜」
おっと僕はまた間違えてしまったようです。
「え〜と、はい。ありました」
「ふ〜ん。じゃあ、これあげる。またニェ〜」
少女はキャンディを手渡し走り去ります。
僕は首を傾げます。
女性の勘なのかな?
わからないです。
西門から子供四人が荷車を引き、街へ入ってきます。
男の子二人に女の子二人です。
全員十歳前後に見えます。
僕の方に近づいてきます。
「お前、朝は居なかったよな」
「お主、何者?」
「きみは何屋さんかな?」
僕に興味津々のようです。
おそらく看板の文字はまだ読めないのだと思います。
僕はにっこりで答えます。
「こんにちは、僕はトキンです。アイテムの無料鑑定と買取をやってます」
「お〜ほんとかよ。じゃゴミばっかだけど金になりそうか観てくれよ」
「ほほ〜ん。お主、無料の者か」
「きみは鑑定屋さんなのね」
さっそく荷車に積まれたアイテムを観ていきます。
破れた布、割れたガラス瓶、欠けた壺、折れた木の枝、汚れた毛皮の一部など素材品ばかりです。
僕は気になる物をゴザの上に置いていきます。
「ふむ〜ん、終わりました。ゴザの上に置いた分は値段が付きます。全部で2,300ゴルド。ただし条件付きで倍の4,600ゴルドで、いや5,000ゴルドで買取ります」
「5,000ゴルド!、あやしいな」
「お主、たくらみ者か」
「そんな、これまで良くて1,000ゴルドだったのよ」
警戒させてしまったようです。
彼等の衣服と荷車を見ればわかります。
街の南東にあるスラムの子達です。
きっとこれまでは素材ごとに分け、それぞれの店に卸して、少しのお金をもらっていたと思います。
誤解を解きたいと思います。
「心配いりません。こういった古いアイテム素材を好んで収集するお客様を知っているだけです」
様子を伺いますが、まだ警戒されているようです。続けます。
「おそらく、この素材はダンジョンの近くに捨てられた物です。鑑定屋なので価値もわかります。だから高く買えます。でも僕は街の外に出れないです。僕の代わりに拾ってきてくれるなら大歓迎です。だから素材代に運搬代も足した値段で買取ります」
「そういうことか。その代わりまずお前、トキンか、トキンに見せることが、きっと条件なんだな?」
「ほほ〜ん。お主、運び賃を払う者か」
「買ってくれるお客がいて、価値もわかるからその値段でいいのね」
「はい、そうです。街の中のゴミにも値段が付く物が有るかもしれません。まず僕に見せてください。それが条件です」
僕はにっこりで答えます。
「それは正直助かるぜ。食い物を多く買って帰れる。トキン、集めたゴミは必ず最初に持ってくる。だからその条件でたのむ」
「もちろんです。これから僕達は仕事仲間です」
僕はにっこりで手を差し出します。
「俺の名前はヒロンだ。よろしくなトキン」
ヒロンが僕の手を握ります。
みんなニコニコです。
僕はカエルのコインケースから5,000ゴルド(銅貨五枚)を取り出し渡します。
ヒロン達は笑顔で手を振って帰ります。




