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【全年齢版】幼馴染はヤドクガエルの王子様~「1000回契れ」って…これなんの呪いですか!?~  作者: 黒燿
第1章:その美しさは、まるでアルカロイド系の猛毒。

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第16話:男と男の純潔同盟。

「ちょっとまって。方向音痴って……?」

「ラプちゃんと騎士様……ハインリヒさんは、思い合っていたのよね?」

「あなた、塔を出たら騎士様に会いたいって……」


意味がわからず聞き返すと、ラプンツェルは目を丸くして、あっさり答えた。

「やだなあカリンママ、ぼくたち男同士だよ!?」

「そ、それはそうなんだけど……、ど、どういうこと???」


「えーとね、そもそもハインリヒさんとぼくは……」

混乱するわたしを見かねてか、ラプンツェルは話し始めた。



夜。

静まり返った深い森の奥は、昼間の鮮やかさとは打って変わって、べっとりとした濃紺一色に染まっていた。

静かすぎる森の中、梟の声とともにすすり泣く声が響き渡る。

それは、ずっと塔の中で一人きり、出ることもかなわず孤独に侵食されおかしくなりそうな、ラプンツェルがすすり泣く声だった。


そんなある日、塔の下を一人の騎士が通り過ぎる。

「くそっ……! なぜなのだ! 東の国を目指し太陽を追いかけ進んでいるのに、気が付けばこの塔の下へたどり着いてしまう……。なぜなのだぁあああああ!」

「こ、こんなことをしている間にも、ルカ王子は……。あああ、あんあことやそんなことまでされてはいないだろうか……」

「か、考えただけで胸が……っうっ!」

バツン!と大きな音を立て、騎士の胸から一本のタガが外れる。

「くっ……! は、早くルカ様を捜し出さねばならないというのに……不甲斐ない……」

騎士はその場に、うつぶせの形で倒れたままになってしまった。


「……そこの人、大丈夫ですか?」

一部始終を(何度も)塔の上から見ていたラプンツェルは、思わず声をかける。

騎士は塔を見上げ、声をかけてきた人物に目をやった。

「……お前、毎夜この塔で嘆いている者だな? 幽閉されているとなると……罪人か?」

「罪人に情けをかけられるほど落ちぶれてはいない」


ラプンツェルは、プライドも高く思い込みも激しそうな騎士だな、とは思ったが、やっと魔女以外の者と話ができそうな機会だとも思った。

そこで、なんとか繋ぎ止められないものかと話しかけてみることにした。

「あなたこそ、そんなになってまで毎日毎日なにをしているんですか?」


すると、塔の下にいた騎士は品詞だったとは思えぬほどにしゃきんと立ち上がって胸を張り、こう答えた。

「よくぞ聞いてくれた! 私はある「大事なお方」を捜しているのだ!」

「そのお方がどれくらい偉大であるか聞きたいであろう? 仕方ない、お前にも話してやろう」

ラプンツェルが聞き返すこともなく、騎士は勝手に話をつづけた。


彼はハインリヒと名乗った。

東にあるフィンザー国の、王子付の騎士長であったという。

「私はフィンザー国のためならば死をも厭わない。しかし、私の考えは周囲とは違っていたようなのだ」

ハインリヒの話では、東の国はとても平和であるらしい。

そのため、戦乱の世でもないのに「命を懸けろ」と兵士に強要するハインリヒは、周囲から煙たがられ浮いてしまっていたようだった。

「国に忠誠を誓って、何が悪いというのだ……」

ぐすん、という鼻をすする音が塔の下から聞こえてきた。


「でも、ルカ王子だけは、こんな私にいつも太陽のような笑顔で優しく接してくださった」

「話を聞いてくれて、黙って頷いてくれていた」

「騎士団から排除されかかったところを、王子付という役職を与えてくださったのだ」

「だから、今の私が生きてこられたのは、ルカ王子のおかげなのである」

「このように清らかで広いお心を持つ尊いお方なのだ。ルカ王子という方は。どうだお前、王子付騎士長に拝命された私が羨ましかろう」

ラプンツェルは、確かに癖が強くて生きにくそうなタイプではあるな……と思った。


「だがしかーーーーーし!!!!!」

ここでハインリヒは、この広大な森中にも響き渡りそうなほどの声で、悲痛な叫びをあげた。

「王子は……ルカ王子は……10年前、忽然と姿を消してしまわれたのだ……」

うををををををををを……と、ハインリヒは悲痛な声で泣き叫んだ。

バツン!と音を立て、2本目のタガが外れて、ハインリヒはそこで気を失った。


ハインリヒが道に迷って再び塔にたどり着くたび、ハインリヒとラプンツェルは言葉を交わすようになった。

「王子様、見つかった?」

「いや、まだだ。しかし私は命に代えてもお捜しする」

「そっか、がんばってね。ぼくもここの下を通った人からなにか情報が入ったら教えるよ」

「感謝する。お前もルカ王子を捜すことに協力できることを喜びとするがよい」

「よくわからないけどわかった♪」

ラプンツェルはいつしか、多少癖が強かろうとも、そんな他愛もない会話ができる相手ができたことを楽しく思うようになっていた。


ある日、ハインリヒはラプンツェルにこんなことを言った。

「……というわけで、私はルカ王子を捜し出すまで願をかけ、女人に触れることを自ら禁じたのだ」

不思議に思ったラプンツェルは、聞き返した。

「自ら? 女の人に近寄らないようにしてるってこと?」

「ふっ……、甘いなラプンツェルよ。私の誓いはそんな生易しい覚悟のものではない」

「見よ!!!!!」

そう言うとハインリヒは、自分が履いていたズボンもパンツもずるっと下して下半身をあらわにした。


「!?????」

ラプンツェルは目を疑った。

実際には塔の下、しかも夜の暗がりの中、焚火に照らされているだけなのではっきりとは見えなかったが、ハインリヒの股間には、なにか鉄の器具のようなものが装着されていた。

胸にはめてあるタガにも少し似ていた。

「どうだ、すごかろう。タガは胸だけではない。男根にも装着してある。これらすべてはルカ王子への忠誠心の証……」

腰に手を当て、胸を張り、ハインリヒは()()をとても誇らしく思っているようだった。


「私のルカ王子への忠誠心を民に見せつけるため、街中でたびたびこうして披露するのだが、みな顔をしかめて逃げ去ってしまう。警備の者を呼ばれたこともある。なぜなのだ? もうみなは国への忠誠心など失ってしまったのか……、嘆かわしい」

ラプンツェルは、どうしてハインリヒが騎士団から排除されるようなことになってしまったのか、少しわかったような気がした。


「……であるのでラプンツェルよ。塔から出られず今日まで童貞であったことを嘆くことはない」


「え? 今なんて?」

ラプンツェルは思わず聞き返してしまった。


「なぜならここに私という、28年モノの筋金入りの童貞の同士がいるからな!」

ラプンツェルはもう言葉も失ってしまった。


「そう、いわば我々は童貞同盟なのだ! 同士だ! 仲間だ! 戦友だ!」


「同盟……同士……仲間……戦友……」

ラプンツェルは、この言葉に、人生で覚えたことがないほどの高揚感を味わった。

胸がキュンとした。頬も熱くなった。


「ぼくが……仲間?」

「そうだとも、ラプンツェルよ。私とお前は同じ道を歩んだ。要するにずっ友なのだ」


その日から、ラプンツェルは泣くのをやめた。

代わりに、ハインリヒがまたこの塔にたどり着いてくれるように、目印のように毎晩歌うことにしたのだった。



「……というわけで、ぼくたち『童貞同盟』のずっ友なんだ」

わたしがカエルの顔を見ると、カエルもわたしと同じようにドン引いた顔をしており、ばちっと目が合った。


「ぼくねえ、いつも旅の話を聞かせてくれたハインリヒさんにずっと励まされてたんだ。だから、同盟の戦友として、会って近くで顔を見てお礼が言いたいんだ」

経緯はどうあれ、こんな破天荒なラプンツェルでも大事に思っている相手であるということはわかった。

それならば、ぜひ会わせてあげたい。


「え、えと、なんでそれでハインリヒさんは必ずラプちゃんのところに戻ってくるの?」

「それは……」


ド ド ド ド ド ……


ラプンツェルがなにかを言いかけたその時、遠くから地響きが聞こえた。

同時に、馬がいななきとともにこちらに向かって猛ダッシュしてくる。

見覚えのある馬だった。


「み、南の国はどこだぁあああああああああ!!!!!」

「ね?」

ウインクしながらラプンツェルが馬の方向を指さす。

「彼は極端な方向音痴なんだ。太陽を追いかけているから、どこへ行っても結局いつも塔の方向に向かっているってワケ」


「ま、またこの塔へ……なぜだ!?なぜなのだ!?」

ハインリヒはしばらく頭を抱え込んでいたけれど、しばらくして人の気配に気が付いたのか、こちらを見た。


「あーーーーーっ! お前っ! 先日の娘ではないか!!!」

わたしの身体は思わずびくぅっ!!!と反応した。

嘘(?)を教えてしまったことを責められてしまうのではないかと思った。


「小娘っ!!!!! 私がせっかく一式くれてやった、ルカ王子推し活グッズはどうした!? 使わないのなら一式返せ!!」

ぷんすこと怒るハインリヒ。そっちか……。


「……というか、指し示した方角は本当に南の国で合っていたのだろうな!?」

わたしはこくこくと小さく頷いた。

南の国の方向自体は間違っていないはずだから。


ハインリヒはぶつぶつと愚痴を続けている。

「……せっかく魔女の情報を掴んだというのに……早くルカ王子にお伝えせねば……」


「!?」


わたしは思わずルカを見て頷いた。ルカもこちらを見て頷く。

「魔女の情報を……掴んだですって!?」


カエルのルカはちょこんとわたしの肩に飛び乗ると、ハインリヒに向かって叫んだ。

「ハインリヒ! こちらを見ろ!」


「!?????」

「え……ル、ルカ王子の声!? ど、どこから……? やだ、うそ、私の幻聴? ついに?」

ドッドッドッ……とこちらにまでハインリヒの心臓の音が聞こえた。

わたしはそわそわした。


「私だ! ルカ・クラウス・フォン・フィンザーだ!」

「お、王子…? この10年……捜し続けた……私の……マイドリーム……マイプレシャス……マイプリンス……」

ドッドッドッ……と、ハインリヒの心臓の音はさらに大きな音を立てていた。


「かえるぴこぴこみぴこぴこ……」

ルカは例の呪文を唱え始めた。


「お、王子~~~~~っ!!!!! い、今おそばにぃいいいいい……」

そういうとハインリヒは思いっきり振り向いた。


そこには……顔だけカエルのルカ王子がいた。

バツン!バツン!バツン!と、タガが勢いよく3つとも弾け飛び、ハインリヒは失神した。

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