第10話:「気持ちよくて、赤ちゃんができるなんて、最高じゃない?」
背後には壁、目の前には迫る美しい……殿方!
ラプンツェルは……男性だった!?
大混乱中のわたしを見て、ラプンツェルはクスリと笑ってみせた。
そして無邪気な声でこう言った。
「してみたかったんだぁ~、セックス」
「セッ……?????」
聞いたこともない言葉だった。
細くしなやかな美しい指先でわたしの頬をなぞる。
「赤ちゃんって、セックスするとできるんでしょう? 一人ではできないんだよね?」
「しかもすっごく気持ちいいんだって」
「見て! この異国の本!」
ラプンツェルはそう言うと、後ろ手から一冊の本を取り出して、わたしの眼前に突き付けた。
それはB5サイズ、おそらく24P、表紙はPP貼りフルカラーで、R18というマークのついたとても薄い本だった。
タイトルは異国の国の言葉で書いてあるので読めないが、表紙には全裸の女性がダブルピースしながら紅潮し、口からは涎をたらし、大きく開脚している絵が描いてある。
なにか……、病的なというか、隷属的なものまで感じ、わたしの背筋に氷のような冷ややかななにかが走る。
ラプンツェルは丁寧にページをめくると、裸の男女が描かれた絵を指さす。
「これはね、赤ちゃんを作っているところらしいんだ」
「ここ……、この女性はね、翻訳してみたら「きもちいひ」って言ってるんだよ」
「気持ちよくて、赤ちゃんができるなんて、最高じゃない?」
「可愛いカリン、ボクときみの赤ちゃんなら、きっとかわいいはずだよ!」
「ねえカリン、ボクと本物の家族を作ろう?」
そう言うと、ここまで大輪の百合の花のように美しく微笑んでいたラプンツェルの顔は、突然さっと曇った。
目から光が消え、俯き、そして呪わしいほどに低い声でこう言った。
「ボクなら子供を全力で愛するし、一生大事に育てるし、まして売ったりなんかしない……」
憎しみのこもった闇の顔と暗い瞳……。
その目を見て、わたしの胸はキュンと切なくなる。
(きっと彼は寂しい思いをしてきたのだわ…… そしてそのせいでどこか心が壊れてしまっているのね……)
(でも、彼をあんなふうに……なにをしているのはよくわからないけど、あれが子供を作る行為なのだったら、わたしは受け入れることはできないわ)
(だって、わたしには……、未来の家族を作るのは……、ルカなんだもの)
(この気持ち……、彼への同情心と、ルカへの愛おしさはまったく違うものだわ)
「あ、あなたの想いには応えられないわ!」
あらん限りの力で思いきり振り払おうとするが、そこは男の手と力で押さえつけられてしまい、振りほどく事ができない……。
ラプンツェルはわたしの両手首を押さえつけ、身動きできない状態にすると、そのままわたしの胸にふわりと顔をうずめてきた。
「ああ……、なんてふかふかで柔らかくていい匂いなの…… いつまでもこうしていたいし、その可愛らしく尖っている先端、口に含んでみたいなぁ……」
ラプンツェルの顔が、わたしの胸の先端に近づいてくる。




